【お薦めシングルレビュー 22】 不幸にも評価されなかった典型的‘80年代ポップスの名作・・・! | 歌謡曲(J-POP)のススメ

歌謡曲(J-POP)のススメ

音楽といっても数々あれど、歌謡曲ほど誰もが楽しめるジャンルは恐らく他にありません。このブログでは主に、歌謡曲最盛期と言われる70~80年代の作品紹介を通じて、その楽しさ・素晴らしさを少しでも伝えられればと思っています。リアルタイムで知らない若い世代の方もぜひ!

 「パクリ」という言葉は、今でこそ「(ノウハウやアイデアを)オリジナルから拝借しちゃった」という意味でフツーに使われますよね。この言い回しを最初に使ったのは、かの近田春夫センセだというのが定説になっているようですが、まぁ、「ホントに近田センセが最初だったか?」ってのは、イマイチはっきりしないんですよね・・・。でも、ビートたけしのオールナイトニッポンで、たけしが「ザ・ぼんちの『恋のぼんちシート』(作曲:近田センセ)は、ある洋楽にそっくりだ」とツッコミを入れたら、近田センセが「実はダーツというグループの『ダディ・クール』をパクった・・・」と、あっさりゲロった、ってのはホントの話みたいです

 今さら私が書くのも何ですが、我が国の歌謡曲というのは、100%純然たるオリジナルであるなんてことはめったになくて、何かしら“下敷き(=お手本)”のような作品があるケースがほとんどです
。これを下手クソな料理人(コンポーザー)がやると、素人から「そのまんまやないけ」とツッコまれる程度のものしかできません。挙げ句の果てには、オリジナルの作者から「著作権の侵害だ」と訴えられるのが関の山でしょう。ところが、“料理人”の手腕が素晴らしければ話はまったく別オリジナル作品の良さはそのまま生かして、さらに何か新しい“解釈”や効果的な“仕掛け”を加えることで、オリジナルがさらにパワーアップした傑作(新たなオリジナル作品)が生まれることも多いのです。「換骨奪胎」と言っても良いでしょう。そして、我が国の誇る一流料理人の代表格が、筒美京平センセであり、また、馬飼野康二センセである・・・と、そんな風に私は考えています。ある作品が別の作品に多少似ているところがあったって、その「似方」をせいぜい楽しめば良いのではないでしょうか

 かつて、「ドロボー歌謡曲」(1987年出版)という“迷著”がありました
。タイトルの響きからも分かるように、「“オリジナル曲”と、類似した“パクリ曲”とを並べて、後者を糾弾する」という趣旨の本でしたが、その中で糾弾された“パクリ曲”の多くは、大してオリジナルと似てないんですよ・・・。まぁハッキリ言って、こっちが拍子抜けするような代物でありました。私なんかに言わせれば、「この程度の“似方”を問題にするんなら、もっとそっくりなケースなんて他に沢山あるのに、何でそっちを取り上げないんだ・・・?」という感じでしたね

 また「パクリ」と言えば、小林亜星センセと服部克久センセの間で裁判沙汰になった事件を思い出す方もおられるでしょう。これは、服部センセが作曲した「記念樹」という作品が、小林センセが作曲した「どこまでも行こう」に酷似している、という訴えでした
。結果的には、裁判で小林サイドの主張が認められています。裁判の結果に対して私がどうのこうの言う気はありませんが、私がこの両作品を聴いた率直な印象は、「わざわざ訴えを起こすほどは似てないなぁ・・・」というものでした

 長々と書いてしまいましたが、「歌謡曲におけるパクリ」に関する私の考えをまとめると、以下のようになります


(1) ある作品が、ちょっとどこかしら他の作品に似ているからといって、第三者が「パクリだ」と騒ぐのはナンセンスなのではないか
(ましてや、鬼の首を取ったように「盗作だー」と糾弾するなど論外)。盗作かどうかは、両作品の著作権所有者の間で処理すれば良いだけの話です。

(2) あからさまな剽窃を許す道理はない
のですが、“一流シェフ”が換骨奪胎によって生み出した“新たなオリジナル作品”を単なる“パクリ”としか見られないというのは、むしろ“想像力が貧困”なのではないか我々コンシューマーは、「せっかく面白いおもちゃが与えられたんだから、せいぜい遊び倒して楽しんでやろう」くらいの気持ちでいるのが良いのでは。

 私のブログでは、今後も「コンポーザーが違っているのに似ている作品」を取り上げることがあると思いますが、あくまでも「非難する
」のではなく「楽しむ」という基本スタンスでいきたいと思っています。読者の方々も頭の片隅に留め置いて戴けると幸いで~すm(_ _ )m

 ・・・さて、例によってすっかり前フリが長くなってしまいましたが、作品の紹介に移りましょう。今回取り上げる作品はコレ(
)です。


「Hello Hello」(LOOK)
作詞:鈴木徹、作曲:千沢仁、編曲:LOOK
[1985.11.21発売; オリコン最高位41位; 売り上げ枚数3.4万枚]
[歌手メジャー度★★★★; 作品メジャー度★★★; オススメ度★★★★]


 LOOK(ルック)は、もともと異なるバンドに所属していたメンバー4人(千沢仁、鈴木トオル、チープ広石、山本はるきち)によって、1985年に結成されたロックバンドです。ご存知の通り、デビューシングル「シャイニンオン 君が哀しい」は、重厚でダイナミックなメロディと、ヴォーカル鈴木トオルのハスキーでありながら高音の伸びる独特の歌声が巷の話題となって、オリコンで20万枚を超える大ヒットとなりました。しかし、'80年代メロディアスポップの典型のような2作目「Hello Hello」夢あふれる歌詞と明るい希望を感じさせてくれるノスタルジックなメロディが秀逸な3作目「少年の瞳」(12インチシングル)が、それぞれオリコン売り上げ枚数3.4万枚、1.7万枚と商業的に失敗に終わり、その後もヒット作に恵まれないまま1989年に解散してしまいます

 そうした経緯から、LOOKは世間的にはどうしても“一発屋
、あるいは、“バラードグループ”として見られがちなんですよね・・・。でも、彼らのアルバムを聴けば、「一発屋」というのはさておき、「バラードグループ」というのとは随分と印象が変わるはずです。つまり、バラードよりもむしろ今回取り上げる2ndシングル「Hello Hello」のような明るくてポップ度100%のパーティーソングの方が、LOOKの音楽的な本質に近いのではないかという気がするのです

 この「Hello Hello」は、ゴキゲンな極上メロディアスポップ
ということで、リリース当時、私は、「『シャイニンオン・・・』に引き続いてかなりのヒットになるだろうな」と期待していました。実際はそうならなかったことはすでに上に書いた通りなのですが、当時、この曲を巡ってちょっとした騒ぎがあったことを思い出しますこの「Hello Hello」が、ビリー・ジョエルのヒットシングル「Tell Her About It (あの娘にアタック)」(1983.7.30発売、オリコン最高位58位、売り上げ枚数4.6万枚)に似ている!これはパクリだ!という非難の声がどこからともなく出てきてしまったのですね・・・

 う~ん、そうかなぁ・・・
。確かにイントロのサウンド、アップテンポのリズム、曲全体のコンセプトはかなり似ているけれど、肝心のコード進行は違うし、個人的には目くじらを立てるレベルではないと思うんですけどねぇ・・・。しかし、かたや当時日本でも人気絶頂だった“ビリー”、かたやデビューしたての新人グループ“ルック”、ということになれば、世間がどちらの味方をするかは火を見るより明らかです。「Hello Hello」がリリースされたのが、「Tell Her About It」のたった2年後という、いかにも「後出しジャンケン」の形になってしまったこともLOOKにとっては致命的でした・・・(もっとも、このことが「Hello Hello」が売れなかった主原因だと断ずるつもりはないのですが)。

 一方で、鈴木トオルによる詞の方は、彼が言葉に込めた想いが実に良く伝わってきて、こちらも素晴らしい出来
だと思います

 ♪ きっとさよならするたびに 少しずつ君は変わってく
   悲しい恋をくり返し 涙さえいつか閉じ込めて
   夕闇包むこの街角で いくつもの夢が消え失せても
   あの頃の輝いてた瞳を 君だけは失くさないでいて

 ♪ Hello Hello もう一度 Fall in love
   誰かが君のこと こんなに愛してるよ
   Hello Hello もう一度 Fall in love
   誰にも君のこと 邪魔させたりしないさ


 恋に破れて気分が落ち込んでいるアナタ
、希望に満ちた明日を迎えるために、この曲を聴いて元気を取り戻してみませんか・・・

 最後にYouTubeですが、「Hello Hello」と、聞き比べのためにビリー・ジョエルの「Tell Her About It (あの娘にアタック)」の2つをアップしておきますね
。やぁ、私はどっちも大好きだなぁ・・・




 それでは、今回はこの辺で~
 またお逢いしましょう