「さ、風邪引かないように寝よう」
「ママも寝る?」
「寝るよ、一緒に寝よう」
結菜と真由菜を連れて寝室に入った。明日は結菜と二人だけで眠ることになる。
「真由菜に3日間だけ会えないから、ギューってしてあげて」
私は言葉を選んだ。不吉な言葉は絶対に言いたくないと思っていた。
「真由菜、頑張ろうね」
「大丈夫だよ、真由菜4歳だから」
気丈に振舞っているのか、根っからの楽観主義なのか分からないが、真由菜の明るさがありがたかった。真由菜の顔を引き寄せる。これが私の産んだ娘。そして、この大きく広がった黒いものは、生まれた時から真由菜が背負ってきたものである。
私は、今まで決して口にしなかった言葉を言った。
「真由菜、痣のある顔に産んじゃってごめんね。ママがちゃんと産んであげられなかったから、痛い思いをしなくちゃならないんだね。許してね・・・」
泣いてはいけないと思ってきた。しかし、涙がどうにも止まらなかった。
「・・・ううっ」
結菜のベットから嗚咽が聞こえてきた。真由菜の痣のことで結菜と私が泣いたのは初めてだった。
「真由菜・・・お姉ちゃん待ってるからね。頑張って手術して帰ってきてね」
泣きながら結菜が真由菜に声をかけた。真由菜は突然泣き出した私と結菜を見て、自分もすぐに泣き顔になった。
「おねえちゃん、真由菜頑張ってくるからね。綺麗になって帰ってくるからね」
真由菜の言葉は、わざと泣き声を作っている芝居のような響きだった。
私は二人を両脇に引き寄せた。もう一度、こうやって二人を同時に抱きしめる夜がすぐにやってくること、それだけが望みである。3日後に顔にガーゼを貼った真由菜が隣のベットで寝ていることを、私は祈った。神に、祖父に、先祖にとにかく私を支えてくれるであろうすべての存在に祈るしかないのだった。
手術後は、しばらく腫れる。痛みもあるらしい。そして、綺麗になるまでには、まだあと2年くらいかかること、何回か手術を行わなければならないこと。このことを真由菜には、詳しく教えていない。そうでなくとも、私が不安を抱えたままの状態である。真由菜に恐怖心を抱かせたくないのだ。
残酷なのか、これでいいのか分からぬまま、時間が経過していった。真由菜は眠り、そのまま4歳の瞬間を迎えた。
「真由菜お誕生日になったよ、4歳おめでとう」
小さく囁いて、真由菜をベッドにそっと寝かせた。
すやすやと眠っている。太田母斑と一緒に眠っている。真由菜が赤ちゃんの時から一緒に育ってきたアザだ。ツツツと指で触ってみても、すべすべとした他の皮膚と変わらない。色だけが他と違っているだけなのだ。
これまでアザが嫌いなわけではなかった。アザのある顔だと考えたことすらない。それで当たり前だったし、このままで暮らせるものならそれでよかった。しかしアザと共にこれからも生きていくのは、本人にとってきっと辛いこともあるだろう。
「真由菜綺麗になる!」
真由菜の言葉を思い起こし、私はアザに触れていた指を離した。あと一日で、このアザと別れることになる。どんなに辛くても、私は今日限りアザのことで泣かないつもりである。
産んだ責任を考えることもしない。
ただ、真由菜と一緒に長いであろう治療の日々を懸命に乗り越えていくだけである。
「ママも寝る?」
「寝るよ、一緒に寝よう」
結菜と真由菜を連れて寝室に入った。明日は結菜と二人だけで眠ることになる。
「真由菜に3日間だけ会えないから、ギューってしてあげて」
私は言葉を選んだ。不吉な言葉は絶対に言いたくないと思っていた。
「真由菜、頑張ろうね」
「大丈夫だよ、真由菜4歳だから」
気丈に振舞っているのか、根っからの楽観主義なのか分からないが、真由菜の明るさがありがたかった。真由菜の顔を引き寄せる。これが私の産んだ娘。そして、この大きく広がった黒いものは、生まれた時から真由菜が背負ってきたものである。
私は、今まで決して口にしなかった言葉を言った。
「真由菜、痣のある顔に産んじゃってごめんね。ママがちゃんと産んであげられなかったから、痛い思いをしなくちゃならないんだね。許してね・・・」
泣いてはいけないと思ってきた。しかし、涙がどうにも止まらなかった。
「・・・ううっ」
結菜のベットから嗚咽が聞こえてきた。真由菜の痣のことで結菜と私が泣いたのは初めてだった。
「真由菜・・・お姉ちゃん待ってるからね。頑張って手術して帰ってきてね」
泣きながら結菜が真由菜に声をかけた。真由菜は突然泣き出した私と結菜を見て、自分もすぐに泣き顔になった。
「おねえちゃん、真由菜頑張ってくるからね。綺麗になって帰ってくるからね」
真由菜の言葉は、わざと泣き声を作っている芝居のような響きだった。
私は二人を両脇に引き寄せた。もう一度、こうやって二人を同時に抱きしめる夜がすぐにやってくること、それだけが望みである。3日後に顔にガーゼを貼った真由菜が隣のベットで寝ていることを、私は祈った。神に、祖父に、先祖にとにかく私を支えてくれるであろうすべての存在に祈るしかないのだった。
手術後は、しばらく腫れる。痛みもあるらしい。そして、綺麗になるまでには、まだあと2年くらいかかること、何回か手術を行わなければならないこと。このことを真由菜には、詳しく教えていない。そうでなくとも、私が不安を抱えたままの状態である。真由菜に恐怖心を抱かせたくないのだ。
残酷なのか、これでいいのか分からぬまま、時間が経過していった。真由菜は眠り、そのまま4歳の瞬間を迎えた。
「真由菜お誕生日になったよ、4歳おめでとう」
小さく囁いて、真由菜をベッドにそっと寝かせた。
すやすやと眠っている。太田母斑と一緒に眠っている。真由菜が赤ちゃんの時から一緒に育ってきたアザだ。ツツツと指で触ってみても、すべすべとした他の皮膚と変わらない。色だけが他と違っているだけなのだ。
これまでアザが嫌いなわけではなかった。アザのある顔だと考えたことすらない。それで当たり前だったし、このままで暮らせるものならそれでよかった。しかしアザと共にこれからも生きていくのは、本人にとってきっと辛いこともあるだろう。
「真由菜綺麗になる!」
真由菜の言葉を思い起こし、私はアザに触れていた指を離した。あと一日で、このアザと別れることになる。どんなに辛くても、私は今日限りアザのことで泣かないつもりである。
産んだ責任を考えることもしない。
ただ、真由菜と一緒に長いであろう治療の日々を懸命に乗り越えていくだけである。