【独偏ベストテン38-2】 渡辺美奈代のシングル作品 (1~5位) | 歌謡曲(J-POP)のススメ

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音楽といっても数々あれど、歌謡曲ほど誰もが楽しめるジャンルは恐らく他にありません。このブログでは主に、歌謡曲最盛期と言われる70~80年代の作品紹介を通じて、その楽しさ・素晴らしさを少しでも伝えられればと思っています。リアルタイムで知らない若い世代の方もぜひ!

 長らくお待たせ致しました渡辺美奈代のシングル作品を対象とした「独断と偏見によるベストテン」の上位5曲の発表で~す。今回も一気にいってみましょうか。それではさっそくどうぞ~(




第5位 ガールズ・オン・ザ・ルーフ 【オススメ度★★★】

作詞:遠藤京子、作曲:遠藤京子、編曲:中村哲
[1987.11.18発売; オリコン最高位2位; 売り上げ枚数8.8万枚]

 第5位にランクインしたのは、おニャン子クラブの解散を機に秋元-後藤コンビの手から離れて独り立ちする正念場に立たされた時期にリリースされた6作目の「ガールズ・オン・ザ・ルーフ」でした~。作詞作曲を手掛けたのは、'80年代後半~'90年代前半に、長山洋子酒井法子吉田真里子中島美智代小川範子などの女性アイドルにシングルを提供していたシンガーソングライターの遠藤京子です

 この曲に関しては、わりと発売当初から、「夢見るシャンソン人形」(フランス・ギャル)のパクリじゃないかと指摘されていたことを思い出しますね・・・。まぁ確かに、♪ 天使が集う 秘密の場所は 君んちの屋根さ~ あたりのコード進行なんかはそっくりそのまんまですが、それ以外の部分はまったく別物だと思うし、そもそも元歌が大好きなもんで、私はぜんぜん気になりません

 “星降る夜に、パパやママに内緒でみんなで屋根に集まって、悩みや将来のことを語り明かそうよ・・・”といった趣旨の歌詞が、メルヘンチックでとっても可愛いですよね
10代のアイドル歌手がイメチェンを狙って歌うにはなかなか手堅い仕事ではないかと思わず感心させられてしまうのです



第4位 恋愛(ロマンス)紅一点 【オススメ度★★★★】

作詞:松井五郎、作曲:井上ヨシマサ、編曲:井上ヨシマサ
[1989.11.22発売; オリコン最高位34位; 売り上げ枚数1.4万枚]

 第4位に入ったのは、13作目のシングル「恋愛(ロマンス)紅一点」でした~。実はこの作品、もう1年以上も前の記事なのでお忘れかと思いますが、「井上ヨシマサ 作曲シングルベストテン」でも上位(第2位)にランクインしています。・・・そう、秋元-後藤コンビ、鈴木慶一、いずれの系譜にも属さない作品なんですよね。

 はっきり言ってほとんど売れなかった
ですし、ハデハデな楽曲揃いの美奈代のシングルの中ではイマイチ地味な作品なのですが、ゆっくりと展開していくコード変化が何ともいえない調和美を生み出していて、一度ハマったら思わず何度も聴きたくなってしまう・・・私にとってはそんな魅惑の逸品なのです。もっともマニア筋の間では、井上クンが渡辺美奈代に提供した3曲のシングルの中では「ピチカート・プリンセス」がダントツ人気のようですが(私にとっては何だか気の抜けたサイダーみたいで中途半端・・・どうもピンと来ないんですよね)。ま、それも好みの違いってことで



第3位 TOO ADULT 【オススメ度★★★★】

作詞:秋元康、作曲:後藤次利、編曲:後藤次利
[1987.1.15発売; オリコン最高位1位; 売り上げ枚数15.1万枚]

 ベスト3の一角を占めたのは、3作目シングルの「TOO ADULT」でした~アイドルのデビュー曲としてこの上なく正統的だった「瞳に約束」、世の諸兄の“保護欲求(「守ってあげたい」ってヤツですね)”を巧みにくすぐった2作目「雪の帰り道」に続いて、秋元-後藤コンビが挑んだテーマは、“アイドルによるエロ追究の限界の模索でありました。・・・あ、そこの人笑ってるな いやホントにネ、この曲はある意味、「正統派アイドルが、そのイメージを崩さずにどこまでエロを表現できるか・・・という問い(なんちゅう問いじゃ)に対する正答(の一つ)と言っていいんじゃないかと思うんです

 冒頭の ♪ Non Non Non Non
、サビ直前の ♪ Chu Chu Chu Chu で正統派アイドルのキュートなところをドカンと炸裂させたと思ったら、それ以外は聴いてるこっちも思わず赤面モノのちょっと際どいシチュエーションの描写が延々と・・・そんな歌詞を、現役バリバリのアイドルが無邪気にパンツ見せまくり(えっと、正確にはアンダースコートですね)で歌うという、サービス過剰気味の演出が何とも嬉しかった記憶が鮮明に甦ってきます(これで悶絶した男子が日本中に続出したのでは・・・。もちろん、本人はそういう企画意図をすべて理解してやっていたフシがありますから、彼女は根っから自己アピールの上手なアイドルだったってことでしょうね

 歌詞に登場する「B’(ビーダッシュ)」からは、その頃大ヒットしていた“ファミコン”のゲーム「スーパーマリオ」のボタン操作を連想しがちですが、それは秋元康大明神による言葉のまやかしなので注意が必要です(ほんまかいな
。下に示す歌詞の文脈から分かるように、このBはすでに死語と化した“アレ”を指していて、そこまでは達しない微妙な状況をダッシュ(’)を付けて表現しているというわけ

 ♪ たった二人で部屋にいるのは 少し気まずい雰囲気ね
   (中略)
 ♪ アダルトしたくて アダルトできない
   B’(ビーダッシュ)B’ (ビーダッシュ) 微妙な年頃
   アダルトしたくて アダルトできない
   B’ (ビーダッシュ)B’ (ビーダッシュ)
   大人になれるまで お楽しみはまだ!




第2位 ちょっと Fallin' Love 【オススメ度★★★★】
作詞:文園千津子、作曲:鈴木慶一、渚十吾、編曲:鈴木慶一
[1988.5.18発売; オリコン最高位6位; 売り上げ枚数5.6万枚]

 第2位には、シングル8作目にして鈴木慶一ワールド第一弾シングルの「ちょっと Fallin’ Love」が入りました~。作詞の文園千津子は、第9位と第6位に登場した滋田美佳世、第8位に登場した覚和歌子と共に鈴木慶一ファミリーの一人ですが、渡辺美奈代関連の仕事以外ではとんと名前を見ません。 ♪ 女の子の真ん中 ズキッと走る衝撃は~ という歌詞にエッチな感じの連想をかき立てられて思わずドキッとしてしまった(←考えすぎ)私としてはちょっと淋しいですねぇ。一体どこ行っちゃったんでしょうか・・・。

 この作品では、鈴木慶一センセが、美奈代のキュートなキャラを心ゆくまで玩(もてあそ)んでる様子が伝わってくるのがとにかく笑えるところです。何たって、サウンドだけじゃなくコーラスまで’60年代オールディーズ風に仕上げちゃうんだから徹底してますよ。堀ちえみの超名作アルバム『プラムクリーク』で、まったく同じように“ちえみを遊び倒した”白井良明センセもそうでしたが、ムーンライダースの連中はこういうパラノイア的な仕事をさせると超一流の成果を出してくれるから大好きなんですよね~



第1位 瞳に約束 【オススメ度★★★★★】
作詞:秋元康、作曲:後藤次利、編曲:後藤次利
[1986.7.16発売; オリコン最高位1位; 売り上げ枚数20.2万枚]

 「渡辺美奈代 シングル独偏ベストテン」の栄えある()第1位は、デビューシングルの「瞳に約束」でした~。わー、パチパチパチ う~む、この曲は、アイドルに輝きを与える要素がてんこ盛りで、特に彼女のファンという訳でもない(そして、どちらかと言うと秋元-後藤コンビの作品はあまり評価していない)私に言わせても、’80年代屈指の“正統派女性アイドルポップス”の名作と言えるのではないでしょうか

 まず何と言っても、後藤次利の手によるメロディが、最初から最後までアイドルポップスとして完璧なんですよね。中でも、サビ前 ♪ もしもこのままずっと夢の中に いられたら幸せすぎて泣いちゃうかも メロディラインの甘酸っぱさと切なさといったらどうだい(どうだいって言われてもねぇ)。歌詞の方でも、秋元大明神が思わずこちらまで糖尿病を患ってしまいそうな“大甘ワールドを、あの顔で恥ずかしげもなく繰り広げてます(←単なる悪口やん)。まぁ、二人の秘密の始まり(=初めてのキス)を、“事件”というフレーズで表現したのはなかなか上手いなと思いますが・・・。そして美奈代の方も、甘ったるくて心許ないブリッコ歌唱で的確に企画意図に応えて、息の合ったところを披露。ここに見事に、“正統派アイドル”のプロトタイプが結実したわけです。そうした意味で、等身大の彼女がそのまま体現されている「PINKのCHAO」とは、まさに好対照の作品だと言えるでしょう

 さらにさらに、オブリガードを担当するシンセの何とも表現しがたい甘~い響きも特筆すべきポイントですし、イントロやブレイクで大活躍するエレキ・ギターとハーモニカの懐かしい音色も聴き逃せないところでしょうハーフトーンを実に効果的に使った次利サンのアレンジは、単なる“アイドル好きのお兄ちゃん”とはとても思えない上々の仕事ではありませんか。従って、ここに手放しで満点を差し上げま

 下のYouTubeはコンサートの一幕ですが、んもう泣いちゃってぐちゃぐちゃですね。歌は1分23秒くらいからどうぞ~
 



 ランキングの発表は以上で~す。皆さん
のお気に入りの作品はランクインしていたでしょうか・・・ 改めて今回の独偏ベストテンの結果を眺めてみると、図らずも渡辺美奈代がアイドルだった時代とミュージシャンのオモチャになった時代の作品がほぼ均等にランクインするという結果となりました。最初にアイドルとして順風満帆に売り出した歌手が途中でイメチェンするというのは一種の“賭け”のようなもの。渡辺美奈代の“歌手後半戦”について言えば、セールス的にはまずまずの(あるいはやや物足りない・・・)結果に終わりましたが、歌謡曲マニアにとっては垂涎の足跡を残してくれた、稀有で貴重なアイドルさんだったように思います。この手の“いい仕事”は、ぜひぜひ後世まで継承して、その素晴らしさを分かち合いたいものですよね

 さて、毎度のことながら、ここまで長い記事をお読み下さった皆さん、本当にどうもありがとうございましたm(_ _ )m。次回の記事は 【独偏ベストテン Vol.38-3】 渡辺美奈代のシングル作品 (資料編) と題して、基礎データの資料などを紹介しますので、引き続きお付き合い下さいね
。おしまいに、今回の独偏ベストテンを上位から順に整理してご紹介しておきます。それでは、またお逢いしましょう


【wishy-washyの独偏ベストテン 渡辺美奈代シングル(A面)】
第1位 瞳に約束 【オススメ度★★★★★】
第2位 ちょっと Fallin’ Love 【オススメ度★★★★】
第3位 TOO ADULT 【オススメ度★★★★】
第4位 恋愛(ロマンス)紅一点 【オススメ度★★★★】
第5位 ガールズ・オン・ザ・ルーフ 【オススメ度★★★
第6位 抱いてあげる 【オススメ度★★★】
第7位 PINKのCHAO 【オススメ度★★★】
第8位 Winter, スプリング, Summer, フォール 【オススメ度★★★】
第9位 愛がなくちゃ、ネッ! 【オススメ度★★】
第10位 アマリリス 【オススメ度★★】