【独偏ベストテン 21-1】 細野晴臣 作曲シングル (6~10位) | 歌謡曲(J-POP)のススメ

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音楽といっても数々あれど、歌謡曲ほど誰もが楽しめるジャンルは恐らく他にありません。このブログでは主に、歌謡曲最盛期と言われる70~80年代の作品紹介を通じて、その楽しさ・素晴らしさを少しでも伝えられればと思っています。リアルタイムで知らない若い世代の方もぜひ!

 コンポーザー別の独偏シングルベスト10としてはなんとほぼ2ヶ月ぶり、加藤和彦、小室哲哉、川口真、井上ヨシマサ、網倉一也、坂田晃一(すべて敬称略でやんす)に続いて7人目となる今回は、YMOでお馴染みの細野晴臣センセでいってみましょう。・・・それにしても、これまでに取り上げたラインナップを眺めてみると、時代も作風もまるっきり一貫性のない面々で、我ながら呆れてしまいますが、皆さまどうかしばらくお付き合いのほどを・・・

 細野晴臣は、大学在学中にベースを始めたことをきっかけに多くのバンドを渡り歩き、1969年に”エイプリル・フール”のベーシストとしてメジャーデビューしました。その後、”はっぴぃ・えんど”、”ティン・パン・アレー”を経て、1978年に坂本龍一高橋幸宏と共に結成したイエロー・マジック・オーケストラ(YMO)で大ブレイク
 コンポーザーとしても、’70年代初めから他のアーティストに作品を提供していましたが、シングル作品提供数と世間的な知名度の両面から言えば、コンポーザーとしての最盛期は1980年前後から’80年代半ば頃までと言って良さそうです

 細野晴臣の作風の大きな特徴として、一般受けしそうな「ポップ」な要素を意識的に避けて、歌謡曲としてはやや異色のメロディーラインを駆使する“実験的”な作品が多いというのがあります
。その結果として、YMOの3人の中では最も「オレ節」度が高くなっていて、一度聴けばすぐに彼の作品だと判別がつくものが結構多い。その根底には「他人と同じことはやらない」という相当強い意識があるのではないかと思います

 さて、今回の独偏ベストテンを決めるに当たっては、これまでと同様に、1968年から現在までのオリコン100位以内にランクインしたシングル作品をすべてピックアップした後に、ランク外のシングルをできるだけ調べて追加しました。その結果、細野晴臣センセの手掛けたシングル曲(A面のみ、他人への提供曲に限る。共作も含む。)として55作品をエントリーした上で、その中から、私の独断と偏見により上位10曲を選定しました(従って、細野晴臣名義あるいは彼が所属しているグループによるシングルは対象外となっています)
 なお、今回も1アーティストにつき1作品のエントリーという制限を付けてありますので、念のため・・・

 それでは独偏ベスト10の発表に移りましょうか
。今回はまず、シングルB面であるがゆえに泣く泣く選外とせざるを得なかった曲を番外編としてご紹介してから、あとは第10位から第6位まで、いつも通り一気にいきますね

番外編 真空キッス (アポジー&ペリジー) 【オススメ度★★★★】
作詞:松本隆、作曲:細野晴臣、編曲:細野晴臣
[1984.7.10発売; オリコン最高位-位; 売り上げ枚数-万枚]

 「真空キッス」は、同じく細野センセの手による「月世界旅行」のB面として発売された曲です。・・・いやぁ、残念っ もし「真空キッス」がA面だったら、間違いなく上位3曲の一角を争ってました。それくらい、私の“お気に入り”の作品なんですよねーとびっきりポップでキュートな詞と曲が、不安定な女性ヴォーカルとしっくりと調和して、摩訶不思議な世界に誘(いざな)ってくれるのが何とも気持ちいいのです

 ちなみにアポジー&ペリジーというのは、ニッカウヰスキーのCMに出ていた二人(
)組のロボットキャラのこと。・・・とは言っても、ロボットが声を出しているわけではなくて、2人の覆面タレントが歌っています。女性ヴォーカルの方はとても特徴があるのですぐ分かってしまうと思いますが、ヴォコーダーのかかりまくった男性ヴォーカルの方を声だけで当てるのはほとんど至難の業・・・ 二人の正体をご存知ない方は、誰だかちょっと考えてみるのも一興かも知れませんね。ちなみに本業は、女性(発売当時23歳)=歌手、男性(発売当時33歳)=俳優、です。もしリクエストがあれば、答えをコメント欄で発表したいと思いまーす



第10位 見えない世界 (和田アキ子) 【オススメ度★★★】
作詞:及川恒平、作曲:細野晴臣、編曲:東海林修
[1975.2.15発売; オリコン最高位55位; 売り上げ枚数2.9万枚]


 1968年にデビューした和田アキ子の22作目のシングル。この曲では、黒人女性グループ“エッセンス・オブ・カプリコーン”がバックコーラスとしてテレビにも出演していました。当時小3だった私がテレビで見て、「本当に地球が壊れるんじゃないか?」とマジメに危機感を抱いてしまったという、子供の不安感を煽るなかなか衝撃的な作品でしたね・・・

 この曲が細野晴臣センセの手によるものだと私が知ったのは、それから随分と後になってからのことでした
。・・・ま、でも、それも仕方のないことかも知れません。1975年だと細野センセの知名度はほとんどなかったも同然ですから

 それにつけても、和田アキ子にはこういうソウルフルで中低音を聴かせる類(たぐい)の曲が良く似合います
。本人も、歌っていてさぞや気持ちのいいことでしょうね



第9位 夢・恋・人。 (藤村美樹) 【オススメ度★★★】

作詞:松本隆、作曲:細野晴臣、編曲:細野晴臣
[1983.2.1発売; オリコン最高位13位; 売り上げ枚数16.0万枚]


 藤村美樹キャンディーズのミキであることは、皆さんもちろんご存知ですよね。1978年の電撃的解散から数えて5年ぶりに、1983年春のカネボウ化粧品のCMソングである「夢、恋、人。」がスマッシュヒット。その後、「二匹目のドジョウ」を狙うことなくきっぱりと引退したのがとても潔くてカッコ良かったですね

 この「夢、恋、人。」は、中森明菜の「禁区」、さらにはYMOの「過激な淑女」とまるで兄妹の関係にあるのではないかといった風情の作品です。だからといって、「3曲とも似たメロディラインの使い回しじゃねぇか
」と断じてしまうのは乱暴なのであって、クラシックのように“組曲”として見てやると座りがいい感じがします。個人的には、3曲のうちこの曲が最もメロディアスに仕上がっていて一番好きなんですが、この「メロディアス」というのは、細野作品としてはむしろ例外的なのではないかと思います。

 ちなみに、タイトルの正しい表記は「夢恋人」ではなくて、「夢・恋・人。」ですよ。「夏にフレッシュ」(渡辺千秋)ではなくって、「夏に フレッシュ。」なのと同じですね~
(←そんなん誰も知らねえよ)。



第8位 Wait My Darling (金井夕子) 【オススメ度★★★】
作詞:大貫妙子、作曲:細野晴臣、編曲:細野晴臣
[1980.10.21発売; オリコン最高位-位; 売り上げ枚数-万枚]


 スタ誕出身で、1978年に「パステル・ラブ」でデビューした実力派 金井夕子の8作目のシングル。同じ細野晴臣センセによる7作目の「チャイナ・ローズ」は異国情緒あふれる意欲作かつ実験作でしたが、さすがにメロディーラインがマニアック過ぎた感が・・・。「Wait  My Darling」は、「チャイナ・ローズ」とはうって変わって、細野センセにしては随分と素直で淡々と進むメロディーラインが耳にとても心地よいオシャレな佳作です

 歌手としては残念ながらヒット作に恵まれず、4年ほどで歌手をやめて(青木茗名義で)作詞家に転向した彼女ですが、どうやら1997年に歌手活動を再開している模様・・・(詳細については確認中です)。彼女の安定度抜群の歌唱は得がたい魅力なので、今後の歌手活動にも大いに期待したいところですねぇ



第7位 月下美人 (松本伊代) 【オススメ度★★★】
作詞:松本隆、作曲:細野晴臣、編曲:鷺巣詩郎
[1985.10.5発売; オリコン最高位38位; 売り上げ枚数1.6万枚]


 松本伊代の17作目のシングル。この作品は、もともとNHKのラジオ特番で遠藤京子(現:響子)の詞を乗せて作られた原曲に、翌年のラジオ特番でなぜか松本隆センセが詞をつけ直して松本伊代が歌うことになったという、曰く付きの曲です。・・・そういえば、同じく「月」をイメージして書かれたアポジー&ペリジーの「月世界旅行」も、松本-細野コンビの手によるものでした。そういう“非現実的”な世界がお好きなのでしょうか・・・

 松本伊代のシングル(12インチシングルを除く)としては、その前後3年の間で比較したときに、どういうわけかエアポケットのように売り上げ枚数がガクッと下がった作品で、ちょっと「えっ」と思ったので、非常に印象に残っています詞、曲、アレンジの3拍子揃った佳曲だと思うんですけどねぇ・・・。分からないものです



第6位 赤道小町ドキッ (山下久美子) 【オススメ度★★★★】
作詞:松本隆、作曲:細野晴臣、編曲:大村憲司
[1982.4.1発売; オリコン最高位2位; 売り上げ枚数40.8万枚]


 1980年に「バスルームから愛を込めて」でデビューした山下久美子の6作目のシングルにして、1982年夏のカネボウ化粧品のCMソングとして大ヒットした曲。彼女が「総立ちの女王」と呼ばれるキッカケとなった曲でもありますね。まぁ個人的には、デビュー曲以来ずっとポップ路線で来たのが、この「赤道小町・・・」でようやく花開いたかと思ったら、その後すぐにロック色の強い路線にシフトチェンジしたのが意外でしたけど・・・

 細野センセによれば、♪ ドキッ ドキッ の部分は、最初からヒットを狙ってインパクトの強いメロディを意図的に組み込んだとのこと。「なるほど」という感じがしますねぇ。 また、♪ キミは赤道こまっち の部分は、歌謡曲としてはかなりエキセントリックなメロディですが、同時に「何か人と変わったことをやりたい」という、いかにも細野センセらしさの出ている箇所でもあって、こちらも思わず「ニヤリ」としてしまうのです





 ・・・さて、今回はここまでとします。例によって、1~5位の発表まで少々お待ち下さいね
。少しだけ予告をしておくと、今回の独偏ベストテンでは、上位5作品の中にオリコン10位以内にランクインした曲がたった1作しか入らないという、かなり波瀾の結果となっております・・・。それでは、ごきげんよう~