柴犬と父 | セカンドリンゴハウス

セカンドリンゴハウス

日々の事つらつら。

近所の柴犬はとっても愛想が良い。
吼えることもなく、非常におとなしい犬で、
名前を呼ばれると小屋から出てきて自分の体を鉄柵に押し付け
撫でて貰おうとする。

柴犬が好きな父は、東京に遊びに来たとき、この犬の前を通ると必ず立ち止まる。
「○○(柴犬の名前)ちゃん~○○ちゃん~」
父が犬を呼んだが、昨日は、気温が低く雨も強く降っていた。
愛想が良いこの犬もこんな日は、なかなか小屋から出る気分になれないようである。
呼ばれてしばらくは、犬小屋で丸くなっていたが、
あまりしつこく呼ぶ父を気の毒に思ったのか、
寒そうにしながらも、ゆっくりと犬小屋から出てきた。

嬉しい父は、すっと犬の真上に自分の傘を差し出す。
そんなに会いたかったんだ、お父さん・・・。

二匹の愛犬に振り回された二十年、
二匹とも晩年は病気やら痴呆で両親は、本当に大変そうだった。
この犬達がいなくなってから数年経つのだが、
犬好きのあまり、自分達の生活を犠牲にしてしまう両親には、
せめて仕事を引退するまで、犬を飼うのはすすめられない。
「飼いたいな~」
と言う両親に、これまで反対を通してきた私だが、
細い鉄柵に指先を突っ込んで犬を撫で、
もう一方の手で犬に傘をさしながら自分は濡れる父を見ていたら
反対を続けるのはひどく残酷なことのように思えた。