「塩狩峠」という言葉を目にすると、
あらすじと結末に心が締め付けられるだけでなく、
あの子にひどい事をしたなという罪悪感までも蘇るものだから目を背けたくなってしまう。
高校時代「倫理講読」を選択授業に取っていた私。
最後の授業の時に出された課題が「自分の人生を変えた物」というタイトルでA4一枚の紙にまとめるという内容だったのだけど、
ある子がこの「塩狩峠」を挙げて発表していた。
私も勿論この作品を読み、好きな本の一つとして掲げていたので、嬉しさのあまり興奮してしまった。
授業が終わった後、その熱量で彼女に話しかけてしまった。
彼女との温度差たるや、今思い出すだけで顔を覆いたくなる。
私はその子を前から「綺麗な子だな」と思っていたので、話しかける口実が出来たというミーハー心も否めなかったのだが、
その時の私はそれを制御するすべを知らないただの痛い子だったので、話題がそこから発展することもなく静かに終わってしまった。
塩狩峠の三文字を見ると、いつもそれを思い出してしまう。
今思えばたかだか10数年の短い人生だが、「人生を変えた物」というテーマで持ってきた一冊の重みに対して、敬意を感じられない態度として映ってしまっただろう。本当に申し訳ない事をしてしまった。
10年以上たった今でもこの光景を夢の中でも思い出すというのに、
私がこの授業で発表した「自分の人生を変えた物」が何だったか思い出せない。
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*KhamsaPavlin*