バルガッツォ渓谷 | バニラ味の夢

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ゲームのらくがき、つぶやき、日常の振り返りとか。

※アヴァロンコードで、ウルとティアがネアキを救出する道のりの話。



相変わらず、空は、灰色の雲で被われていた。吹きすさぶ風は、非情なほど冷たい。ハーピーや、ミノタウルスまで、洞穴で身をかためているようだった。
バルガッツォ渓谷の崖っぷちに、ティアは立っていた。遠くを見つめる瞳は、どこも見つめてはいない。風で揺らぐコートは、ばたばたと休む暇も無く動き続けている。
「ティア、何を見ているのですか?」片手に持っていた予言書のすきまから、雷の精霊ウルが出てきた。他の精霊といるときのミニサイズではなく、ティアと話す時の等身大サイズだ。
ティアの横に立ち、同じように空を見つめるが、頭で考えられるのは、世界の原理の知識と、次の世界を作るための手順が規則通りに並んでいることしか無かった。世界を救いたい気持ちより、クレルヴォに新世界創造を邪魔されたという憤慨と、世界創造に手間取ってしまったという憂いの感情が残るばかりだった。
「あなたがつらいのはよくわかります」ウルはティアの横に、静かに立っていた。「しかし、立ち止まらないと、あなたは言ったはずです。どうして、このような所で、止まっているのですか?」
物理的には見えないとわかっていても、言葉が伝わるように、ティアの方を振り向いた。ティアは、乾いた瞳を、煩わしそうにまばたきしただけで、返事はしなかった。
この数日間で、様々なことが、起こりすぎた。幼い頃からの友達のファナをなくし、街は崩壊した。予言書は奪われ、人々から蔑まれ続けてきた。無力な少女は、己の力で道を切り開き、ここまでやってきた。白い小さな顔には、涙の痕さえ、一つも無い。
「ティア」ウルは、呼んだ。機械的な響きだったのかもしれない。ウル自身も、その言葉に意味を見いだせないまま、時が刻々と過ぎていった。

暗鬱とした雲が、だんだんと赤くなっていった。光は見えなくても、確かにその向こうに、太陽の存在を感じられる。それは、よく見ていないとわからない変化だった。
「わたしは」強い囁きが、風に乗って運ばれる。雲の隙間から、赤い光の柱が、幾筋も海に突き刺さっている。
「誰のことも、救えなかった」優しい両親も、大切な親友も、愛する街も。
「きっと、まだ失い続ける」この世界でさえ。
…だから、予言書に記録して、永遠の記憶にする。
という最後の呟きは、風によって完全に連れさられてしまった。その声を聴いたのは、隣にいたウルと、静かに目をまばたきした予言書だけだった。
「ええ、ティア」ウルは賛同した。「この世界が滅ぶまでに、世界の情報を記録して、次の世界に活かすのです」微笑みながら、何の悪意も無く、ただそういった。ティアにとって、どれだけ残酷な言葉か、まだ、知らずに。
そして、ティアは、悲しい笑みを一つして、暖かい日の光を背に受け、トルナック氷洞を目指した。




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アヴァロンコード2周年おめでとうございます!
ということで、やっぱりウルとティアの二人きりの時が好きなので、書いてみましたが、とっても暗いお話になりました。あの時のティアは、つらいことがいっぱいありすぎて、とてもウルどころじゃないと思う。
ウルも、その時はまだティアと仲良くなくて、「守る」のではなく、あくまで「記録する」立場であることを普通に主張してるんじゃないかと思う。後々に、だんだん察することができるようになって恋に落ちる☆とかいう甘い話を今度は買いてみたいなーと思いました。
前記事のミニ小説、終わってませんが、いつかかきおわします。っていうか、ミニじゃない(笑)