【シングルよもやま話 15】 あの人の哀願口調のセリフが延々と続く、思わずビックリの異色ロック | 歌謡曲(J-POP)のススメ

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音楽といっても数々あれど、歌謡曲ほど誰もが楽しめるジャンルは恐らく他にありません。このブログでは主に、歌謡曲最盛期と言われる70~80年代の作品紹介を通じて、その楽しさ・素晴らしさを少しでも伝えられればと思っています。リアルタイムで知らない若い世代の方もぜひ!

 3回ほどアイドルのレビューが続いたので、今回は’60年代まで遡ってジャンルの異なるこの作品()でいってみましょう。


「お前のすべてを」(ザ・モップス)
作詞:阿久悠、作曲:村井邦彦、編曲:村井邦彦

[1968.8.5発売; オリコン最高位-位; 売り上げ枚数-万枚]
[歌手メジャー度★★★; 作品メジャー度★; オススメ度★]


 俳優の鈴木ヒロミツ、アレンジャーの星勝が所属していたことで知られるザ・モップス吉田拓郎の手による「たどりついたらいつも雨降り」(オリコン最高位26位、売り上げ枚数14.4万枚)がヒットした以外は、セールス的には今ひとつパッとしなかったグループだったみたいですね・・・。鈴木ヒロミツ本人が、「俺らが売れないのは、(ジュリーのいる)タイガースや(ショーケンのいる)テンプターズみたいにルックスのいいのがいないからだ」といみじくも曰ったそうですが、ご面相の件はさて措き、衣装の点で言えば確かにヒッピーみたいなきちゃない恰好したグループではありました

 この「お前のすべてを」は、モップスとしては3作目のシングルということになります。彼らの場合、デビュー当初から「売る」ことよりも自分たちのやりたいことを優先した様子が窺えるのですが、その中でもこの「お前のすべてを」は飛び抜けて異色作でしょう。どこが異色なのかは、YouTubeを聴いて戴ければすぐにお分かりですよね
。・・・そう、最初から最後まで、鈴木ヒロミツの哀願口調のセリフが延々と続くという、シングルとしてはかなり“異例”と言ってよい作品なのです



 鈴木ヒロミツと言えば、2007年にまだ60歳という若さで亡くなったというニュースが記憶に新しいところでしょうか
。私たちは、彼が演技派で好感度の高い俳優さんだったことをよく知っているので、その上でこの「お前のすべてを」を聴いても、「あ、ヒロミツさん、歌手時代から感情を込めたセリフが上手だったんだな・・・」と感心こそすれ、変だとは特に感じません。だけどリリース当時は、聴く側にそんな“前提”なんかなかったわけで、おそらく「変な曲」、ヘタすると妙齢の女の子達には「気持ちワルーイ」、「暑苦しい」と思われてしまった可能性が高いですね

 例えば「やだ」のセリフひとつとっても、俳優のセリフとして考えたら、この「間の取り方」や「感情の込め方」は非常に上手なんですよ(ちょっと情けない感じのする「やだ」ではありますケド
。だけど、ドラマではなく、シングルレコードでこれをやられちゃ、聴く側だって心の準備ってものができてないわけで・・・。しかもここで、「イケメンなら許される言動も、ブサメンがやったら即セクハラになる」という、セクハラ問題に関するとってもキビしくて“不条理!”な公式をここで援用すると(天国のヒロミツさんどうもすいませんm(_ _ )m)、おそらく女の子がドンビキしたことは間違いないところではないかと。おまけに、ジャケット中央に見える、入れ墨を「どうだ」とばかりに見せるヒロミツさんの“絵面(えづら)”だって、相当にキテますよねぇ

 ・・・ついついネガティブなことを書き散らしてしまいましたが、“ユーモア”と“味”があった庶民派のヒロミツさん、私は大好きでした
。彼のことをリアルタイムで認識したのはモービル石油のCMで、その後間もなく俳優として活躍されたんでしたね。それからだいぶ後になってGS出身だという話を聞いたときには、ちょっと意外に思いながらも、「ああ、『人に歴史あり』とはよく言ったものだなぁ」と、ますます彼のファンになりましたから・・・ヒロミツさん、本当にカッコイイ生き方でしたよ!改めて、心よりご冥福をお祈りいたします

 それでは、今回はこの辺で~