今年も入試の季節がやってきました。

受験生やご家族は落ち着かない日々を過ごされているかもしれませんね。

私は医師を志して現在地方大学の医学部に通っていますが、医学部入試を6年連続で受験してようやく合格しました。つまり5年連続でどこにも入れなかったわけです。

今日はそんな私の大学受験エピソードが何かのお役に立てればと思い共有します。

 

 

  とにかく焦って背伸びした高校時代

もともと勉強は得意な方ではなく、小学2年生のときに九九を覚えるテストではクラスの最後の方まで残って何度もテストを受けるような有様でした。

中学生時代に母親の病気をきっかけに医師を志しましたが、思っているだけでは勉強ができるようになるはずもなく、お世辞にも医学部を目指せるようなレベルではありませんでした。成績を見た誰もが医学部を目指せるような状態ではないと思ったことでしょう。

結局入れた高校は偏差値でいうと中の上ぐらいでした。高校には指導熱心な先生がたくさんいらっしゃいましたが、大学に進学する多くの学生は私立大学を選ぶような環境で、周りに医学部を目指す人は誰もいませんでした。

周りと同じことをしてはいけないと思い、高校1年生のときに8年間続けた野球を辞めて2つの塾を掛け持ちで通わせてもらうことにしました。その当時は睡眠時間を削ってとにかく机に向かいました。

しかし私は致命的な問題を抱えていました。

ただ「勉強をしている風」で実際には何も頭に残っていなかったのです。

当時の私を思い返すと

 

・手当たり次第にいろいろな問題を解いて一切復習をしない

・睡眠時間を削ることで昼に眠くなって集中できない

・自分のレベルに合った問題を解いていないから何も頭に残らない

・授業を受けるだけで全く復習をせずにできた気になっている

 

理想は高いが全く成績が振るわない→根性論で何とかしようとする→結局頭に何も残らない

といった負のスパイラルに陥っていました。

地に足がつかないまま受験した高校3年生のセンター試験では、医学部には最低でも85%の得点率が必要と言われた時代に60%を切るような結果でした。

医学部には出願しましたが当然足切り(センター試験の結果次第で2次試験を受けるまでもなく不合格となってしまうこと)で、すぐに予備校での浪人生活がスタートしました。

 

  とにかく辛かった浪人時代

浪人時代の私は朝7時の電車で予備校へ行き、夕方まで講義をみっちり受けてから夜は21時まで自習室で自習、その後は家の近くの漫画喫茶で日付が変わるまで机に向かっていました。

そんなに勉強すればさぞ成績が上がったのだろうと想像してもらえるかもしれません。

察しのいい方は私が「勉強した」のではなく「机に向かった」と書いていることでピンときたかもしれません。そうです私は机に向かって勉強しているつもりなだけで、やはり「勉強してる風」だったのです。

予備校の先生やチューターの方の助言で復習に力を入れ始めましたが高校時代からの習慣は抜けきらず、時間と量は確保しても成績は全く届かないままという私にとって困難な日々になってしまいました。

1浪目に受けたセンター試験は60%を少し超えたぐらい。2浪目でも70%程度で医学部には依然及ばず、不本意ながら他の理系学部への進学を決心しました。

 

  大学で見え始めた希望

大学に入っても医師になりたいという気持ちは収まらず、ますます医学部へ入りたいと思うようになった私は大学で単位を取りつつ医学部受験を継続するという手段に出ました。

大学で新たな環境に入って友達ができたことで心に余裕が生まれました。ボランティアに参加したり遊びに出かけることもあり、それまでのがむしゃらに頑張れば報われるという考え方に変化が生まれました。適度に休憩することで頭がスッキリして生産性が向上することを学びました。そして客観的にそれまでの自分を振り返り、ついに自分の過ちに気づき始めました。具体的にはそれまでの根性論に別れを告げ

 

・自分のレベルに合った問題を解く

・復習を第一に考えて、特に理系科目は理解して解けるようになるまで何度も同じ問題を解く

・睡眠時間を最低7時間は確保して、適度に休憩をする

 

ようにしました。

大学1年生の時に受けたセンター試験では70%を少し上回る点数でしたが、少しずつできないことができるようになってきた感覚があり、これならやれるかもしれないと思い大学2年生が始まりました。

地方大学に通っていた私は模試を家の近くで受けることができず、休日には始発の電車に乗って隣県に模試を受けに行くこともしばしばありました。

希望を失わずに受験勉強を続けたことで少しづつ、少しづつ成績が上がり、大学2年生のセンター試験ではついに80%程度になりました。この年も医学部に合格することは叶いませんでしたが、雲の上の存在だった医学部が目の前に見えるような感覚がありました。

 

  ついにそのときは来た

しかしながらこんなに時間と労力をかけても合格できなかったという現実は変わりません。このときで受験回数は通算で5回に達していました。できることはやり切ったという気持ちもあり、このとき初めて夢を諦めることを真剣に考えました。しかしこのことを母親に伝えると、納得のいく選択をしなさいと5回も失敗を重ねた私の背中を押してくれました。

受験生活を通して両親、祖母、高校三年生の時の担任の先生など、何度失敗しても応援してくれる人がいました。応援してくれる人がいなければ間違いなく私の心は折れていました。あの時の人の心の温かさには今でも感謝しています。応援してくれる人達のためにも最後まで頑張ろうと奮起し、6回目の受験生生活に突入したのでした。

この年から塾でアルバイトを始め、人に教えることを経験しました。不思議なことに人のために説明しているはずが自分の中での理解力が深まり、結果として私の成績が向上しました。同じ年の夏にはこの年で勝負を決める覚悟を決め、大学を休学して地元の予備校に再び通う決断をしました。

この時も両親は私を信じて予備校に通わせてくれました。

高校卒業後2年間の浪人生活では、まじめに全ての授業に出席していましたが、2回目の予備校生活では自分に必要な授業を見極め、そのほかの時間は自習室で問題を解くことにしました。

(予備校の授業を受けないことを勧めているわけではありません💦)

受験生活が受け身な姿勢だった私に主体性を持った行動が大切だと教えてくれたのは間違いありません。

 

そして迎えた6回目のセンター試験。泣いても笑ってもこれで最後にすると決めていました。

現在は共通テストになり変更されているかもしれませんが、当時のセンター試験は1日目は文系科目、2日目は理系科目で2日間で5教科7科目を受ける日程でした。

1日目はまずまずの手ごたえで終了しましたが、2日目の数学Ⅱと化学で明らかにできなかった感覚がありました。

運命の答え合わせのとき。今でもその時の緊張を鮮明に覚えています。

やはり数学と化学は80%にも満たない得点率でした。しかしここで神様の微笑みとしか言いようのない状況が生まれます。模試でもせいぜい200点中180点が限界であった国語で、198点という点数を本番で初めて記録しました。この国語のおかげで数学と化学の失点を何とかカバーし、全体の得点率は87%になりました。

6回目のセンター試験にして初めて勝負できる点数を取ることができた私でしたが、これで終わりではありません。まだ2次試験という大きな壁が待っています。2次試験は大学によって得点の配分や試験科目が異なります。予備校の担任さんとも相談し、なるべく得意な文系科目の得点配分が大きい大学を探して受験することにしました。

センター試験が終わってから2次試験まで約1か月、ひたすらに過去問を解きました。

あっという間に試験日となり迎えた本番。合格が目の前にある初めての状況に緊張するかと思いましたが、意外にも落ち着いて問題に取り組むことができました。

運命の合格発表の日、ついに5回辛酸を舐めた私の受験番号がスマホの画面上に現れました。

初めて受けたセンター試験で60%にも満たなかった私がついに医学部に合格した瞬間でした。

高校時代までの友人は青春を謳歌し、就職して家庭を持っている人もいる中、全てを受験に捧げた6年間の受験生活は遂に終わりを迎えました。

合格した喜びは言うまでもありませんが、一番うれしかったのは応援してくれた人が喜んでくれた瞬間でした。自分がしてきたことで心から喜んでくれる人を見て、何にも変え難い幸せな気持ちになりました。

 

  受験生の方へ

もし読んでくださっている人がこれから受験を受けるのであれば、今までの日々を信じてください。力を発揮できるように祈っています。そして支えてくれる周りの人に感謝してください。それが自分の力に変わります。

来年の受験に向けて勉強を始めている方は、希望を失わない限り前進することができると安心してください。

しかし私のように受験を長期間続けるにはかなり大きな代償が伴います。

次の受験で目標を達成できるように、私の経験からたどり着いた勉強論を最後にお伝えします。

 

・今の学力レベルに合った問題を繰り返し解いて、理解してできるようになるまでやり込む

(3~4割ぐらいは初めから解ける問題で、残りは答えを見ないと分からないぐらいの問題集を使うことをおすすめします)

・授業を受けたらそれ以上の復習時間を取る。そして自分の頭で考えて問題を解く時間を重視する

・人から言われたことをそのまま信じて受け身になるのではなく、自分なりにかみ砕いて理解し主体的に勉強計画を立てる

・あえて休憩する時間を作る。特に睡眠時間は削らない

☆どんな状況でも希望を失わない

 

あなたに笑顔の春が訪れることを願います。

ここまで読んでいただきありがとうございました!