カラーパープル | Life goes on

Life goes on

世界が変わっていく。周りが変わっていく。いつのまにか、自分も変わっていく。

カラーパープル (集英社文庫)/アリス ウォーカー
¥740
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カラーパープルを読んだ。

過去に映画で見たので知っていたけど、小説として内容を把握してみたいと思って文庫本を買った。
著者の欄を見てみると、著者は黒人の女性で貧しい家庭に生まれながらも奨学金を得て大学へ進んだ優秀な人だったらしい。それに、この小説がピューリッツァー賞と全国図書賞を受賞した作品とあって、俗っぽい私は「これは読むしかない」と思ったことも事実である。


ストーリーはまだ黒人が市民権を得て間もない頃。黒人の大家族の中で長女、セリーが主人公である。
セリーは父親にひどい扱いを受け、父親の子供を生まされる。それに、彼女を愛しているわけでもない男性と結婚をさせられ、大好きな妹と離れ離れに暮らすことになる。

結婚生活では、夫に性的関係を強制され、子供には見くびられる。女性として、妻として敬まれない環境にありながら、辛抱強く生きるセリーを唯一支えてくれる存在だったのが、妹であった。

セリーはいつか妹と再会できると信じて、日々の生活を送る。

そんな中、夫が愛する歌手を家に迎えることで転機は訪れた。
歌手、シェリーは自己中心的でセリーを振り回す。しかし、セリーは嫌がらず、世話を引き受ける。その中でシェリーとセリーは図らずも感情的な結びつきを覚えて、いつしか恋愛感情をお互いに抱いていく。

その歌手に会うまでに、ずっと誰かに従って、従順に生活してきたセリーが歌手との対話、義理の妹の負けん気の強い、自分の意思を曲げない性格を目にして、女性として、人間として、真の自立への過程を描いた作品である。


女性が男性と同様に、同じ権利、同じ市民権を得たといっても、それほど前ではない。
黒人が白人と制度的に平等と宣言されても、社会的には潜在的な差別、偏見は根強く残っているのと同じように、女性の男性に対する立場も同様であろう。


この作品には、そんな偏見、浸透された偏った見方に、たくましく立ち向かう人々の生き方を描いた作品だと思う。

セリーはもともとは、自分が受ける屈辱をそのまま受け入れること、すなわち、何も反抗も抵抗もせずに、従順に従うことが自分を守る方法になっていた。
しかし、その姿勢とは対照的な同じ黒人女性の生き方を目の当たりにして、徐々に、真に愛すること、真の幸福、真の自立を覚えていく。


たしかに、自分の内面に他人との衝突を押し込めることで、外面的には相手を納得させ、自分に対する攻撃を相手の意図以上にさせることはないであろう。
しかし、相手との立場の差、自分の尊厳は他人に対しても、自分に対しても削がれていく一方である。
これに耐えることが美徳であるように考えるのは、さらに偏見の渦に自分を巻き込み、不必要な傷と害を得るだけではないか。


自分が一体何を望んでいるのか、何を考え何を思うのかを述べることは、ストレートに人々に理解されるとは限らない。
それがどんなものであれ、賛成するものもいれば、反対するものもいる。そして、主張すること自体を許さないものもいるであろう。


個人のレベルだけでなく、社会の風潮に抑圧感を覚えることもあるだろう。

それに立ち向かうことで、リスクはある。敵をつくって、自由を奪われたり。

セリーの義理の妹は、まさにそのリスクを負うことをいとわず、常に信念を曲げずにそれを貫いてきた。屈辱にもめげず、人間として、女性として、妻として、黒人として、力強く生きる姿はセリーの見方を大いに影響したことだろう。


また、セリーの自立に最も貢献したものとは、シェリーや妹からの本当の意味での愛ではなかったかと思う。
自分を本当に愛しているという実感があったからこそ、真に自分の力で生きていく勇気が芽生えてきたのではないだろうか。


義理の父親の扱いにも耐え、夫の奴隷のような生活の中で、感情を内面に押し殺していたセリーが求めていたものは、全てを受け入れてくれる存在だったのではないか。

その存在を得たことで、堂々と自分の生きる道へと突き進むことができたのではないかと思う。

黒人であること、女性であること、外面的な魅力がないこと。主人公が負うものは、社会的自立を阻んでいた。
しかし、一般の社会が持つ差別、偏見の根はこればかりでない。


どんな人であっても、どのように思われるのかは、その人の本質を知る前に対外は間接的な情報によって判断されてしまうことが多い。

その中で、私たちは絶えず、尊厳が保たれるように、生きるすべを身につけ、個人として社会と交わる。

つまり、どんな立場の人であれ、弱者であるのだ。

でも、他人はそれほど理解することはない。自分で傷つけられた自分に巻けず、常に前向きな姿勢、向上する精神を持ち続けなければいけない。

さもないと、偏見のうちに自らの生を陥れることになってしまうのだ。

つらくても、悲しくても、かすかな希望を忘れず、そして、自分と愛する人を大切にすることで、かならず道は開けるのだということをこの作品は私に語りかけてくれた気がする。