大事な人が遠くへ行ってしまうのは… 【ちりとてちん 地獄の沙汰もネタ次第 #107】 | 魔女のほうき

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福岡の街に棲みついた魔女パープルが美味しいモノ、かわいいモノ、綺麗なモノ、気持ちいいモノを好奇心の赴くままに探究するブログです。近頃は、フラにロミロミとHawaiiづいているパープルです。

もう…今日は…もう…泣けて泣けて…

こうやって書いていても、涙がでそうです。


草若師匠の病状がもはや手遅れということを聞かされた弟子たちの動揺と悲しみ。

菊江さんの前でしか泣けない小草若ちゃん、平兵衛の水を替えてあげるのに手が震え、カゴの中に水入れを落としてしまい遂に両手で顔を覆ってしまう四草さん、師匠を思い抱き合ったまま泣きつづける喜代美と草々さん。

そして、一番胸に迫ったのが楽屋の鏡の前で必死に高座用の笑顔を作ろうとしている草原兄さん…

吉弥さんの実際の師匠吉朝さんも二年前に亡くなられているので、万感迫る思いで演じられていたのでしょう。


草若宅、稽古場。

倒れる草若師匠。

「師匠?」(喜代美)

「師匠、大丈夫ですか?師匠!」(草々)

「救急車呼びなれ。」(お母ちゃん)

「は?」(喜代美)

「はよう!」(お母ちゃん)

「はい!」(草々)

「師匠、大丈夫ですか?」(お母ちゃん)

「何、どういうこと?」(喜代美)

「時間が無いんや。草若師匠にはもう、時間がないんや!」(お母ちゃん)

草若師匠の背中をさするお母ちゃん。


四草の部屋。

「おう。」(小草若)

「どないしたんですか?」(四草)

荷物を抱えた小草若がドアの外に立っている。

「しばらくここ置いてくれ。」(小草若)

「ここに…て、マンションは?」(四草)

「売った。」(小草若)

「実家に帰ったらええやないですか。」(四草)

「帰れるわけないやろ。しんどいんや、師匠の…親父の顔見んのが…」(小草若)

「そやから言うたでしょ。」(四草)

「何が。」(小草若)

「ちょっとは草若の息子の自覚持て…て。」(四草)

「お前にはわからへんて。誰にもわからへんわ。親父の名前がどんだけ重たいか…」(小草若)


ピリリリリリリ。(携帯電話の音)

「公衆電話からや。かまへんか。」(小草若)←こういう細かい気遣いがいいですよね、小草若ちゃんは

(うなづく四草)

ピ。

「はい。何や~草々。…」(小草若)

顔色が変わる小草若。


病院。

医師の前に小草若、草原、草々、四草、喜代美。

「師匠が最初に身体の不調を感じてこちらにいらしたのが、夏のはじめです。ご家族を呼んでくださいと言うたんですが…師匠が頑なに拒否されまして。」(医師)

「それで、どうなんですか。治療したら治んのですか。治んのですよね。」(草原)

「治療に専念すれば、ある程度の延命は可能です。」(医師)

「延命て…」(小草若)

「最初の段階で、手術しても完治はできないとわかりました。」(医師)

「師匠に会えますか?」(草々)

「今日のところは、安静にしといたほうが。」(医師)


夕方、菊江の仏壇屋。

「お、仁志。」(菊江)

「おばはん、水くれ。」(小草若)

「まぁた喫茶店みたいに言うやろ~」(菊江)

奥へ入る菊江。

ソファーに腰をおろし、一点を見つめる小草若。涙が流れている…

小草若を見る菊江。

「仁志…」(菊江)


四草の部屋。

平兵衛のカゴの中に水入れを入れる四草。手が震えている。

水入れを落とす四草。カゴの中に平兵衛。

「瀬を~はやみ。」(平兵衛)


楽屋。

鏡の前に座り、笑顔を作ろうとする草原。

両手で頬をひっぱり、無理やり笑おうとする草原。


草若宅、離れ。

喜代美と草々が背中合わせに座っている。

「何でや…何で師匠が…」(草々)

草々の頬に涙がこぼれる。

草々を見る喜代美。

喜代美を抱きしめる草々。


部屋で平兵衛を前に頭をかきむしる四草。


楽屋で笑顔を作り、目に涙をためている草原。


仏壇屋のソファーに座り、涙を流している小草若。


抱き合ったまま泣きつづけている喜代美と草々。


縁側に座っているお母ちゃん。

「糸子さん。」(小梅)

「おかあさん!どねしなったんですか。」(お母ちゃん)

「あんたが電話で、ちゃ~んと話さんさけぇ…来ましたんや。」(小梅)


病院。

草若師匠が眠っている。ベッドの周りの5人の弟子と糸子と小梅。

目を覚ます師匠。

「師匠。」(草原)

「何で黙ってたんや。何でや!」(小草若)

「小草若。」(草若師匠)

「言うたら、お前止めるやろ。常打ち小屋の事なんか忘れて、治療に専念せぇって医者みたいなこと言うやろがぁ。」(草若師匠)

「まだ懲りてへんのか。あん時かて、常打ち小屋のためにお母ちゃん放ったらかしにして。寂しい思いさしたやろ!」(小草若)

「ひとし…すまんなぁ。」(草若師匠)

師匠を見つめる喜代美。


夜。

喜代美がベッドの側に座って、泣いている。

「何を泣いてんのやなぁ~」(草若師匠)

「師匠。」(喜代美)

「笑わんかい~」(草若師匠)

「笑えるわけないやないですか。師匠かてぇ、女将さんの病気のこと知って、高座すっぽかしたやないですか。私…もう嫌なんです。

小さいときぃ、大好きやったおじいちゃんが亡くなって、もうほんまに涙でダムができるくらい、泣いて泣いて、泣き倒したんです。もう二度とあんな思いしたくないんです。

大事な人が、大好きな人が、遠くに行ってしまうのは嫌なんです。」(喜代美)

「若狭…」(草若師匠)

起き上がる師匠。それを支える喜代美。

「お前、ほ~んまにアホやなぁ。はぁ…。ハハ、どないすんねんなぁ~俺より先に死ぬか?俺が…先に死ぬのがかなわん…言うのやったら、お前が先に死ぬしかないやないかぃ~」(草若師匠)

「ぅぅぅ、グスン…」(喜代美)

「でやな…残った俺に…そんな…かなわん思い…させる気ぃか?」(草若師匠)

「グスグス、ぅ、ぅ。」(喜代美)

「こんなもんはな、順番や。お前より先に…俺が死ぬのは道理や。消えていく命を、いとおしむ気持ちが…だんだん…今生きてる自分の命をいとおしむ気持ちに変わっていく。そしたら…今よりもっともっと…もっと一所懸命に生きられる。もっと笑うて生きられる。

若狭…俺を笑わしてくれ。お前の創作落語で俺を…笑わしてくれ。」(草若師匠)

草々が入ってくる。

「やってみます。創作落語…やってみます。」(喜代美)

微笑む師匠…

(つづく)


「こんなもんはな、順番や。お前より先に…俺が死ぬのは道理や」

そう言われても…わかっているけれども…大切な人の死に向き合うのは、簡単ではありません。

今年十七回忌を迎える私の父のときにもそうでした。

父の前で泣いてはいけない…涙を見せてはいけないと、泣き虫の私が一所懸命笑顔をつくって病室のドアを開けていたことを思い出しました。

「お前の創作落語で俺を…笑わしてくれ」という師匠の言葉に、創作落語に挑戦することを決心した喜代美。

ここからが落語家としての真価が問われるところです。師匠の思いを受け止めることができるのか…


今日でこんななのに、来週からの展開に耐えることができるのか心配です。


NHKステラ2/15号の『師匠がくれた宝物』と題した、徒然亭の弟子5人が師匠への思いを語るインタビューを読んでると、もうどうしようもなく、泣けてきます。

ネタバレが気にならない方は、読んでみてください。

(立ち読みすると、泣いてしまって周りの人から怪訝な目で見られるかもしれません…)