クサヤと言えば、臭い干物。
苦手な方も多いだろう。
そして、クサヤというものは新島産、大島産、そして八丈島産と産地、生産者の違いで製法が変わり、そして味や香りの違いにまで至るという事を知っている人はどのくらいいるだろうか。
今回、見学させていただいた八丈島「長田商店」さんのクサヤは、どちらかというと苦手な人にも食べやすいものであろう。
なぜ?
それを、クサヤとは?を解きながら説明していきたいと思う。
空港まで迎えに来ていただき、今回の旅で大変お世話になった黄八丈めゆ工房の山下さんの案内で一番初めに寄ったところが、ここ「長田商店」さんだ。
「こんにちわー」
ドアを開けると。
とても感じ良く、THE職人とは想像がつかない雰囲気の方が出てきてくれました。
「今日はお時間頂きましてありがとうございます」
「いいのいいの!今日はね午前中も見学の人達が来てて気がついたら1時間も話しちゃっててさぁ」
っと話すのが、長田さん。
すごく気さくな方だった。
その後、工場に案内していただきクサヤの製造を盛り込みながら長田さんの生い立ちと、八丈島のクサヤの歴史など1時間半にわたって話してくれました。
八丈島「長田商店」さんが決定的に違う製造方法は塩抜きと鮮度にあるようです。
むろあじは腹開き、トビウオは背開きで捌かれ、その後クサヤ液につけたものを、乾燥室で干す。
これがいわゆるクサヤの製造だが、長田商店さんはクサヤ液につけたものを、水にさらして塩分を抜き、マイルドに仕上げる。
実際、解説の途中に出していただいたクサヤは、私がいつも取り寄せている新島のものと比べて臭みも少なく、マイルドにしっとり仕上げられていた。
冷蔵、冷凍技術、そして輸送が整っていなかった、その昔クサヤは保存食であり、保存性を保つため塩分も強く、つまりしっとりとは仕上げられない。
なぜなら塩分が強い事による浸透圧によって魚の水分が出ていってしまうからだ。
「昔のクサヤはさぁ、もっと塩っ辛くて、硬かったんだよなぁ。あれがクサヤだよ」
そう話す山下さん。
時代に合わせて、様々かわってきたという事が、このやりとりだけでも伺える。
「いま50代、60代の人達の中には八丈島で結婚式を挙げた人も多かったんですよ。その人たちが、懐かしいなとクサヤを八丈島に注文して、昔はこうじゃなかったなと思うのも事実なんです」
すかさず
今回の八丈島旅行の手配をしてくれた、私の友人が
「くさやクラシックってのあったらいいんじゃないですか?」
うんうん!私は大賛成!そう心で叫び、そして思い出した。
大昔。
お父さんが持ってきてストーブの上で焼いていたクサヤは、いまみたいにパックされてなくて、紙に包んであった。
そして、もっとしょっぱくて、もっと硬かった。
なんか、うる覚えの幼少期の記憶が話と工場中に漂うクサヤの香りの中でよみがえる。
「クサヤ液の方見に行きましょうか。」
長田さんの案内で、いよいよクサヤ液の部屋に入る。
数年前
TVでクサヤの製造を見てから、1度見てみたい。1度その香りを体感してみたい。そう思っていた念願のクサヤ液。
クサヤ液の部屋に入った段階では、まだまだ何も変わらない。
蓋を開ける。
ふわぁ
っと、いわゆるTHEクサヤの香りが一気にその部屋を包み込む。
さらに、長田さんはそれをかき混ぜ始める。
発酵した白い泡の中から赤い液が顔を出す。
するとクサヤ液の香りが、私の鼻筋を走り抜けていく。
まるで、F1レースのストレート、いわゆるバックストレッチを一気に駆け抜けていくように、気がつくと目頭と鼻の間に香りが充満している。
「これね。これがクサヤ液なんだけど、すっごく強いの。怪我した手にこれ塗ったらすぐに直っちゃうんだよ!」
(まじかっ!!
すげーっ!
じゃぁじゃぁ飲んでみたい!)
興奮気味にそう思っていた矢先に
「水で薄めて風邪薬のように使う人もいるんだよ」
「あのぉ。じゃぁ、これいま飲んでもいいですか?」
我慢できずに発してしまった。
「え・・・飲むの。まじ?。」
っと山下さん。
「大丈夫ですよ!」
っと、長田さん。
っという事で、貴重な体験!
クサヤ液を直に飲む(実際には舐める)
う!
うまい!
これで酒飲めるやん!
クサヤに発酵的な酸味が加わったような感じだった。
乳酸菌系というか、何とも言えない風味。
念願かなったり!!!
そして長田さんは、長田さんのクサヤの秘密を話してくれた。
例えばトビウオのクサヤ。
よく見かけるトビウオのクサヤは、背開きにされた中央部分、つまり腹のあたりに赤く線が入っているいう。
(そういえば、そうだった気がするなぁ)
それは、魚が死んだ後に心臓から出る血の跡だと話してくれた。
そこで長田さんのクサヤを見る。
その線がない。
捕獲してすぐに捌いてクサヤ作りの工程に入るため、血が回る間もないようだ。
漁港から、長田商店さんまではわずか38秒!
どんなに輸送技術が上がってもこれにはかなわない。
さらに秘密の話は続く。
漁獲とクサヤの仕込みの時期や、クサヤ液の調整の話、同じクサヤ桶でも入れる魚の数で仕上がりが変わるという話、冷凍による身割れの話。
何でも話してくれた。
「昔はね。こうやって何でも僕が話すもんだから、なんで家業の秘密を話しちゃうんだ!って怒られたりもしましたよ(笑)」
その当時を振り返る長田さん。
「親父がいないときに、僕が仕込みしてるでしょ。そうするとうちの技術をそっと見に来る同業者の方もいるんですよ。でも逆に僕が教えられちゃったりしてね(笑)」
「僕はね、うちだけがじゃなくて、島全体が盛り上がってほしいんですよ。だから子供たち集めてクサヤ作りの体験させたり、講演したりしてるんですよ。そしたらその子供から手紙が届くんですよ。またあのクサヤが食べたいって。嬉しいでしょ」
熱い人だなという印象を強く残して、挨拶をし工場を出た。
若いころに、家業が嫌で飛び出し、北海道へ行き挫折を覚え、それでもなお立ち上がり、いまは島のためにと強く思う長田さんの話は熱かった。
焼きたての熱々のクサヤを手でほぐすその瞬間に、この熱い話をまた思い出すだろうと強く確信した。
長田商店
★★★
NHKオンデマンド
「小さな旅」八丈島特集
今回お世話になった長田商店さん、めゆ工房さんも紹介されています。
https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2018087582SA000/


