愛犬家の方なら一度は必ず耳にした事があり、ワンちゃんとの間に欠かせない事として『主従関係』と言う言葉をよくお聞きすると思います。多くの方々はこの関係を、ワンちゃんより優位な立場で日常生活のしつけにおいても、立場を勘違いした凶暴な問題行動を起こす手の付けられないワンちゃんにしない為にも、絶対的に築かなければならない必要な関係だと言う知識は誰しもが持っていると思います。
確かに私もワンちゃんと楽しく幸せに暮らして行く上には絶対不可欠な関係だと考えております。またその関係も正しく有効的な方法でなければ築かれる事は出来ませんし、ましてや放って置いても「可愛がってさえいればその内に自然に築かれる」などと言う方は、まず期待外れの逆結果を生みます。ですがこの『主従関係』は、はたして人間がワンちゃんをより扱い易く快適に暮らして行く為だけに、問題行動を回避し従わす為だけに必要なものなのでしょうか？一番肝心なワンちゃん側の立場に立って見ても『幸せな生き方』に重要不可欠な事なのでしょうか？はい！私はワンちゃん側の立場に立ってこそ、最も重要で不可欠な事だと断言致します！
『ワンちゃんの幸せな生き方』を真摯に想う事は、全てはこの礎の上に成り立つのだと！
私は今まで、ある『もう一つの大切な事』を多くの飼い主さんに提唱し続けて来ました。
それはワンちゃんに 【枕を高くして寝かせてあげる】と言う大切な事です。
決してワンちゃんを殿様扱いすると言う事では無く、むしろその逆です。その訳は本来の犬と言う哺乳類が持つ本能や習性の遺伝子と深く関係している事なのですが、近代の犬と言う個体を形成するまでの進化をさかのぼると、約6500万年前に発生した『ミアキス』や更に進化を遂げ約2600万年前に発生した『トマルクトゥス』が更に進化を経た、私達がよく知る個体としては『オオカミ』がいわゆる犬属の動物達の直近の先祖です。ここから人間が自分達の生活に必要な犬を選択交配を重ね改良して来たのです。ですから世界中に数百種の犬種がいますが、シェパードやドーベルマンなどの大型犬も、チワワやシーズーなどの小型犬やミックスも、全ての犬の脳の基本的な部分は『オオカミの本能と習性』を強く受け継いでおり、古い野生のままなのです。ですからここを理解せずして『ワンちゃんの幸せな生き方』を想い語れません。『人間と犬との関係作り』の重要性が『ワンちゃんの幸せな生き方』に直結しているんだと言う全てのヒントや答えがここにあります。
オオカミは古来より群れを形成し生活を営んでいます。その群れの中には絶対的なリーダーがおり、兄弟や先輩や後輩などと『縦社会』の順位の中で生きています。リーダーは食事の順番も一番最初に取る事が出来るなど、あらゆる事の優先権を持ち下位者を従わせ統率し、群れに自分の子孫を残す最優先権利すらをも有する絶対的存在です。そしてそれを下位者に認識させ従わせるものとは『戦闘力』と『統率力』なのです。そのどちらかでも不完全になった時は、下位者や他の群れの者にその座を奪われ追われるのです。ですから犬が人間社会において自分が上位者になりたいが為に『戦闘力』を行使して挑んで来ると言う行為は、放って置けば本能的に自然に起こりうる事なのです。
しかし下位者は、この絶対的なリーダーの『戦闘力』のおかげで他の群れの者や外敵から身を守られ、獲物にもありつける事が出来て『統率力』のおかげで平穏な諍いの無い群れ生活を送れると言った大きな安心を得ています。だから自他共に下位者を決め込んでいる者は過剰な警戒心を持つ必要も無く、常に虚勢を張って他を威嚇し続ける必要も無く、決められたルールの中で多くの愛情を受け健やかに過ごし、体を休める時には安心して深く『枕を高くして寝られる』のです。リーダーは絶対的権力と引き換えに、こんな安心した生き方を失い、寝ても覚めても群れを守り維持する為や、何時自分の地位をおびやかすかもしれない見えない敵に、威厳と警戒心を保ち続けなければならない、なんと気の休まらない孤独な人生なのでしょうか。でもそれは本能が欲するままに挑んだ結果、たまたまその者が力に恵まれ周りがそれを認めただけであって、人間程の思考があれば『健やかな安心できる人生』を選んだでしょう。幸いにも人間と暮らす社会には、愛犬の本能の趣くままにすること無く、思考力で幸せを判断してくれる飼い主がいます。
「あなたのワンちゃんには、どちらの人生を与えてあげたいですか？」
「あなたの愛犬にはリーダーなどと言う孤独で過酷な立場に置きたくは無いですよね。」
世界の動物学者の中に「適正なトレーニングを受けた犬は、そうでない犬に比べると病気の発症率が極めて低く、また寿命も長い傾向にある。それはトレーニングする事によって意欲的に働く喜びを知り、主従関係の確立によりストレスが大幅に緩和され、精神的部分が肉体にも大きく良い影響を及ぼしていると考える」と論じる方が数多くおられます。自分の愛犬が小型犬だから引きずられる訳では無いし、それ程扱いに困っている訳では無いからと言う人間側の立場からだけでは無く、ワンちゃん側の立場で飼い主さんも一緒になって色々な喜びと可能性を引き出しながら、行動面だけではなく内面的にも『愛犬が安心して生きられる関係作り』に私共と取り組んでみませんか。
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