カブトムシ、クワガタ・・・男の子がいたら、一度は飼いますよね。
若葉の頃、我が家は、突然やってきたアゲハの幼虫に 楽しい日々をプレゼントしてもらったんですよ・・・
~ With album ~
『アゲハのアゲちゃん物語』
我が家の夏みかんの葉で見つけた 青虫。
きっと アゲハだろうと、
とりあえず 「アゲちゃん」と名付け、
とりあえず 息子が小学生の時にカブトムシを飼っていた水槽を
「アゲちゃん」用にリフォームした。
柔らかい土を敷き、
新鮮なみかんの葉を茂らせ
そして、
サナギの時を過ごすための 極上の棒をセレクトして入れた。
アゲちゃんは
突然やってきた
小さな赤ん坊のようだった。
3日目
アゲちゃんの姿が見えない!!と 大騒ぎしたのは主人。
さんざん 眺めまわして、「アゲちゃん、サナギ体制!!」と叫んだのは娘。
確かに
からだを くの字 に曲げていた。
しかも、
アゲちゃんが (その時)に選らんだのは、
あの極上の棒ではなく、
古びた水槽のフタの裏だった!
・・どうやら、10日ほどで羽化するらしいよ・・・
『小学昆虫大図鑑』を開いて見せたのは息子。
その日から、
ネクタイ締めたサラリーマンが、
念入りにお洒落した大学生が、
チョボチョボ髭のぞく高校生が、
毎朝 毎夕
水槽にへばりつくように アゲちゃんの様子を確かめた。
1週間目
変化なし
10日目
相変わらず 変化なし
(10日ほど の(ほど)に期待をかける。)
11日目
やっぱり 全く 変化なし
主人が動く。
新鮮な葉を入れてやる。
(意味ない・・・でも 何かせずにはいられない。)
12日目
久しぶりに遊びにきた友人が 「少し 茶色くなったわね~。」と言う。
が、毎朝毎夕 眺めまわしている私達には、
その(少し)が認識できない。
毎昼 主人から「アゲちゃん どう?」コールがはいる。
12日と20時間目
「生きてるのかな~」
誰もが タブーにしていた言葉を
ついに 息子が口にする。
(でも、どうやって 確かめるのだ・・・)
12日と23時間目
「うっ、ひょっとして、茶色い線が見えてる!」
「そういえば 端の方が角ばってきた!」
ついにフタを開けて、四つの顔で 覗きこむ。
「きた~~~~~!」
お腹のところに茶色い線が入り、羽根の模様らしきものが 透けて見える。
以前 一度だけ見た羽化の記憶を たぐり寄せ
Xdayは
(明日だろう・・・)
と決定。
(もしかしたら・・・)
の後ろ髪を引かれながら
皆 床につく。
13日目 午前4時半
一番 朝寝坊の私が
一番 早起きをして
水槽を覗く。
すぐに 皆に声をかけ、
5時間半前と同じ、
四つの顔で覗き込んだ。
覗く私達は、
5時間半前と
ちっとも変わらないのに
アゲちゃんがいた水槽の中は
まるで、プリマの幕が上がったようだった。
・・・サナギの「アゲちゃん」は、目も覚めるように美しい 蝶々の「Miss アゲハ」になっていた!・・・
(アゲちゃん・・・)
あとの言葉もなく
私達は
生まれ変わったアゲちゃんの、
いや、Missアゲハの
優雅な舞に 見惚れていた。
14日目
ちょうど
アゲちゃんが気になって見に来た 近所の子達と一緒に
水槽のフタを開ける。
「Missアゲハ」と変身したアゲちゃんは、
事態がつかめず
しばらく 水槽の壁に
細い足をこすらせて、
羽根をパタパタした。
たぶん、
自分が生きてゆく世界の広さが
わからなかったのだろう。
なかなか飛び立たないアゲちゃんに、
「困ったね~。」と 呟きながら
どこかで
ちょっと ホッとしていた。
一息吸って、
Missアゲハをすくう様に手を差し伸べた。
Missアゲハは、
しばらく 私の手にまとわりついたが、
世界の広さに気づくと、
フワリと浮き上がり、
ヒラヒラと揺れながら
花水木の向こうに
消えていった。
それは ほんの数秒の事だったはずなのに、
Missアゲハの
ステンドグラスの様に美しい 羽根の模様が
青空に 透けて見えた様に思えた。
・・・・・ ・・・・・
アゲちゃんが行ってしまってから、
ちょうど3日。
水槽は
アゲちゃんが10日間過ごしたサナギの殻を残したまま、誰も 片付けようとしない。
子供の様に
戻ってくるのを待つわけでもないけれど、
皆、アゲちゃんの幸せを
祈っているのは 確かなのだけど、
水槽のフタは
半分 開けられたまま
見送った
その場所に
こうして 置いてある。
