菅たんの祖父は戦後のどさくさに紛れて、
パン屋さんをやっていたんですが、その名が「梅林堂」。
菅たんが子どもの頃は、お正月が近くなると、近所の家から頼まれて、
パンの入っていたらしい、木の箱を譲っていたもんです。
ほら、ベーカリーでパンを入れている、大きな長方形の箱。
昔のことだから、それが木製で、お正月の、のし餅を入れておくのに
都合がよかったんだと思います。
まあ、そうこうしているうちに、その「梅林堂」の名前入りの木箱も
なくなってしまったんですが。一個か二個、正月用の食器を入れて、
物置にしまってあるようです(でも、ここ2年ほどは見ていない…)。
私が生まれる前後には、火災が原因で店を閉めたらしいのですが、
詳しいことはよく分からない。
ただ、小学生のころ、冗談半分で、「火事だー」と騒いでいたら、
母親に血相をかえて叱られたことがあり、後になって火災で店を
やめたことを知って、なんとなく納得したものです。
子ども時代、家のあちこちに、梅林堂の欠片が落ちていたものです。
ブリキの業務用バターが入っていたらしい、箱。クッキーの抜き型。
スケッパー(パイ生地をつくるのに使う)。リンゴの芯抜き。いったい、
どんなパンや菓子を作っていたんだろうといつも思っていたのですが、
とうとう、祖父にも母にも聞く機会はなかった…。
巨大な飴を煮るのにつかっていたらしい釜は、かくれんぼに都合がよくて、
いつも中にしゃがみこんで、じっとしていたものです。
川での釣りが流行っていたころは、釣ってきたフナやオイカワなどを飼育したり。
そんな遺物の中でも、けっこう興味深かったのは、
製菓の専門書ですよ。今どきのカラー写真がいっぱいある豪華なお菓子作りの本とは
まったく違って、写真も少なく、単位が「匁」。
バウム・クーヘンは、「ピラミッドケーキ」として紹介されていました(笑)。
ほんとに、ピラミッドでした!!
三角錐の上を少しちょんぎった形。
たぶん、私がフライパンで作るバウム・クーヘンと原理は一緒。
ただ、あとの方になるにつれ、流し込む生地を少しにしていったのでは…。
バウム・クーヘンは、木の切り株の年輪を思わせるお菓子、と、なにかで
読んだけれど、なぜに、ピラミッド。どこでどういう誤解があったのか。
というわけで、バウム・クーヘンを見るたびに、なぜか、金字塔という言葉が、
ピカピカ輝く菅たん脳みそなんでした。