
駿府公園は、名前からも分かるように、駿府城跡地である。
駿府城は、徳川家康が没した城として有名である。
この地を気に入った徳川家康は、天下を治めた跡、
すぐに息子に政権を譲り引退した。
そして、ここ静岡で晩年を過ごしたのである。
温暖な気候と、海産物にも恵まれたこの地で
晩年を過ごしたいという気持ちは、
ただの主婦の私にも理解できるものである。
駿府城を取り囲む、堀は中堀・内堀・外堀の三重に作られていた。
ちなみに、私の中学高校時代の母校は、
内堀と外堀の間にある。
この駿府公園には、友人達と青春時代のたわいのない会話や、
体温計を摩擦してまで欠席したかったマラソン大会、
数年前に死んでしまった2匹の愛犬との散歩など、
数々の思い出がある。
写真は、最近の発掘調査で見つかった、一番内側の内堀の一部である。
静岡を離れてからは、なかなか来る機会のなかった
この公園に、娘を連れて夫と遊びに行くことにした。
公園の一角に、これまた公園があり、ここは子供の遊び場として、
遊具がアスレチックのようにたくさん設置されていた。
東京ではあまり見かけないのか珍しい遊具に真っ先にはしゃいだのは
娘ではなく夫であった。
子供達が列を作る中、180センチの夫の姿があった。
無邪気な夫の姿を目にした私は、他人の振りをして、
娘を別の遊具に案内した。
しつこく、遊具にのりたがる夫を尻目に、私と娘は
一足先に、遊び場を離れた。
徳川家康像を見せてから帰ろうと思ったが、
夫は疲れて噴水前のベンチに座っていた。
像の前には誰もいなかった。
ふと、小学校時代の校歌が頭をよぎる。
「駿府城址を東に受けて~♪」
少し陽気になって歌い始めた私。
歌いながら夫のところまで歩き始めた。
だんだん、気分がのってきた。
どんどん声が大きくなったとき、すぐ左にアベックが
愛を語っていたのに気がついた。
高まった自分の歌声・・・。
やけくそに歌いつづけるべきかフェイドアウトすべきか悩み
後者を選択した。
噴水のところまで到達し、ベビーカーの番どころか、
気持ちよさそうに眠る夫を見つけた。
先ほどの恥ずかしさの八つ当たりもあって、
無性に腹立たしく夫をたたき起こす。
「あれ?俺寝ちゃった?」
さすがにこの時は「考え事してただけ」
とは答えなかった。
もうすぐ冬、ほとんど雪が降らない静岡も
めっきり寒くなった。
家に帰ろう。
騒々しい両親が、すっかり大人になった私を、
昔と変わらぬ温かさで待っていてくれるから・・・。