この映画は、2023年6月16日に公開されました。

       

 主人公の神崎昭夫さんは、大企業の人事部長。管理職という華々しい肩書きの裏側には、重たい職務の重圧に悩んでいました。その上、妻とは半年前から別居中。妻は部屋を片付けるプロフェッショナルの仕事で活躍中でした。大学生の娘舞さんは勉強や大学に熱心さがなく、「あなたは必死で勉強してパパのような大会社に入るか、大会社に勤める人のお嫁に行くかしか生きる道が無い。」と、母から切り捨てられるような言葉をもらい、自信も希望も持てない日々を送っていました。舞さんは、自分を低く評価する母から逃げるかのように、おばあちゃんの家に住むようになります。

 

 昭夫さんの母福江さんは、足袋屋を営んでいました。既に父は他界。久しぶりに実家に帰った昭夫さんは、母が仕事にボランティアに生き生きとしている様を見ます。「おばあちゃんの家には、毎日親しい間柄の人が来てふれあいがあって楽しい。」と、舞さんは昭夫さんに言います。舞さんにとって空気感が合うというか、ほっと安心するという感じ。仕事で悩みを抱えている昭夫さんも、実家に帰る度に癒されているかのよう。

 

 お母さんの生き生きは、牧師さんへの恋心にありました。一緒にボランティア活動をしたり、教会でお話を聞いて勉強したりするうちに芽生えた恋心。「素敵!」と言って応援する孫娘。しかし、息子の昭夫さんは好ましく思いません。自分の人生が問題だらけなのに、よしてくれよ!って感じ。

 

 物語終盤、福江さんは自分の人生がいつ終わるのかが怖いのではなく、いつ寝たきりになるのか、人様の世話になるとはどんなことなのか、が怖いのだと。だから、毎日、希望を持ってワクワクして過ごしたいだけなのだ、と吐露します。そうですよね、、、老年期を元気に希望を持って過ごしたい気持ちは、誰もが持つと思います。福江さんは高齢者という言葉がふさわしくない感じで、キラキラした毎日を送っていますが、お年を召されていることは事実。そんな母に、息子の昭夫さんは言います。それは僕にも訪れることだよ。

 

 神様から生きる希望を奪われたと拗ねていた福江さんでしたが、別れと出会いはワンセット。「母さん、頼むよ!」と新たな生き甲斐を受け取り、物語はエンド。福江さんに笑顔が戻りました。