魔女とレヴィ 第2話 霜が降りる頃に
登場人物
第二話『霜の降りる頃に』
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冷たい朝。
夜のあいだに降りた霜が、ハーブの葉先で細く光っていた。
吐く息は白く、空気は張りつめているのに――百合夜の庭はどこか温かかった。
木製の作業台の上では、乾いた葉がさらさらと音を立てて砕けていく。
「よしえおばあちゃんの腰、また痛むって言ってたから……今日は少し強めにしておこうかしら。」
乳鉢を回す百合夜の手元を、レヴィが覗きこむように屈み込む。
「この薬草、前より香りが強いな。」
低い声に、百合夜は微笑んで頷いた。
「ねぇ、レヴィ……寒くないの? そんな服で。」
訝しげな顔で、レヴィは答える。
「精神体に寒さは関係ない。これは飾りだ。」
淡々とした声。けれど、その響きの奥に、ほんのわずか拗ねたような色が滲んでいた。
百合夜は肩をすくめる。
「そうかもだけど……ジャケットと薄いシャツなんて、見てるこっちが寒いわ。」
クローゼットを開け、ふと亡き夫のセーターを取り出した。
「これ、着てみたら? サイズは合うと思うの。」
レヴィはそれを見た瞬間、わずかに瞳を伏せた。
ほんの一瞬だけ、表情が揺れる。
ため息のような間をおいて――
彼の姿がふっと霞み、次の瞬間には白いケーブル編みのセーターに変わっていた。
「……だから、飾りだと言った。」
その声には、僅かに不服そうな響きがあった。
けれど、その頬の陰りは、どこか照れているようにも見える。
百合夜は目を瞬かせ、そして笑った。
「本当に、便利ね……でも、似合ってるわよ。」
レヴィは答えず、視線をそらす。
霜に光る庭を見つめながら、かすかに息を吐いた。
白い息が消えるころ――
――チャイムが鳴った。
澄んだ音が、朝の静けさを切り裂く。
レヴィの表情がすっと引き締まり、庭の風が一瞬だけ揺れた。
「……俺が出る。」
百合夜は小さく息を吸って、微笑んだ。
「きっと、よしえさんよ。午前中に取りに来るって言ってたもの。」
そう言い残し、玄関へと歩き出す。
レヴィはすっと身を翻し、低く呼びかけた。
「待て。俺が――」
けれど、百合夜は振り返らない。
足音だけが木の床を軽く叩き、朝の静けさの中へ吸い込まれていった。
木造の扉を「カラン」と開ける。
冷たい空気とともに、やわらかな光が流れ込んだ。
そこに立っていたのは――
滑らかな金髪に、澄んだブルーの瞳。
まるで冬の光をそのまま纏ったような青年だった。
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