党名をコロコロ変えている大津綾香の党が破産しそうです。しかし当たり前だと思います。気に入らないからという下らない理由で次から次へと人を切って行ったら、その先どうなるかなんて誰でも分かることです。卑怯な手口を次々と繰り出してくる立花に対抗できるはずはない。正攻法で勝てると思っていた自分の甘さを嘆くしかないのでは。

 大津綾香は「議員がいなくなったから、助成金が入ってこなくなった」とか間抜けなことを言っていた。恵まれた環境で育ってきたから、この辺りの金銭感覚が鈍くなっているのではないか。お金は黙っていても次から次へと入ってくるものだと思っているのかもしれない。少なくとも誰かが何とかしてくれると思っていたはずです。

 この人は実力で這い上がって来ていないところに弱さがあるのだと思います。恵まれた人の欠点でもある。結局、1人になったら何もできやしないのです。勝てる争いだったのに勿体ないことをしたなと思います。褒められるのは立花に立ち向かった姿勢とメンタルの強さくらいか。



 POD出版はいつでも可能ですが、読み直したら修正箇所が幾つも見つかったので、ひと通り読み終わってからにします。内容は変わりません。



 今回は「青き石眼のアシュリー」の紹介です。

 いつかの文学フリマで知った本です。紙は料金が高かったので、帰宅してから電子書籍で購入しました。この書籍はPOD出版をしたものだと思います。

 POD出版はページ数に応じて最低料金が決められます。それ以下には設定することができません。その為、どうしても本の値段が高くなってしまうのです。作家に入るお金は僅かなもの。ただでも高いのに、それ以上、値段を上げるわけにはいかない。無名の作家の本に高いお金を払ってまで購入する人はいません。これがPOD出版の欠点。出版社からすると脅威にはなり得ないと思います。




冒頭

「少女が叔父に追われるシーンから」



 文章は体言止めが多くて、リズムが悪い印象を受けました。せっかくスリリングな入り方をしているのに勿体ない。



 シーンが切り替わって、猛禽類を師匠に持つ少年が登場。育ててくれた祖父は既に亡くなっている。師匠の猛禽類や祖父との関係、どのように生活しているかを簡潔に書いており、冒頭シーンと違って、すらすらと読めます。



第一章

 あらすじから、追われていた少女が生きていることは既に分かっています。タイトルが「生きていた!」となっているのが気になった。これで良いのか。


「私、今、どうしてるっけ?」という少女の言葉遣いが冒頭の上品な口調とは大きく異なる。上流階級の出身であるかのような話し方を冒頭ではしていた。


 文章が不自然に長いのも気になった。

「その人は、足を踏み出そうとし、躊躇うように止め、けれど戸惑ったこと自体をなかったかのようにまた踏み出し「師匠」と、言葉を発し……」



「呆気に取られて見送っていたら、その人物がそのまま私のそばに寄ってきたから、気が動転してとっさに叫んでしまった」

「急に逃げ出され唖然としていたら、またもや少年が飛び込んできて、その胸に抱えられた服とトランクを見た瞬間、私――。  自分に何が起こったのかを、一気に思い出し。」

「結局、葬儀だのなんだのに追われているうちに、休みは終わって……。私はなんとか、卒業だけはしなきゃって、机に齧りつくような日々を過ごして。」

 3つ、4つに分けることができそうな長い文章が幾つもある。パニックに陥った精神状態を表したかったのかもしれないが、何とも読みづらい。



ノエル(少女)

「子供扱いはいかんかったらしい。」

 やはり言葉遣いが一定ではない。


 追いかけてきた叔父のことを「相手は上流階級」と発言しているので、叔父が上流階級であるのは間違いない。ノエルはそうではないようです。



自己紹介の仕方

 アシュリー少年が猟に出た後、ノエルがアシュリーの部屋を物色する。その時に

「私、ノエルは〜で、〜だ」とノエルの1人語りの自己紹介が始まります。


 部屋にはノエルしかいません。何だか劇場で演劇を観ている気分になる。この手の本をあまり読まないので、何だか新鮮に感じました。狙ってやっているのかと思ったが、この部分だけの演出でした。


 この自己紹介で有名な学校を主席で卒業したことが分かります。冒頭の上流階級の言葉遣いは高慢なキャラであることを読者に伝えるためのものだったのでしょう。それだと辻褄が合う。

 自己紹介が終わると学校を卒業してからの経緯も語られる。ここも1人語り。

 プライドの高さや言葉遣いがこれでやっと納得できたが、「私、今、どうしてるっけ?」「子供扱いはいかんかったらしい。」などの言葉遣いは何だったのかとなる。出自は大したことはないが、上流階級気取りでいるということだろうか。



ミステリー要素

 読んでいても特にミステリーらしきものが無く、引っ張る要素が見当たらなかった。何故、ノエルは叔父に追われているのだろう。という事くらいだった。しかしKindleの17%の辺りで、ようやく興味を引かせてくれる描写がありました。


「僕は街の人が怖い。僕はノエルが怖い」


 といったものです。しかし次の文章で早々と明かされてしまいます。しかも意外性がなかった。ノエルが追われていた理由も意外性がない。



性格などの描写は直接的

「彼女は〜のタイプだ」「アシュリー少年はしっかり者だ」

 分かりやすいが、小説として、この書き方で良いのかと思う。



Kindle19%のあたり

「僕の腕のことだって、バレそうだし」

 ミステリーが小出しに提示されます。


また1人語り

 5-10Pほどの紙面を割いて、ノエル目線で少年の生活についての1人語りがある。食生活や生活スタイルなどについて言及。


 そして今度は自分についての1人語り。学校のこと、蒸気自動車、熱石、紋章などについて。


 紋章は上流階級に属する人が一人一人異なるものを持っている設定にしてあった。


 熱石は、あらすじで「スチームバンクが〜」と書いてあったので、ここで何となく見えてきました。スチームとは蒸気のことのようです。

 様々なことを提示してはいますが、引っ張る要素としては少々、弱い気がする。



回想シーン

 突然、ノエルの前に現れた叔父がノエルに「その紋章を見せろ」と言う。


 ノエルも叔父から襲われた話を淡々と回想しており、まるで緊迫感がない。



アシュリー少年の腕について

 ノエルがアシュリーの右手の黒手袋のことに言及する。


 少し前に「僕の腕のことだって、バレそうだし」という描写があったので、そろそろ種明かしがありそうです。



Kindle34%のあたり

「腕や眼のことも秘密にしていなきゃいけない」と眼にも秘密があることを読者に提示する。

 タイトルは「青き石眼のアシュリー」なので、そもそもミステリーではありませんが。



面倒見の良い店のおばさん

 アシュリーの秘密を全て知っている。


 アシュリーは村の人たちとは仲が悪い。特に軍事施設を森に造ろうとしている自警団とは不仲です。店のおばさんだけがアシュリーのことを理解しています。



Kindle40%のあたり

 亡くなった爺ちゃんに、目と腕に寿命があることを告げられたことをアシュリーが思い出す。


 タイムリミットを設定してスリルを演出しようとしているのかと思ったが、そうではなかった。それに別に大した秘密でもない。



ノエルはツンデレ設定

 アシュリー少年と生活するようになって、アシュリーの生活スタイルや行動パターンを知ったノエル。少年の面倒を見なければならないと感じるようになります。「何で、この私が面倒を見なければならないの」と言いつつ、面倒見の良いところを見せ始めます。



Kindle53%あたり

「まぁじいちゃんからしたら……彼女と同じ世界を見れる、僕の方が羨ましかったみたいだけど」


 ここで鷹が雌であることが分かります。鷹が登場してから随分と経つが、何故ここまで引っ張ったのかと思う。まあ最初の段階で性別を伝える必要もなく、隠す意図もなかったのかもしれないが。わざわざ性別を意識させる書き方をしているので、何かあるのだと勘繰ってしまいました。



苦悩の描写なし

 相変わらず苦悩が伝わってこない。子どもの頃の事故で障害を負ったこと。親に捨てられたことなどが、本人の口から淡々と語られます。

「生まれる意味と価値が欲しかった」と語りはするが、次の瞬間には

「森に行けば、冬に備える獣たちが、きっと僕を食べてくれる。そう考えた」と語っており、まるで辻褄が合わない。生きたいのか、そうではないのかハッキリしない。



また口調が変わる

「そうは言いますが、私よりも小さな子が頑張ってるのにって、思うんです!」


 ノエルがアシュリー少年について語ります。それまでの話し方と比べると、この部分だけ浮いているように感じます。



不自然な描写

 ノエルは森の危険性を知っているというのに、帰って来ないアシュリー少年を探しに行きます。


 別に何日間も帰って来ないわけでもなく、そこまで心配になるほどのことではない。危険を冒してまで行くシーンではありません。心配なのは分かるが、動機が薄い。



緊迫感なし

 今まさに死ぬかもしれない。という状況が作られていた。しかし全くといって良いほと緊迫感が伝わってこなかった。小説全般に亘って言えることです。軽い内面の描写ばかり。



ノエルの叔父と遭遇

 執拗にノエルを追いかけている人物とアシュリーが出会います。叔父は襟首を掴んでくるような粗暴な人物。



アシュリーの勘違い

 アシュリーに心配をかけまいとノエルは嘘をついていたが、アシュリーがそのことについて腹を立てていた。

「ノエルは悪人ではなかったのか」などとアシュリー少年が自問自答するシーンがあった。これは、ノエルが追われている理由として、アシュリーが「ノエルが悪いことをしたから」と思い込んでいたからです。

 出会い方やノエルの性格から判断すると、その捉え方は少々、不自然な気がします。まだアシュリーは子どもだから有りか。



ノエルは上流階級ではなかった

 父親は町医者。母親は一般人でした。途中で薄々、そのような気はしたが、冒頭での言葉遣いや追われている理由から、上流階級の可能性もあると思っていた。ここをボカす必要は全くないと思う。ミスリードをしているのかと思った。



お互いに詐欺師扱い

 アシュリー少年とノエルは、お互いに相手のことを「詐欺師ではないのか」などと疑っている。しかし、ずっと一緒に住んでいるのに、この感想を抱くものだろうか。詐欺師だと思っているなら、命を賭けてまで助けには行かないし、本気で怒ったりもしない。何だか不自然に感じました。

 それに読者はすでに2人のことを知っているので、「お互いに詐欺師だと思っている」という、この描写をわざわざ読者に提示する必要はない。提示するなら有効利用すれば良いのに、それはなかった。読者の興味を惹きつける描写にはなっていないと思います。



Kindle96%あたり

 今更になって、何とアシュリー少年に特殊能力があることが判明。鷹の目とリンクさせて俯瞰して見ることが可能らしい。


 途中に「まぁじいちゃんからしたら……彼女と同じ世界を見れる、僕の方が羨ましかったみたいだけど」といった描写はあったが、鷹の気持ちになりきって、想像を膨らませて俯瞰的に見ることができる。という意味なのかと思っていた……。まさか本当に見ることができるとは。


 タイトルは「青き石眼のアシュリー」ではあるが、ここまで青い目をしているとか、石眼であるといった描写はなかった。おそらく後編で突然、青い石の眼に関する描写があるのでしょう。


 下巻を読むか悩むところ……。