やはりディズニー映画は奥が深かかった。


ディズニー初のダブルヒロインなどと、ネットには紹介されてあったけど、これは厳密に言うと1人でしょう。


アナの別人格がエルサであって、2人に見えるけど同一人物だと思います。


よくある自分と他人との比較ではなく、単純な善と悪の戦いでもなかった。

初期の頃のジブリもディズニーのように善と悪を持ち出して、その2つの対立構造を描いていたけど、ジブリは「もののけ姫」辺りから、見方を変えたら善も悪も同じであって、一方的に相手を悪とは決めつけられない。との見方を示したように思える。

その頃からジブリはつまらなくなった。とジブリファンに思われたのは残念。殆どの人は表面的なものしか見ていないので、この感想を抱くのは仕方がない。

ジブリは以前のような作品は創りたくないのでしょう。つまらなくなったというより、きっとわざとやっている。

売れるものを作ろうと思えば、恐らくは今でも作ることが出来るはずです。

宮崎駿が「もののけ姫」を作った時にジブリファンに対して

「あの人達はそこまで深く見てないから分からないでしょう」

と言って笑っていたことを思い出します。この人は日本人に「もっと考えて欲しい」と思っている。


宮崎駿に「子どもがトトロが好きで一日中見ています」と言った母親がいたそうで、宮崎駿は衝撃を受けたと言っていたけど、そりゃそうだと思う。

トトロのようなものは今後二度と作ってはいけない。とすら思ったのかもしれない。

思考停止した人を自らの手で作り上げていったのでは笑い話にもならない。

ジブリファンの殆どの人が気付いていないのだろう。宮崎駿には毒気がある。だから素晴らしいのです。

何もない普通の人で、しかも綺麗事を言っているだけの人だったら、ジブリ映画なんて絶対に観ていない。



ディズニーもライバルが増えて、似たようなものばかり作り続けるわけには行かなくなったのか、「アナと雪の女王」は今までとは思想の組み込み方が変わっていたように思えます。


アナと一緒に行動を取っていたオラフはポジティブな感情を表していたのか。


エルサは幼い頃に、別人格の自分自身であるアナを傷つけてしまって、固く心を閉ざした。

映し出す白い雪はエルサの心象風景。その白い雪をオラフが色を付けていく。

白は無感情を表していて、エルサに感情が蘇れった時には白が他の色に変化していた。


オラフが「黄色は嫌だ」と言っていたので、これは一体どういう意味なのかと思って調べたら、欧米では裏切りなどのマイナスなイメージがあるらしい。


因みにオラフは「Oh! Laugh」の意味があるのだとか。

オラフは冬の方が過ごしやすいみたいですが、夏になるのを心待ちにしていた。最後は雪が溶けてもオラフは溶けなかった。

エルサに雪雲を作ってもらって夏でも快適に過ごせるようにしてもらっていたが、これは当然でしょう。流石にオラフを溶かすわけにはいかない。ポジティブな感情はいつでも必要だろうから。



冒頭のシーンで印象的だったのが、アナが心を閉ざしたエルサの心のドアを叩く場面。


「一緒に雪だるまを作ろう。自転車に乗ろう」

と言ってるシーンは中々、ジーンとくるものがあった。

心を閉ざしたことのある人は誰もが思い当たるのではないかと思う。


話の途中で両親が亡くなっていた。恐らく、これは「両親=依存心」を表している。


親が亡くなって「これから、どうしよう」と悩み、そして自ら立ち上がって歩いていく。

独りよがりだった幼いアナが、経験を積んで大人になっていく。アナを観ている人達は自分自身をアナに投影して観ているはずなので、感情移入できたはず。この辺りは流石にディズニーは上手い。


「アナと雪の女王」はアナが依存から自立して「真実の愛」を手に入れる話なのでしょう。

もちろん「真実の愛」とは男女の愛などといった単純なものではなく「自分自身を愛すること」を表しているのだと思います。


アナがエルサがいる部屋に入ろうとするシーンでオラフが

「開け方知らないのかな」

と呟いたシーンもアナが部屋に入ることができたシーンも印象的だった。

「開けてくれた。初めて」

と言ってアナが嬉しそうに部屋に入っていく。



アナが身を呈してエルサを助けることでアナが凍ってしまった時、エルサに感情が沸き起こり涙を流した。そこでアナの氷が溶ける。

これを機に雪が降り、吹雪や海が凍るといったエルサの心象風景がどんどん変わっていって、最後はアナとエルサは一緒に手を取り合って楽しそうに滑っていた。


スヴェンとクリストフという登場人物もアナとエルサのように同一人物の別人格か。

この2人はアナとエルサと違って一緒に行動を取ることが出来て対話も可能。

クリストフは他人と交流を持てないというキャラ設定だった。このクリストフも変わっていく。


このアニメは今までのディズニー映画と比べたら話が入り組んでいて、何回観ても新しい発見がありそうです。

心理学を知らない人が見たら、何のことやらさっぱり分からないかもしれない。だからネットで色々な人の考察を見ても個人的にはいまいち共感することが出来なかった。


「アナと雪の女王」は、まだ一度しか見ていませんが、ここまで複雑なものを子どもが見ても楽しめるものにしてあるのだから、やはりディズニーは大したものです。ジブリも同様に素晴らしい。もちろん以前のジブリより今のジブリです。


let it goをlet it be 「ありのまま」という意味で訳しているのは何故なのかと思ったら、これは口パクを意識してのものだそうです。

レリゴーのgoの時に口が開いているから、日本語の歌詞で歌う時も、その時には口が開いていないと不自然になってしまう。

この歌詞だけではなく歌詞全般にわたって口パクを意識していたようなので、これは大変な作業だったのではないか。あまりにも本来の意味と掛け離れてしまう訳にもいかないし。字数の制限もある。


本当は「あるがままの自分でいる」というよりは、「自分を許して変わっていく」という意味だと思います。


現代の感覚に相応しい、何度も観たいと思える映画でした。ジブリもディズニーも良い変化をし続けていると思います。