葛飾北斎は面白い。現代の全ての人を平均化する教育では生まれてこない強烈な個性の持ち主。


葛飾北斎 (北斎は北斗七星の意味を持つ)というのは数多くあるうちの1つの画号でしかない。

有名なところでは鉄棒ぬらぬら、画狂老人卍。

鉄棒ぬらぬらは春画を描いていた時の画号で、画狂老人卍は晩年の画号。


画号の変更は30回以上も行なっていて、新しいことをする決心をする度に変えていたとか。

引越しに至っては93回もしている。

掃除など何もせずに、ひたすら絵を描いて部屋が汚れたら引越しをしていたらしい。その為、生涯に3万点は描いたとされる。


金銭、身なり、食事、挨拶などに何の関心もなく、客が来ても茶も淹れずに隣に住む子どもに淹れさせたり、または全く相手にしなかったり、人の言うことは聞かないなどメチャクチャ。

それでも弟子・孫弟子が200人以上はいたらしく、結婚は二回、子どもも何人かいる。

三女の葛飾応為と共に絵を描くことに生涯を捧げた人物です。


葛飾北斎は絵に関しては、とんでもなく貪欲な人で、狩野派、土佐派、唐絵、西洋画など様々な技法を学んでいる。断られても何回も何回も足を運んだとか。

絵画だけではなく接骨術、筋など解剖学も学んでいるので、レオナルド・ダヴィンチみたいな人と言っても良さそう。


大々的なイベントも行なっています。

120畳の巨大な紙に達磨を描くパフォーマンス。この絵は残念なことに戦災で焼失してしまった。


お伊勢参りや富士山詣での流行に合わせて風景画にも手を出すようになり、これがお土産や旅の参考になるからと北斎の絵はかなり売れたようで、商才もあった。


葛飾北斎の浮世絵は海外に服などを包む紙として使われたことがきっかけで有名になったという話もあるけど、オランダ商館長が葛飾北斎の絵を気に入り、年に数百枚の絵を注文しているので、海外にはかなりの数の絵が届いているはずです。その為、海外で葛飾北斎の絵を見てゴッホやモネなどの巨匠が影響を受けています。

影響を与えたのは葛飾北斎だけではなく、東海道五十三次を描いた歌川広重もいる。ゴッホは歌川広重の絵を真似て描いており、その絵は現存しています。


頭がとにかく柔軟で既成概念などつまらぬものに縛られはしないので、当時は筆で絵を描くのが当たり前の時代でも、鶏の足で絵を描くなど好き勝手に描いていた。自分の命が尽きる最後の最後まで自分の絵には満足せずに、一日中描き続けたところに感銘を受けます。

83歳の時には江戸で倹約令という、「質素倹約に努めろ」という命令が下ったことで、絵を描くことが許されなくなりましたが、葛飾北斎は知人に呼ばれて長野まで出向き、絵を描き続けました。距離は200キロ以上、これを5日かけて踏破。83歳なのに何というバイタリティ溢れる行動。


当時にしては斬新なものばかりに挑み続けていた。これが世間の常識だから、今までもやってきたことだからと言って型に嵌って生きる人には絶対に描けない絵です。


葛飾北斎は富嶽三十六景が有名ですが、他にも優れた作品を残しています。


八方睨み鳳凰図 (21畳分の大きさ)

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文昌星図
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雪中虎図
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鍾馗(しょうき)騎獅図
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月みる虎図
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遊女図
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唐獅子図 (三女の応為との合作)
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次は葛飾北斎も認めていた天才と言っても良い絵師、葛飾応為 (おうい)です。

葛飾北斎は娘のことを顎が出ていたことからアゴと呼んでいたとか。

美人画に関しては葛飾北斎は応為の方が上だと認めていて、春画の色彩も任せていたようです。


肝心の絵ですが応為の絵は個性的で日本画にはあまりない「光」の概念を取り入れています。まるでレンブラントの作品のようです。


夜桜美人図 (春夜美人図)

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吉原格子先図

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応為の絵は本当に江戸時代に描いたのかと思える斬新なもの。
現存するのが10枚しかないというのが残念ですが、この絵師は必ず有名になる。
というのも、葛飾応為が主人公のドラマを放映するとのことです。
ぜひ見て知って欲しいと思います。