7月30日
午後7時32分
只今 蝉君 地上へ登場・・・
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7月も終わりの頃になると、我が家の夜の庭で、白い花が咲くように、蝉の羽化が始まる。
子供達が小さかった時、自由研究のため 一晩中 枝を見上げて観察し、首が痛くなった事があったが、
図鑑に書いていない 不思議な行動は 実に興味深かった。
まず、私が知りたかったのは、
幼虫から羽化する様子は
図鑑を開けば 必ず 見る事ができる。
が、あの幼虫は 7年近くも土の中にいて、どうやって、羽化という、命懸けの場所を探すのだろう・・・
という事だった。
そこで、子供達と手分けして、日暮れが始まる7時前頃から 庭の木の下で張り込んだ。
すると、土を割って出てくる現場は押さえられなかったが、
水撒き用のホースのトグロの間から 小さな茶色い 脱け殻が、
いや、失礼!
中身の入った脱け殻?を付けた幼虫が 顔をだした!
思わず
「脱け殻!脱け殻!
Fちゃん、N君、脱け殻が出てきたよ!!」
と めちゃくちゃな事を言った。
弁解するようだが、これを読んで下さっている方々も、あの光景をご覧になったら、
まず、幼虫 という言葉は出ず、80%近くの方々は、私同様 「脱け殻が出た~!」と お叫びになられるだろう。
その 脱け殻ならぬ幼虫君、顔を出したら、ひょこひょこ ホースの上を歩き出した!
硬いはずの あの脱け殻が、プヨプヨと柔らかく、実に巧みに 丸いホースの上を歩き出したのだから、もう、子供達も私も 釘付け!!
しかも、もっと よく見ようと、懐中電灯を当てた瞬間 ピタリと動かなくなり、消すと また モゾモゾと歩き始めたから、もう 開いた口がふさがらない。
幼虫君は、ホースのトグロから這い出ると、今度は 近くの梅の木に向かって歩き出した。なんで、そちらに木がある事がわかるのだろう・・・こういう事は、図鑑には書いていなくて、実際、こういう事が一番気になる。
梅の木に上りはじめて 羽化態勢に入るまで、要した時間は15分。
直ぐに 枝に止まって 羽化し始めるものと思っていたら、あっちの枝、こっちの枝、と渡り歩いた。
そして、見上げる私達の首も限界に達し始めた頃、ようやく 小さな枝の葉の裏に落ち着き、最後の態勢を整えた。
後は、昆虫図鑑通りに事は進み、日も改まった午前1時30分、羽化は無事終わった。
あの 白い羽が すっかり茶色くなった時、三年生のFが
「蝉君、大人になった~!」
と言った言葉が忘れられない。
それから、大人になった蝉君は、その後 どうしたかと言うと、
直ぐに、脱け殻となった、元自分、から離れ、全く別の場所で、しばらくじっとしてから飛び立ったのである。
羽化したばかりの蝉は、グググという小さな声しか出せず、
今度は私が 思わず、
「生まれたばかりのN君みたい・・・N君は、ふんぎゃ~!ふんぎゃ~!って泣くものとばかり思ってたら、うぎゃ~・・・って、呟いただけだったから・・」
と言った。
幼稚園年長さんのNは
今 目の前にいる蝉と比べられた自分の生い立ちに、複雑な顔をし、
病院中に響き渡る ふんぎゃ~!を連発した三年生のFは、勝ち誇ったような顔をしていた。
ちなみに、蝉が、いわゆる ミンミン ジャンジャン と 高らかに鳴けるようになるまでには、四日ほどかかるらしく、
地上一週間の命の蝉の
あの合唱は、
人生 最期の
命の歌!!!
という事になる。
今夜も 蝉君の羽化が始まった。
振り出した雨を気にしながら、
~どうか 無事 羽化を終え、君の 歌が聞けますように!~
と、16歳になったNと 20歳になったFと 主人と私で お祈りをした。
