人は負けると分かっていても闘わなければならない時がある~バイロン
って佐藤愛子さんの『花はくれない』のエピグラムで覚えたんですが、
破れかぶれで突っ走る、菅原は、奮い立つのだった。
…羽根つき餃子の店、ニーハオは蒲田にある。
つかこうへいの『蒲田行進曲』の階段落ちが閃くように、浮かんでは消える。いやいや、弱気は禁物。
階段を降りた選手達は、地下にある店のドア前で、小口ディレクターと待機していた。
ドアを隔てた店の中から、ドッと笑い声と拍手が沸き興る。
「三沢さんが会場をあっためてます」
「いや~三沢さんには本当によくやって貰って…」
スタッフ達の会話をぼんやり聞きながら、菅原は、
(酸だ。酸で油っこさを中和して食べよう)
と握りこぶしにグッと力を入れるのであった。
紅一点。というより、世代の壁をやたら意識しまくる菅原である。
クソ~こいつら若いから油なんて気にならないんだろうなあ。
と。
小口さんが合図を出し、
菅原達は店内に送り出された。
会場となる店内には、想像以上の客が犇めいていた。家族連れが中心だった。
奥の長いテーブルの横には、中村有志さんが待っていた。観客に話しかけて、会場を盛り上げている。
喫茶店ではイタリアのブランドものらしいサングラスにグラマラスな肢体を披露して、どこの叶姉妹ですか、
ってな感じだったドクターは、薄いピンクの白衣を着て、別人のようだった。
席についた菅原の元に、小口さんがササッと走り寄り、
「菅原さん、元気よく!
始めだけでも山本君をびっくりさせてやって下さいよ」
と、耳打ちした。
ええ~マイペース作戦で打倒山口というより、山口さんになりきりで
この油地獄を乗り切るつもりだったのに。
小口さんはでっかい照明の下にしゃがみ、元気よく!という身振りで、右腕をブンブン廻していた。
少年!元気だな!
菅原はしかしあくまでも、山口作戦である。
ラモス~と会場のちびっ子から、声援が掛かった。上條さん大人気である。
喫茶店でウダウダしていた時、
記念に4人の大食い男性の写メを撮った菅原だった。
中でも上條さんの扮装が大いに気に入り、
「雷神風神みたいですね~」と話しかけたら、
「そう、意識してます」と気さくに答えてくれた上條さんだった。
アバンギャルドな洒落者だが、どことなく、お茶の師匠みたいな静かな人である。
この時。
山口さんはラモス、じゃなくて上條さんを、
山本さんは会場にはいない、ジャイアント白田を、
上條さんは、多分、山口さんを、
熱く激しく、意識していた。
菅原は、小口さんの言葉に乗せられるもんかあ~と、
箸を取った。
「いただきます!」(つづく)
ケータイからお届けした、第19回。いかがでしたでしょうか。
三宅智子さんの出番がなかったと、
ガッカリの諸兄、次回に期待しててね~
以上、こだま545号新大阪行きにて。
菅原でした。