【独偏ベストテン 42-2】 中山美穂のシングル作品 (1~5位) | 歌謡曲(J-POP)のススメ

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音楽といっても数々あれど、歌謡曲ほど誰もが楽しめるジャンルは恐らく他にありません。このブログでは主に、歌謡曲最盛期と言われる70~80年代の作品紹介を通じて、その楽しさ・素晴らしさを少しでも伝えられればと思っています。リアルタイムで知らない若い世代の方もぜひ!

 

 前回記事に引き続いて、今回も中山美穂のシングル(A面)を対象とした「独断と偏見によるベストテン」をお送りします。さっそく上位5曲の発表にいってみましょう・・・と、その前に、中山美穂の初々しいデビュー曲「C」のレコードジャケットをアップしておきますね。前回記事で、「最初に用意したジャケットに落丁があって、急いで新しいのを刷り直してリリースにこぎ着けた」と書きましたが、このジャケットはもちろん刷り直した後のパターンです。これが最初のジャケットでは、タイトル「C」の下にあるTBSテレビドラマ「初体験物語」主題歌という部分が丸ごと無かったんですよね。落丁というほどの大袈裟な話ではないにしても、これがあるのとないのとじゃ宣伝効果は雲泥の差ですから、慌てて差し替えたのも当然のことだったと思います。

 

 


 それではお待たせしました。5位から1位まで、一気にどうぞ~


第5位 遠い街のどこかで… 【オススメ度★★★】
作詞:渡辺美佳、作曲:中崎英也、編曲:中崎英也
[1991.11.1発売; オリコン最高位3位; 売り上げ枚数67.3万枚]


 独偏ベストテンの第5位に入ったのは、23作目のシングルにして、月9ドラマ「逢いたい時にあなたはいない…」の主題歌「遠い街のどこかで…」でした~この作品、詞の方は全体的にごく平凡な内容なのですが、ラストの ♪ たとえ離れてても 同じ星を見てる 遠い街のどこかで~ の部分は、日頃私達がつい忘れがちな事実をさりげなく提示してくれたりなんかして、なかなか気の利いたフレーズではないですか

 一方、曲の方はかなりしたたかに計算された産物だと思います。曲を手掛けた中崎英也センセは、’80年代中盤から、爆風スランプや女性アイドルを中心に良質な歌謡ポップスを精力的に提供していたコンポーザーなのですが、この作品ではおそらく「ドラマ主題歌かつクリスマスソングに相応しい曲を作ってくれ」という、なかなか難儀なオーダを受けたようなフシ・・・というのも、この曲からは他の中崎作品から感じられる“らしさ”が全くと言っていいほど感じられない(つまり極めて匿名作家性が高い)のです。果たしてこの作品は11月1日という絶妙のタイミングでリリースされ、クリスマスの頃には頻繁に巷に流れるという相乗効果で、中山美穂としては上から3番目の売り上げ枚数を誇る大ヒット作となったのでした・・・。ちょっと持って回った書き方をしてしまいましたが、中崎英也センセの“職業作曲家の鑑(かがみ)”ぶりを如実に表すエピソードなのではないでしょうか。
 


第4位 50/50 (フィフティ・フィフティ) 【オススメ度★★★】
作詞:田口俊、作曲:小室哲哉、編曲:船山基紀
[1987.7.7発売; オリコン最高位2位; 売り上げ枚数21.1万枚]


 独偏ベストテン第4位は、10作目のシングル「50/50(フィフティ・フィフティ」でした~小室哲哉は中山美穂にシングルA面を2作提供しているのですが、結局「JINGI・…」が6位、「50/50」が4位といずれも上位に入ったってことは、やっぱり私は小室サウンドが好きなんだなぁ・・・と改めて感じますねぇ。この作品で特筆すべきは、「JINGI・…」にも増して小室節が炸裂したオリジナリティ溢れるメロディと、いかにもラテンチックな雰囲気を醸し出している涼しげなアレンジですね

 曲の方は、リズム主導頭サビメジャーコードとマイナーコードが交互に登場・・・などなど、1994年に篠原涼子が歌って202.1万枚()を売り上げた「愛しさと切なさと心強さと」と非常に似かよった構成になっているのですが、個人的には、メロディに無駄な部分がなくてオリジナリティ度数の高い「50/50」の方がはるかに出来がいいなと思っとります(だけど、売り上げ枚数は10倍も違うってんだから分からんもんだ・・・)。

 アレンジを手掛けたのはまたしても小室哲哉本人ではなく、今回は船山基紀センセです(小室哲哉が他人への提供作品でアレンジも自ら担当するのは1989年あたりから)。船山センセによるアレンジは、小室のテクノサウンドに、カリビアンテイストを持ち込んで成功しているのが何とも斬新でお見事 スチールドラムの響きが、ちゃんと歌詞に登場する“カリプソ”っぽく聴こえるのも、おそらく船山センセによるさりげない“仕込み”なんでしょうね



第3位 ただ泣きたくなるの 【オススメ度★★★★】
作詞:国分友里恵、中山美穂、作曲:岩本正樹、編曲:岩本正樹
[1994.2.9発売; オリコン最高位1位; 売り上げ枚数104.8万枚]


 独偏ベストテンの上位3曲の一角に食いこんだのは、中山美穂28作目のシングルにして、ソロ歌手としては初めてのミリオンセラーとなった「ただ泣きたくなるの」でした~。ここでわざわざ「ソロ歌手としては」と書いたのは、皆さんもご存知の通り、この曲の1年半前に「中山美穂&WANDS」名義でリリースされた「世界中の誰よりきっと」が183.3万枚の特大ヒットを記録しているからですね。ちなみにこの曲、オリコン史上100作目のミリオンセラーシングルという、輝かしい記録を打ち立てた作品でもあります

 前回記事でも少し触れたように、この曲のヒットした’90年代前半というのは、「ザ・ベストテン」や「夜のヒットスタジオ」といったテレビの歌番組が次々に終了となり、歌手にとってはまさに“受難”の時代でした。音楽番組を活動拠点にしていたアイドル歌手が表舞台から消え去る中、中山美穂だけは主演ドラマの主題歌を自ら歌うという新たな手法によって、“CDバブル”と“ドラマバブル”にうまく乗ってヒット曲を連発 当時から音楽ファンの間では、彼女のこうした“転向”に対して否定的な意見が多かったように思うのですが、私としては、彼女にはポップス歌手として歌メインの活動を続けてほしい気持ちがある反面、その時々の時代の流れに臨機応変に乗る“柔軟さ”も確かに大切だよなぁ・・・なーんて感じていました。つまるところ私は、真っ当な作品を出してくれさえすればどんな形でも構わないわけで(←実にイイカゲン)。そんなこんなで、この「ただ泣きたくなるの・・・」に関しても、割と素直な気持ちで受け入れることができましたね

 この曲が今回、独偏ベストテンの上位にランクインした理由としてはやはり、優しく切ないメロディと、そのイメージにぴったり合致した「けなげ」な歌詞にあることを、私はここに正直に認めなくてはなりません。中山美穂みたいな“高嶺の花”の美女から、
♪ ただ泣きたくなるの 好きだから 好きだけど いつも胸が
  恋より温かい ぬくもりをあげたい 忙しいあなたへ

とか、
♪ 私に生まれたこと 感謝できれば
  あなたはいつだって 抱きしめてくれるのね

なーんていうフレーズをしっとりと歌い掛けられて嫌な気分になる男は、おそらくほとんどいないと思いますから・・・
。ただ、歌詞に描かれた女性像がいささか古くさくて、ともすると単に男性側にとって都合のいい女性像に見えてしまうことも事実で、この作品のリリース当時、「この曲に登場するような女は敵だ」と、激しい嫌悪感を持った女性も少なからずいたようです。ま、男と女の間のミゾというのは、かくも深いものだということでしょうか・・・



第2位 クローズ・アップ 【オススメ度★★★★】
作詞:松本隆、作曲:財津和夫、編曲:大村雅朗
[1986.5.16発売; オリコン最高位4位; 売り上げ枚数12.8万枚]


 第2位に入ったのは、5作目シングル「クローズ・アップ」でした~。わーパチパチパチ この「クローズ・アップ」、全体的に派手な仕掛けの作品が多い彼女のシングル作品群の中にあって(そう言えば文字通り「派手!!!」という“そのまんま”のタイトルの曲もありましたね)、まさに「隠れた名作」という呼び名がふさわしい曲だと断言してしまいましょう(どうせ独偏ですから)。まぁ、松田聖子のシングル「白いパラソル」、「野ばらのエチュード」でもおなじみの松本-財津-大村という巨匠コンビの作品ってことで、ほとんど駄作になりようがないんですケドね・・・。とにかく、詞・曲・アレンジが見事に調和して非凡な作品に仕上がっているのに、“大ヒット曲狙い”のスケベ心みたいなものが微塵も感じられない“余裕のスタンス”がニクいんですよね~

 まず歌詞の方は、4作目シングル「色・ホワイトブレンド」の世界を踏襲して、少しだけオトナっぽい内容になってます。いわゆる“お宝ショット”狙いのカメラ小僧を軽く叱責しつつも、そんな彼らをしっかり挑発するところが、いかにも当時の中山美穂っぽくてgood ♪ 髪のしずくが色っぽいでしょ とか、♪ もう少しおとなしいビキニにすれば良かった とか、♪ 過激なポーズしてあげる とか、中山美穂に言われたらちょっと嬉しい“健全なお色気フレーズ”がてんこ盛り。さすが、松本隆センセ。聴き手のニーズが良く分かってらっしゃるってな感じですよネ

 財津和夫センセから女性アイドルへの提供曲と言えば、「秘密のオルゴール」(川田あつ子)「心の扉」(芳本美代子)「ハロー・レディ」(島田奈美)「レタスの恋愛レポート」(佐野量子)・・・のように、圧倒的にほのぼのとカワいい感じの作風が多いのですが、この「クローズ・アップ」は、ミポリンのイメージを考慮してか、かなりリズムを重視した作風になっているのがひとひねりしてあって面白いところです。Aメロ冒頭のリズムブレイク(♪Stop!とか、♪ You!の部分)などは中山美穂に歌わせるから“しっくり”くるのであって、もし歌うのが上記4人のアイドル(川田、芳本、島田、佐野)だったら、きっと違和感ありまくりだったことでしょう

 大村雅朗センセによるベースラインを強調したタイトなアレンジは非常にシンプルなのですが、そんな中にあって、サビの部分♪存在感キラキラでしょ 人気を独り占め~で響いてくる耳に心地良い滑らかなブラスの音色が非常に効果的なアクセントになっているのが何とも見事です



第1位 CATCH ME 【オススメ度★★★★】
作詞:角松敏生、作曲:角松敏生、編曲:角松敏生
[1987.10.7発売; オリコン最高位1位; 売り上げ枚数21.8万枚]


 中山美穂のシングルA面 独偏ベストテンで、栄えある()第1位に輝いたのは、11作目の「CATCH ME」でした~ この作品はですねぇ、全然メロディアスではなく、曲の展開も単調なのに、リズム重視のファンキーな打ち込みサウンドに乗った途端にものすごくカッコ良くなっちゃうんですよね~、これが音的には筒美京平センセによる「ツイてるね ノッてるね」や「WAKU WAKUさせて」にかなり近いはずなのに、あちらは“歌謡曲”で、「CATCH ME」はほとんど“歌謡曲っぽくない(あえて言えばユーロビート歌謡か)”という点も、非常に面白いところ

 歌詞の方は、ちょっと難解かつカオスです。この作品の場合、歌詞のことは一切忘れて、作品全体に一貫して流れるグルーヴ感や、聴き手に媚びない独特の孤高っぽい雰囲気などを味わうのが正しい鑑賞法なのではないかと、個人的には思っておりやす

 ちなみに、角松敏生センセが中山美穂に提供したシングルとしては、もう一つ、ミポリンファンの間で非常に人気の高いバラード作品「You’re My Only Shinin’ Star」がありますが、「CATCH ME」を聴いた後だとどうしても俗っぽくあざとく聴こえてしまって個人的にはイマイチパスというのが正直な感想ですねぇ・・・



 さて、独偏ベストテンのランキングの発表は以上です。毎度のことながら長い記事をここまでお読み下さった皆さん、本当にどうもありがとうございましたm(_ _ )m。次回の記事は 【独偏ベストテン Vol.42-3】 中山美穂のシングル作品 (資料編) と題して、基礎データ資料を紹介しますので、引き続きお付き合い下さいね~。おしまいに、今回の結果を上位から順にまとめてご紹介しておきます。それでは、またお逢いしましょう~


【wishy-washyの独偏ベストテン 中山美穂のシングルA面】
第1位 CATCH ME 【オススメ度★★★★】
第2位 クローズ・アップ 【オススメ度★★★★】
第3位 ただ泣きたくなるの 【オススメ度★★★★】
第4位 50/50 (フィフティ・フィフティ) 【オススメ度★★★】
第5位 遠い街のどこかで… 【オススメ度★★★】
第6位 JINGI・愛してもらいます 【オススメ度★★★】
第7位 あなたになら… 【オススメ度★★★】
第8位 ツイてるね ノッてるね 【オススメ度★★★】
第9位 色・ホワイトブレンド 【オススメ度★★★】
第10位 幸せになるために 【オススメ度★★★】
次点 「C」 【オススメ度★★★】