この螺旋階段はモローが彼の自宅を美術館に改築した際に建築家と共に考案したもので現在も来館者が1階と2階を行き来するのに使われています。
初めてこの螺旋階段の写真を目にした時、ああ、これこそが「天国への階段」だと感じました。
もう随分と昔のことです。
天国へと続く階段。
母は、そしてゴンもきっとあの日の点火後、プリンセス天功よろしく棺桶から抜け出し、暗い部屋の片隅に現れたこの螺旋階段を昇ったのだとゴン兄は信じています。
そして階段を昇りきったその先には、母が愛した尾瀬の大湿原が燧ケ岳を背景にどこまでも広がっていたに違いない。
ゴンと訪れた知多四国霊場のお寺から見た海が広がっているに違いない。
モローは言っています。
「わたしは目に見えないものだけしか信じない」と。
ゴン兄、彼のこの言葉にどれだけ救われたことでしょう。
ギュスターヴ・モローはフランスを代表する象徴主義の画家で、特にギリシャ神話をモチーフにした題材で知られています。
淡い色調と繊細なタッチの中に彼の強い信念を感じ取ることができます。
彼の美術館は住宅地の中にひっそりと佇んでいます。
そこが美術館であることを気づかない人も多いそうです。
ルーブルやオルセーのような大きな格式ばった美術館とは違い、来館者は誰もがモローに心酔する彼のファンであり友人であり家族です。
床に座り込んだり、柱にもたれたりして、壁一面に飾られた作品を日がな一日思い思いに鑑賞しています。
いつかゴン兄も行ってみたい。
そして母が昇った螺旋階段を昇ってみたい。
ゴンと一緒に昇ってみたい。
2階の展示室に母はいる。
ゴンもいる。
優しい光の中で、天使達と微笑んでいる母ゴンと必ず会える。
そう信じています。
ギュスターヴ・モロー美術館
Musée national Gustave Moreau
