届かぬ声 | セカンドリンゴハウス

セカンドリンゴハウス

日々の事つらつら。

「数の子下さい」
「はい?」
「数の子下さい」
「え?」
回転寿司の人気店に両親と出かけた。
メニュー数が多いだけに、すぐ欲しいネタはカウンター越しに注文する方が早い。
しかし、なかなか母の注文が板前さんに届かなかった。
「数の子!」
「ん・・・え?」
板さんの態度は決して悪いわけではない。
昼時の混雑時に個別注文もきっちり返事をしてくれて、むしろいい方だ。
だが、この時は母が大きな声を出してもなかなか板さんに声が届かず、
なんと四回目でやっと注文が通った。

「数の子」
「あ!数の子ね!分かりました」
板さんがほっとしたように注文の品に取り掛かり、
母がボソっとつぶやいた。
「なんで聞こえないんだろう」
「お母さんが早口過ぎるんじゃない?」
私が言うと母は即反論した。

「そんなことないに決まってるじゃん。
店がガヤガヤしてるから声が分散されちゃうんだと思うよ」
「そうかな~?」
「そうだよ」
とりあえず、店がガヤガヤしているから声が届かなかったということで決着がついて、
私達は食事を続けた。
しばらくすると母がまたポツリとつぶやいた。
「やっぱり・・・私の早口が原因だったみたい」
母が小さく隣のテーブル席を指差す。

「スミマセン、チュウトロ オオアマエビ」
「はい!中とろと大甘エビね!」
外国人がたどたどしい日本語ながら、一回でスムーズに注文を済ませているところだった。