2021年4月18日(日)『モーツァルト!』古川雄大FC貸切公演 @帝国劇場


終演後のトークショーの覚書です。


 「僕のファンクラブの貸切公演ということは、皆さんファンクラブに入っていらっしゃる。ということは皆さん僕のことが好きな方々なんですよね」とちょっとだけ自信がなさげな謎確認から始まるかわいさ。古川雄大として出るトークショーなのにモーツァルトの衣装を着ているというのは不思議な気持ちだとのこと。


 「拙い喋りですが、短い時間ですが、よろしくお願いいたします」と謙虚な古川さん。


 「いつもよりも拍手が大きくて泣きそうになりました。僕だけじゃなくどのシーンでも大きくて、それだけの熱量で皆さんが応援してくださっているのだと思うと本当に感謝しかありません」確かに今日の公演は特に「僕ミュ」の拍手大きくて、まさに割れんばかりというのはこういうのを指すんだなって思った。


 「『エリザベート』でルドルフを演っていた時には、考えられませんでした。先輩の井上芳雄さんや花總まりさんが貸切公演をしていらっしゃって、凄いな、いつかそんなふうになれたらいいなとは思っていましたが、自分がそれをできるとは、しかも『モーツァルト!』という作品で」と古川さん微笑む。


 大きな拍手のこと、帝劇貸切公演をできたことなど「ありがとうございます」を繰り返している自分に「さっきから感謝してばっかりですね。でも本当にそんな気持ちなんです」と突っ込みを入れつつ照れ笑いをする古川さんも素敵。本当にこんな大変な時ではあるけれど、主演をお務めの作品でFC貸切公演ができてよかった‼︎


 「いつもはこんな感じで喋っているんですけど(と姿勢を崩し右手を腰に当てて片足重心になる)、今日は帝国劇場仕様なので。いつも僕のライブとかに来てくださっている方々はあれと思うと思うんですけど、今日は帝国劇場仕様でいこうと思うので」としゃんと立って進める古川さん。


 「何を話すか書いてきたんですけど」と手元で開いた真っ赤なフォルダーの覗き込むが、「きったねえ字で読めない……」と笑う。一応台本はパソコンで打った感じで見えたけれど、そこに書き込んだのね。小さく書きすぎちゃったのかな。


 「僕自身3年ぶりに演じるということで、今回は余裕をもって演じようと思って、稽古でも『お、余裕あるな』って姿を見せようと思って、背もたれに背中をもたれさせて『おはようございます(軽く)』って感じでいたんですけど」だから色々な媒体で事前に取材を受けたときに余裕をぶっこいた発言をしていたらしい。珍しく強気な発言が多くて努力故だろうと思ってたけどそんな企みもあったのか笑

 「でも全員揃って最初の歌稽古の時だったかな、『じゃあ影を逃れてからやってみましょう』となっていきなり一番難しい歌来ちゃったじゃんって。で、声が全然出なくて、見事に打ち砕かれました。そもそもモーツァルトは余裕をもって演っていい役じゃないんですよ。だから本当何を考えてたのか」とちょっとだけ自嘲気味に振り返る古川さんもなんか大人になったなぁとかしみじみ。誰目線だよという感じだけど。

 「そこからはもうがむしゃらに、いっぱい怒られよう、泥臭くやっていこうとシフトチェンジして、でもそれがあったからこそ新しいモーツァルトを作れたんじゃないかと思います。今回もいっぱい怒られましたよ」と笑う。


 たくさん怒られもしたらしいですが、「演出の小池先生には『古川、お前、楽しそうだな』と56回言われました。それぐらいたくさん笑ってましたし喋ってましたし。あと、稽古場ではずっと育三郎さんと一緒にいたのですが『お前、いい先輩持ったな』とそれも56回言われましたね」と嬉しそうに語る。稽古場でも少しオープンな感じになれたのかな。


 「囲み取材の時にも、衣装が新しくなって(それが)『朝ドラのおかげで』とか言ってましたけど、皆さんもう分かっていらっしゃると思いますがそれは冗談なんですが、実は身体が大きなっちゃったというのがありまして」と筋トレのお話を始める。

 「全然知らなかったんですけどたまたま育三郎さんと筋トレブームの時期が被っていまして、稽古場でお会いした時に『あれ、雄大身体大きくなった?』と言われたんですが、ジャケットを脱いだ育三郎さんも腕が太くなっていて笑」

 「3年前は芳雄さんの衣装を着ていたんですけれど……僕、芳雄さんの衣装がぴったりなんですよね! 今まではそうやって先輩の衣装を着るというのがあったんですけど、今回は新しくしていただいて。お金をかけていただいて、古川雄大の衣装になりました」先輩の衣装を受け継ぐのも嬉しく、誉れ高いことだろうとも思うけれど、自分だけのための衣装はさぞ嬉しかったことだろうなぁ。


 特に歌の面でいっくんのお世話になったと語る古川さん。「たくさん教えていただいて、育三郎さんのテクニックを盗ませていただきました。Wキャストって色々あるじゃないですか笑 まあ、僕はそんなあれなんですけど笑 ライバルなので僕も『負けないぞ』という気持ちはあるんですが、育三郎さんは『共に頑張ろう!』という方で。惜しみなく教えてくださって。僕が質問攻めにしたんですけど、ここはどうやって歌ってるんですかとか、ここの音出てるじゃないですか、どう歌ってますかとか。普通ライバルですからそんな自分のテクニックを教えようとはならないではないですか、僕だったら絶対教えないです」と熱く語りつつ笑いを誘う古川さん。いっくん、本当に素敵な先輩だ……。 

 「育三郎さんのスペシャルレッスン30分みたいなこともやっていただいたことがあって。悩みを相談して最初に色々お話を聞いた後にじゃあ課題曲で実践してみようという感じで。誰も受けられないレッスンを(と言いながら客席を手で指す)、僕だけが受けられたんですよ!」と嬉しそう。そりゃ我々は受けられませんわwww 新しい役作りへの挑戦ができたことの背景には、いっくんに歌を教えてもらったことも大きな支えとなってあるんだろうなぁ。


 芳雄さんといえばということで、「ちょっと横道に逸れていいですか?」と確認を取り「ある番組に芳雄さんが出演された時に、少し映像で出演させていただいたのですが、その時に色々お話しさせていただいて、完璧な人なので、僕の望みとしては、少しダラダラしているところを見せてほしいとお願いしたんですね。そうしたら、その収録があった後すぐに知らないアドレスからメール(メッセージと言いたかったのかな?)が来まして。『井上芳雄です』と。あ、僕LINE知らなかったんですよね笑 『あのインタビューのおかげで凄く助けられましたこともありがとう。またご飯でも行きましょう。井上芳雄』とあって。ダラダラしているところを見せて欲しかったのに、後の処理まで完璧で、ああ本当に完璧な人なんだなと思って。……まあ今度たくさんお酒を飲んでいただいて、ダメなところを見せてほしいと思ってるんですけど」


 「稽古を進める中で、これは初演の時やりましたよねとなった時があって、僕は初演を見ていないので分からないのですが、それで採用されたものもあれば、じゃあ変えようかとなったものもあるんですが、そうやって初演でまず完璧に作り上げたものがあるからこそ、それを崩してまた形になって新しいものができるんだなと思いました」

 それに加えて「囲み取材の時にも『市村さんの進化が止まらない』ということを話題にしたんですけれど、僕は進化を成長と言い間違えてしまってまだそれをご本人に謝れていないのですが、市村さんクラスの方でもそうやって進化を続けていらっしゃることに驚きました。そういうのを見て、自分はとんでもない世界に入ってしまったんだな、とんでもない職業に就いているんだなとこれまでも思ってはいたんですけれど、改めて思いました。到達点が見えないですけれど、到達することを目指してこれからも日々頑張っていこうと思いました」


 そして今回は歌を歌として歌い上げないことを意識したとのことで、「歌わない、すべて喋るということを心掛けました」と言っていて、もちろん2018年の時とと比べて歌唱力が格段に伸びた印象があるんだけれど、伸び伸びと自由の解放されたニュアンスを感じさせるのは、この意識があるからだなと確信しました。


 古川雄大という役者はこれまでも、今の実力や今の表現に飽き足らずに毎公演進化を重ねている人ですが、改めてそれを忘れちゃいけない世界、それを多くの人が頑張っている世界に身を投じていることに気づいたと語るので、これからのさらなる進化と深化がより一層楽しみになりました。


 こちらこそ素敵な時間をありがとうございます、古川さん。これからも舞台で活躍するお姿を応援し続けたいと思いました。輪をかけて古川雄大さんを好きになる、そんな、初めてのFC貸切公演でした‼︎