嬉しいプレゼント[ダリム×シエナ] | バニラ味の夢

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16歳以上推奨女性向け恋愛アドベンチャーゲーム「街で噂の伯爵様」 16歳以上推奨女性向け恋愛アドベンチャーゲーム「街で噂の伯爵様」


フリーの乙女ゲーム『街で噂の伯爵様』の二次小説、ダリム×シエナです。
プレイ後に読まれる事を推奨します。↑のバナーから公式サイトに行けます。是非やって私に素晴らしいダリシエをいっぱい下さい。恋愛ルートギャグルートダークルートと色々な一面が楽しめます。断然ギャグルートおすすめです(きりっ)
Ib』がはやってるしこの調子で、軽い気持ちで皆やっちゃいましょう



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「う~ん、どうしよう…」

薄暗い森の奥深く、静かに佇むお屋敷の窓から、朝の木漏れ日が微かに差し込んでいる。毎日掃除をしてもほこりとかびの臭いが気になるこの屋敷で、今日も見習い使用人のシエナは、掃除を……していなかった。
首もとのリボンはたて結びの酷い形、髪の毛は寝癖でぼさぼさ、窓を拭く雑巾は水浸しでびちゃびちゃ。明らかに、心此処に有らず、といった様子で窓を濡らしていく。床に水が滴っても、止まることなく緩慢に手を動かす。

「………?」

掃除の終わった部屋から廊下に出たダリムは、シエナの異常に素早く気づき、心持ちゆっくり近づいて、シエナのふぬけた顔をうかがった。ダリムに目もくれずに、うんうん唸りながら作業を続けている。

「食べ物は駄目だし、かといって他の物って…?街で買うには、伯爵のお金と許可が必要よね…難しいわ…。手作りの物、って私不器用だし、上手くできないかなぁ…?ああ、どうしよう…」

ぶつぶつと独り言をつぶやいたかと思えば、その場で雑巾を力いっぱい絞って、床に小さな水たまりを作った。

「……!…!!」

これには流石にダリムも見かねて、声が出ないとわかりつつも口を開けて、シエナの肩を軽く叩いた。

「え?あれ……、ダリムさん?」

ダリムの瞳をとらえたシエナは、きょとんとした面持ちでしばらく考えてから下を向き、ああっ!と小さく叫んでから足下の水たまりを、雑巾で必死に拭いた。今までの緩慢ぶりからは予想できない速さだ。
その様子を見ながら、ダリムは水びたしになった窓を拭きなおした。範囲が狭かったため、窓の方は何とかすぐにふきとれた。しかし、古い材木で出来た床はすっかり湿ってしまったことだろう。これで古臭いこの屋敷が更にかび臭くなることは、間違いない。奥様旦那様、そして坊っちゃんの大切な屋敷だから出来るだけ保存には心を尽くしたいが……良い方法も思いつかなかったので、とにかく早く床が乾いてくれるのを願うことにした。

「…ごめんなさい」

一段落して、シエナがしょんぼりして頭を下げる。ダリムは苦笑しながらも手を振り、気にしなくていいことを伝えた。

「ありがとうございます。ダリムさんは優しいですね」

彼女も苦笑して、絞りきったぞうきんを絞りなおしていた。ダリムは無自覚の行動を起こすほど、一体何を考えていたのかをシエナに伝えようとする。

「………?」
「え?何ですか?」

シエナとは、まだ意思疎通が上手くいかない。坊っちゃんや奥様旦那様、ユーリィとは自然に会話が出来るが、シエナとはまるで電波が送受信できないかの様に、自分の声が届かない。
困って両手を上げていると、ふとメモ帳を持っていた事に気づき、さっと取り出して携帯している万年筆で文章を書いた。そのまま手渡しで、シエナに見せる。

『一体、何を考えこんでいたのですか?』

字を読み終わった後に、シエナはまたもやうーんとか、えーっと、などと言いながらきょろきょろしている。そんなに言ってはいけないことなのだろうか、と不安の眼差しで、ダリムはシエナのつむじを眺めた。

「…ビックリ!サプライズ!にしようと思って、黙っていたんですが…」
「?」
「ダリムさんにプレゼントする物を、考えていたんですよ」
「……!」
「ほら、ダリムさんは料理食べられないじゃないですか。だから手料理は無しとして、街で何か買うには伯爵の許可が要るし…。手作りのセーターやマフラーは、私不器用だからどうかなって。でも、もしも街に行けても、結局何を渡したら喜んでもらえるだろう、ってわからなくて」
「……」
「ということで、結局本人に聞くことになっちゃいました。さあ、ダリムさん。何が欲しいですか?」
「……?」

ダリムは大きく身振り手振りをしたが、やはり伝わらない。再びシエナからメモ帳を受け取り、さらさらと書いてから、渡した。

『何故、私にプレゼントをしていただけるのですか?』

意外な質問だったのか、シエナは答えようとした口を開けっ放しにして、ひとりでにうなずいている。頭をぽりぽりかいて、ちょっと恥ずかしそうに顔をほころばせた。

「だって、ここに来てからまだ一度もダリムさんにちゃんとした贈り物が出来てないなー、と。いつもお世話になってますから、何か喜んでもらえたら嬉しいなぁ、と思ったんです」

私何でも用意しますんで!遠慮無くどうぞ!と、慌てて付けたすシエナを見て、ダリムは穏やかに微笑んだ。シエナのぼさぼさの髪にそっと触れ、優しく撫でる。

「あ、あの…?」いつまでも髪を撫で続けるダリムに対し、一考して出た考えが「あ!メモ帳ですね!はい、どうぞ。書いて下さい」と、いうことだった。

メモ帳を受け取ったダリムは、白い紙をじっと見つめてから、万年筆と共にポケットにしまった。「ええっ!?」と驚きで目を丸くさせるシエナの手を両手で包みこむ。ずっと雑巾仕事をしていたから、恐らく手が冷たいだろう。こうやっても温めてあげられない自分の手を呪いながら、軽く頭を下げ、口だけを動かした。

「………」

シエナには伝わらない…、そう思いつつ、混乱してますます悩み込むシエナを想像した。
しかし、シエナはふふっと微笑んで、ダリムの黄色いくしゃくしゃのくせ毛をわしゃわしゃして、
「…ありがとうございます。ダリムさんは優しいですね」
先ほどとは少し違う、優しく愛らしい声で、言った。





「…随分と、楽しそうだな」

そんな二人のふわふわきらきらした空間に、ひょっこりと、かのヴァルトレート伯爵が登場した。

「は、伯爵!?空気読んでくださいよ。これはダリムさんルート…」
「お前、俺にくれたネクタイとかあったよな」
「え、ああ。そうですね~…」
「あれ、街に着けていったら不評だったぞ」
「ま、まあ、伯爵は何も着けない方が男前、といいますか…あはは」

伯爵の目がきらりと光って、にやりと笑った。

「俺にもプレゼント、考えてくれるよな」
「ええ~!?や、やめて下さいっ引っ張らないで下さい!ひゃあ~っ!」
「ちゃんと俺を喜ばせろよ」

伯爵は大変爽やかに、シエナのことを引っ張って何処かに連れていった。




……坊っちゃんにもシエナさんにも、困ったものです。この作品は、ギャグルートだけでは無いのですが…。
でも、シエナさんがあんなことを考えてくださっていたなんて、意外でしたね。彼女は、嫌々此処で働いているものだとばかり…。
子猫の件もありますし、お転婆で可愛らしい方ですね。
と、先ほどの寝癖やたて結びのリボンを思い出して、笑う。
こんな体でも、まだ血が通っているかの様に、暖かい鼓動を感じる。
さっきの言葉は、伝わったのでしょうか?

今の私の、素直な気持ち。



『あなたがいるだけで、大変嬉しいプレゼントですよ』





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・あとがき・
ここまで読んでいただいてありがとうございました。私もプレイしたのが去年なので内容が結構あやふやですが、急にダリシエ萌え!!!と脳内が叫び出したらめでたく生まれていました。
また再び街噂がプレイしたくなりました。イラストレーターさといさんの、オズマフィアやディアラバも、今後が楽しみですね~。