左目の瞼だけ乾燥する杉山あつしです。

ひび割れる前に対処しなきゃならない季節になってきたなぁ。

 

脚本動画を制作しているシャインコンテンツ様イラスト映画「私に占いの力あったら」に出演させていただきました!

 

 

サムネのクレジットからも見て分かる通り、僕は「あたる 役」を演らせていただいております。

向かって右側にいる横顔の男の人です♪

 

もしも良く当たる占いが出来る能力があったら……皆さんは如何しますか?

 

僕だったら劇中のあたると同じように、上手いこと生活していくサイクルを構築したいなぁ♪

でも劇中のミランダさんポジションの知り合いなんていない……。

 

そうすると、警告してくれる人もいないし、それに気付くこともできない。

あぁ! 結局は破滅が待ってる! 所詮は実力で生き抜く世界かッ!

パッヘルベルのカノンでリラックスできる杉山あつしです。

現状、これを超えるクラシック曲を知らない。

 

株式会社アキュート様のサービス「ワークライフなび」のWebムービーに出演させていただきました!

 

 

僕が声を担当したのはなび原という男性ですね♪

いやぁ…、長い説明台詞が難しかったぁ…(笑)

 

叶わない夢を追いかけている人。夢に向かって真剣に努力をしなかった人。夢を持つことに憧れている人。

自分の夢が分からない人。夢を追いかけているものの「叶わないのでは」と思っており、漠然とした将来の不安を抱えている人。

 

そういった「夢追い人」のビジネススキル向上、キャリア形成、就労支援の強化を行っているのがアキュートです。

今回の動画を通して興味を持った方がいらっしゃれば、会社名に貼り付けたリンク先の公式ページに飛んでみてください♪

 

僕も引き続き、声優道を走り抜けまするッ。まだまだ止まらねえぜ!

※今作はボイスドラマ「それは何たるエゴイズム」二次創作小説です。

※本家(公式)から創作の許可はいただいていますが、本家の物語とは一切の関係がありません

※あくまでも好き勝手に書いている素人の作品という点をご理解ください。

 

 

 アンドリューは困惑していた。潜入していた暗部組織「Legnaレグナ」には、自分の裏切りが伝わっているはずだ。あの監視カメラとマイクがダミーだったのか、とも考えたが……今の状況を考えれば、その可能性は低い。にもかかわらず、何故かLegnaからの追手が来なかった。

 「(…どうなってんだ? 自分たちの組織に誘い込んだ野郎が、情報を盗み出して逃げようとしてるってのに、何で追手が来やがらねぇ……。これも罠か…?)」

 疑いながらも地下の拠点を抜け出し、地上の階層に到達する。結局、アンドリューを追い掛けてくる者はおらず、その気配すら感じられなかった。

 「(…まぁ、追って来たら追って来たで迎え撃てば済む話か)」

 この建物の一階と、地下に存在しているLegnaの拠点を繋いでいる入口は、忍者屋敷に備わっているような隠し扉で隔たれており、外側からは判別できなくなっている。おそらく、この建物で働いている者たちがLegnaの拠点に誤って入り込んでしまうアクシデントを防ぐための対策なのだろう。隠し扉を正確に見つけ出して地下への道を開通できるものはLegnaの中でも限られていた。

 「(…とりあえず外に出るか。出口は……いや、馬鹿正直に正面玄関から出ていく必要もねぇ…。地下と違って、ここには窓があるんだ。そこから抜け出せば、ここで働いてる連中にも気付かれることなく)」
 「何してるの?何しちぇぅの?
 「ーーーッ!!?」

 誰にも気付かれるわけにはいかなかったが、突如として背後から声が掛かり、咄嗟に振り返るアンドリュー。だが、そこに居たのは……。

 「………あ…?」

 癖のある毛先を、クルクルと伸ばしっ放しにした長い青髪に、大人サイズの紺色のジャージの上だけを着た幼女が立っていた。年は、おそらく5才前後。滑舌が悪いと言うよりは舌っ足らずな喋り方も納得のいく幼さで、ジャージの上だけで全身を覆い隠しているほど体格が小さい。袖もダボダボだ。

 

 「(何だ、このガキ…。ここに住んでんのか…、あるいは遊びに来てんのか…?)」

 

 前者ならば、ここはマンションかアパートなどの集合住宅。後者ならば何らかの遊戯施設を想像したが、遊び以外の目的で来訪している可能性もある。もしかしたら、ここは学校か病院なのかもしれない。

 

 「ねーねー、何してるの?何しちぇぅの?

 「あん? あー…、えーっと……。ちょっくら出口を探してんだけどよぉ…」

 「出口? こっち!」

 「お?」

 

 どう見ても不審なアンドリューの言動に疑問を抱く様子もなく、青髪の幼女はダボダボの袖をフリフリと振りながら、この建物の出口まで素直に案内してくれるようだ。ペタペタペタという足音で初めて気付いたが、何故か両足に何も履いていない。

 

 「(……おかしなガキだ…。まぁ、案内してくれんなら別にイイか…)」

 「こっちこっちぃ!」

 「分かったっての」

 

 出口までの距離は遠くもなく、ものの数十秒ほどで見つかった。そろそろ追ってくるかもしれないLegnaの人間から離れるためにも、のんびりしている時間はない。

 

 「またねーまちゃねー

 「ん? おー、またな」

 

 ダボダボの袖をブンブンと振りながら別れを告げる青髪の少女に、テキトーな空返事をしながら建物の外に出るアンドリュー。しかし、彼が敷地の外に出ようとした瞬間、再び背後から声が掛かった。今度は成人男性のものだ。

 

 「何処かにお出掛けかね?」

 「………ッ…」

 

 その声には聞き覚えがある。海良からLegnaへの加入を勧められて、この建物に連れて来られた際、最初に会話を交わした人物の声だ。少しだけ緊張気味に振り返ると、そこには想像していた通りの男が立っていた。

 

 「……畔道阿弥あぜみちあみ…」

 「質問に答えてもらおうか、アンドリューくん。何処かにお出掛けかね?」

 「………コンビニだよ…。つーか、俺が何処に行こうと勝手だろぉが。それともLegnaってのは、所属者の自由を縛る決まりでもあんのかよ?」

 

 アンドリューは賭けに出る。阿弥がLegnaの中でどの程度の地位に立っている人物なのかは知らないが、上位者でなければアンドリューの裏切りに気付いていない可能性があった。たまたま地上に出ていたところで、たまたま外出しようとしているアンドリューを見つけ、何気なく声を掛けただけ。そんなシチュエーションを想定して、あえてLegnaの一員を装って返答する。上手くいけば、このまま施設の敷地外に出ることが出来るかもしれないが……。

 

 「……そうかね。では、あまり遅くならないようにな」

 「分かってるっての…」

 

  阿弥に背中を向けて敷地外に出て行く。アンドリューの目論見は、どうやら成功したようだ。しかし「遅くならない内に戻る」というアンドリューの肯定に偽りはない。

 

 「(……あぁぁぁ…、クッソ面倒くせぇ…ッ。だが、このまま野放しにしておくわけがねぇんだよなぁ)」

 

 今度はUnlimitedの一員として、己を騙したLegnaを壊滅させるため、もう一度ここに戻らなけらばならない。

 

 

 

 

 

 

 

 施設の敷地外に出て行ったアンドリューと入れ違いになる形で、阿弥の目の前に黒いワンボックスカーが到着した。中から出てきた四人の男たちに連れられるようにして、大人しくなった凪々が顔を出す。

 

 「まさか脱走するとはな」

 「…ごめんなさい」

 「優秀に育てていたつもりだったが、外の世界に身を染めるとは………。これは失敗作か」

 「……ぇ?」

 

 勝手に施設を抜け出したことを心配され、怒られると思っていた。しかし、阿弥が凪々に掛けた言葉は理解し難く、その真意が理解できない。凪々も思わず疑問の声を零していた。

 

 「阿弥、先生…?」

 「今一度、改めねばな。果たして、君は「恵める生命」に値する存在か否か…」

 

 

 

 

 

 

 

 学の招集に応じてくれたのは、先の任務で借りを作ってしまったアレクサンダーだけではない。彼の到着と同時に、そこには伊藤カナエの姿もあった。

 

 「学ちゃん、お待たせ」

 「協力してくれてありがとう、お姉さん。それで……何か分かったこと、あるかな?」

 

 アレクサンダーとカナエの二人には、先んじて入手してほしい情報だけを掻い摘んでオーダーしていた。とにかく時間が惜しかったため、具体的な詳細は後ほど口頭で伝える予定である。

 

 「黒いワンボックスカーについては、学ちゃんが正確に車番を記憶してくれたおかげで、所有者の情報は入手成功。安部義信あべよしのぶ。この近くの孤児院で院長を務めてるそうよ」

 「孤児院の院長さん?」

 「でもね……その孤児院は、もう何ヵ月か前に閉じちゃったみたいで、今じゃ蛻の殻になってたよ。調べに寄れば、施設の設備と生活環境を一新するために引っ越しちゃったみたい」

 

 ということは、その引っ越し先で改めて孤児院を開いているはずだ。しかし、カナエが集めてくれた情報はここからキナ臭くなっていく。

 

 「だけど、孤児院として機能してる引っ越し先を見つけることは……出来なかった」

 「出来なかった? お姉さん、それって…どういう…」

 「義信院長も消息不明。だけど一番の問題は、引っ越し当時に院内に残ってたはずの子供たちの記録も、一人残さず抹消されてること。さすがに怪しいと思わない?」

 

 ここで、カナエの持ってきた情報に一つの区切りがついたと見定めたアレクサンダーが、複数の戸籍抄本と顔写真を広げる。容姿と年齢はバラバラだったが、性別は全て女性。対して、名前は漢字表記こそ違えども全ての読み仮名が一致している。

 

 「捜し出せる限りの「くろさきなな」って人を見つけてきたけど……。どう? この中にいる?」

 「…………」

 「まぁ、さすがにオトナの人は違うかなぁ♪ 同い年くらいでさ、お目当ての女の子は」

 「いない」

 

 アレクサンダーの発言を遮るようにして一蹴する。捜し出せるだけの「くろさきなな」という女性を片っ端から集めたというのに、学が知っている「くろさきなな」は、その中に含まれていなかった。

 

 「偽名を使われた…? いや…、あの時の黒崎さんに偽名を名乗るメリットはなかったはず…」

 「学ちゃん。この世の中、素性を知られて困る人は山ほどいるわ。それに、引っ越し先で孤児院を再開していないことは掴んでいるけど……今どうなっているのか、その様子までは確認できていない」

 「つ・ま・り! カナ姉の情報をまとめると、その「引っ越し先」が怪しさ満点ってわけだね♪ 住所は分かってるんでしょ?」

 「当然。それで、学ちゃんはどうするの?」

 

 もしも、先の任務でアレクサンダーに貸しを作れていなかったら。

 

 もしも、たまたま顔を合わせただけのヘルトから薬を貰っていなかったら。

 

 もしも、薬の効果が切れた後で凪々を連れ去られていたら。

 

 もしも、黒いワンボックスカーの車番を即座に記憶できていなかったら。

 

 これまでのことが全て一つに結び付くなら、謎の殺人事件を追っているヘルトとも合流できる可能性が高い。そうなれば、現在I.S.Mのボスがヘルトにだけ下している指令にも自然と直結する。途中からI.S.Mの上位三人が独断で関わってきたとしても、きっと問題視されることはないはずだ。

 

 「その引っ越し先に乗り込むよ。僕の身に今まで何があったのか、それまでの間に話してあげる」

 

 たった数時間、一緒に遊んでいただけの間柄。そんな少女との繋がりなど、本来なら即座に断ち切ってしまうべきだ。しかし、ここまで踏み込んでしまったからには、もう後退などありえない。複数の点が一本の線となって結び付き始めた今、凪々の周囲を取り囲む環境を暴くまで、学の任務は終わらない。

※今作はボイスドラマ「それは何たるエゴイズム」二次創作小説です。

※本家(公式)から創作の許可はいただいていますが、本家の物語とは一切の関係がありません

※あくまでも好き勝手に書いている素人の作品という点をご理解ください。

 

 

 あちこちに半壊した建物が並ぶ荒野。その近場に生い茂っている林の中で、学はスナイパーライフルを構えつつ手元の通信機のスイッチを入れた。

 

 「あーあー。マイクテス、マイクテス。こちら白桧学。黒崎隊員、現在地を報告せよ。オーバー」

 『メーデー、メーデー。こちら黒崎凪々。現在F4地点にある建物の二階に潜伏中。白桧隊長、そろそろ弾切れを起こしそうです、助けてください。オーバー』

 「了解。そこから東に行ったF6地点に弾薬保管庫がある。敵陣に気付かれないよう慎重に移動し」

 『わーッ!! 撃たれてるぅ! 見つかったぁあああ!!!!』

 

 通信途中、音割れを起こすほどの絶叫と同時にバラララララッという射撃音が伝わった。こうなってしまっては救出する術も時間もない。学の視界に敗北を意味する英文字が表示されるより先に、その頭に装着していたVR機器を取り外す。隣りの椅子には、いまだにVR機器を装着したまま手足をバタつかせている凪々の姿があった。

 

 「あれ? 何これ動けない。ガメオベラってどういう意味?」

 「それゲームオーバーって読むんだよ」

 

 単純な英語をローマ字で読み上げる凪々に少しだけ呆れながら、学はVRサバイバルゲームからログアウトする。ここは近所のゲームセンター。凪々に対して本物の銃器を向けてしまう最悪の出会いをしてしまった学だったが、自身の素性を誤魔化すために連れ込んだ救いのアミューズメントパークで、無事に窮地を脱していた。

 

 「あちゃぁ、負けちゃったんだ。でも楽しかったぁ!」

 「僕は敗北なんて認めたくなかったから、ゲームオーバー画面に移る前に降りたけどね。イコール、まだ負けてないッ」

 

 バーチャルのサバゲーを楽しんだ様子の凪々とは対照的に、学はギリリと下唇を噛みながら唸っている。ちなみに学の発言は小さな独り言に留まったため、凪々には聞こえていない。というより、あちこちのゲーム機器に目を奪われて学には気が回っていなかった。

 

 「黒崎さん、ゲームセンターは初めてなんだっけ?」

 「うん! 名前だけ聞いたことあったけど、入ったことなかったの! 音がすっごいうるさかったけど、すっごい楽しいところだねぇ!」

 「まぁ、この騒音は初めての人には大きすぎる、かな」

 

 自分の素性を誤魔化すためとはいえ、既に三時間も付き合ってしまった。凪々にも帰るべき場所があるだろうし、学も引き上げたいと思っていた手前、ここらが潮時かもしれない。

 

 「黒崎さん、そろそろ帰らなくちゃ」

 「えー、もうちょっと遊んでみたぁい…」

 「そんなこと言われても、僕にだって都合が……。ほら、外にアイスの屋台があったからさ? それ食べながら帰ろうよ」

 「アイス…?」

 

 凪々の興味が、ゲームセンターからアイスに移る。それは好き嫌いの感情というよりは、まだ見ぬ未知の領域に対する興味や好奇心に近い眼差しに思えた。

 

 「……もしかして、アイスも知らない…とか?」

 「名前だけ知ってる! 甘くて冷たい食べ物でしょ!」

 「じゃあ…、その隣りの屋台のクレープとかは?」

 「クレー…プ…?」

 

 こちらに関しては名前も知らない様子だった。先ほども「GAMEOVERゲームオーバー」を「GAMEOVERガメオベラ」と読んだ辺り、世間や常識の無知さ加減が普通ではない。ゲームセンターに行ったことがないと聞かされた時は、教育に厳しい家柄の育ちと認識していたが、どうやら教育環境そのものに問題があるというか、特殊な状況に思えてしまう。

 

 「食べてみたい! アイスもクレープも!」

 「……わかったよ。でもゲームで遊んだ分、持ち合わせも乏しいから、どっちか一つだけ」

 「えー!」

 「また次の機会にご馳走してあげるから、とりあえず今日は帰ろうよ。ほら、どっち食べるの」

 

 アイスかクレープか。その問い掛けに対する返答は、すぐに来なかった。不思議に思った学が凪々の様子を改めると、当人の表情は豆鉄砲を食らった鳩のようだった。

 

 「…? どうしたの?」

 「……次の機会…? また、遊んでくれるの?」

 

 別に何かを意図したつもりの発言ではない。が、確かに今の口振りでは「また遊ぶ約束」を取り付けてしまったようなものである。もちろん学にそのつもりなど毛頭ない。むしろ自分の素性を明かしては面倒なため、凪々と関わるのは今日が最初で最後のはずだった。

 

 「あー……、そう…だね。また遊ぶ時も、あるかもしれないし…」

 

 嘘を吐くのも歯切れが悪い。そうなってしまったのは、凪々の表情が本当に嬉しそうだったからだ。妙に調子が狂わされそうな状況に困惑しながら、学は凪々の手を引いてゲームセンターを出る。

 

 その直後。ゲームセンターの外に出た学は、忘れかけていた現実へと一気に引き戻されてしまった。

 

 「う…ッ」

 「…? 白桧くん、どうしたの?」

 「……な、何でもない…よ…」

 

 ヘルトに渡されたタブレット菓子タイプの薬は、まだ効果が持続していた。年が若いせいか、それとも体質に合っていたのか。学の視力には、既に払拭されたはずの血痕を視認する力がまだ残されている。事故か事件かまでは読み取れないが、何気なく生活している日常の中にも流血沙汰がある現実を突き付けられ、先ほどまでの楽しかった時間を台無しにされたような気分に陥った。

 

 「…………」

 「白桧くん、ホントに大丈夫?」

 「…うん」

 

 たった今、自分自身が抱いた素直な感情に驚愕し、正気を疑う。楽しい時間を台無しにされた。確かに、そう思った。少し大げさに表現するなら、動揺さえしてしまいそうだ。

 

 「(そっか…。何だかんだで、僕も楽しんでたのか…。何もかもが初心者で、足を引っ張るだけの黒崎さんと、単純なゲームで遊んでただけなのに…)」

 

 ゲームセンターを出る際に自然と繋いでしまった凪々の手を、今一度キュッと握り直す。さてどちらの屋台に向かおうかと顔を上げた……その時だった。

 

 学と凪々。そして二つの屋台。その道筋を断ち切るかのように、真っ黒のワンボックスカーが荒々しい運転で近付き、二人の目の前で急停止した。中から黒いスーツを着た四人の男たちが慌ただしく飛び出してくると、一目散に凪々の傍へと駆け寄ってくる。

 

 「黒崎さん! やっと見つけた…ッ」

 「え…、ぁ…」

 「勝手に施設を抜け出して…。阿弥先生も心配していましたよ」

 「…………」

 「さぁ、帰りましょう。ここに居てはいけません」

 「……はい…。わかりました…」

 

 男たちの手によって、ワンボックスカーに連れて行かれようとしている凪々。目の前の急展開に呆然とするしかない学は、いまだに凪々と手を繋ぎっ放しでいることさえ忘れているようだ。

 

 「君は、黒崎さんのお友達かい?」

 

 四人の内の一人が学に問い掛けた。そのタイミングで学と凪々の手も離れてしまい、いよいよ凪々が連れて行かれてしまった。そのままワンボックスカーの中へと姿が消えていく。

 

 「……いえ…、さっき会ったばかり…です」

 「そうか。もう会うこともないだろうし、あの子のことは忘れてしまいなさい」

 

 そう言い残すと、男はワンボックスカーの運転席へと戻っていった。他の三人も既に乗車しており、ワンボックスカーはこの場に停止した時と同じような荒さで急発進し、この場を走り去っていく。その刹那、窓越しに見えた凪々は学を見据えており、何処か寂しそうな表情を浮かべながらも、笑っていたような気がした。

 

 「…………」

 

 何はともあれ、これで面倒事が片付いた。自身の素性を隠すために、学も凪々と関わるのは今日限りにすると決めていた。凪々を取り巻く環境の詳細など知ったことではないが、保護者らしき大人たちが迎えに来て、勝手に引き取ってくれたのは喜ばしい。

 

 喜ばしい、はずなのに……。学は凪々のために行動する決意に至り、ポケットからスマートフォンを取り出した。

 

 「……あーぁ…。何か、もっと面倒なことになっちゃった気がするなぁ…」

 

 周囲の人間には絶対に気付くことが出来ず、それでいて尚且つ、他の誰でもない学にしか気付くことが出来ない事態が発生していた。それは同時に、現状の「凪々を放っておくわけにはいかない事態」の発生をも意味している。スマートフォンを操作しながら、学は先ほどの大人たちの容姿を思い返した。

 

 

 

 黒い生地だったにもかかわらず、しっかりと視認できるほど「大量の血痕が付着したスーツ」が意味していることを思考するために。

 

 

 

 ヘルトから貰った薬の効果が持続していたことに初めて感謝しながら、スマートフォンの着信ボタンをタップする。ボスからの指令に従う任務とは別に、個人的な都合による独自ミッションが始まった。

 

 「あ…もしもし、お兄さん? 早速なんだけど、一つ頼まれてくれないかなぁ…」

 

 ヘルトと出くわす前の通話で、彼は確かに言っていた。何かあったら連絡して、と。

※今作はボイスドラマ「それは何たるエゴイズム」二次創作小説です。

※本家(公式)から創作の許可はいただいていますが、本家の物語とは一切の関係がありません

※あくまでも好き勝手に書いている素人の作品という点をご理解ください。

 

 

 アンドリュー・レイズには、何があっても守らなければならないものがあった。それが何なのか、詳細を具体的に知っている者は圧倒的に少ないが、まず間違いなくUnlimitedのボスは承知している。アンドリュー自身が何ものにも代えられないほど守らなければならないものの安全を保障しているのが、そのUnlimitedだからだ。アンドリューの大切なものをUnlimitedが守る代わりに、これまでのアンドリューはUnlimitedのために命懸けで尽くしてきた。

 

 にもかかわらず、裏切った。

 

 アンドリューが、ではなく、Unlimitedが。

 

 「さすがに心が痛むのかい? あちらが先に君を騙していたとはいえ、かつての仲間たちが襲撃されていく様子を眺めるというのは」

 

 アンドリューに握手を求めた海良だったが、アンドリューはその手を取らなかった。すぐ隣りに立っている海良には視線を向けず、とある暗部組織の襲撃班によって壊滅していくUnlimitedの様子が映し出されたモニターだけを、ただ黙って眺めている。

 

 「裏切者のUnlimitedに代わって、今度からは我々が君の大切なものを守らせてもらうよ。その代わりに、今度からは我々のために働いてもらいたい。Unlimitedとは異なる仕事を与えてしまうかもしれないが、まぁ慣れるまでの辛抱だと思ってほしい」

 「なら、そろそろ教えてくれてもいいんじゃねぇのか?」

 

 ここで、ようやくアンドリューが口を開いた。しかし、相変わらず視線はモニターに向けられたままだ。Unlimitedが潰されていく様子を眺めていながらも、しっかりと海良の言葉は届いていたらしい。

 

 「……教えてほしい、というと……何についてかな?」

 「今の俺は、自分の就職先を訊かれたら何も答えられねぇ状況だ。新たに命を預けることになるなら、組織の名前くらい教えてくれてもいいんじゃねぇのか?」

 

 ここで、ようやくアンドリューが視線の先を変える。目の前のモニターではなく、隣りに立っている海良の顔に。

 

 「俺たちは、もう仲間なんだろ?」

 「………あっははは、これは失礼した。言われてみれば、まだ我々の組織名を教えていなかったね。こちらの素性を明かすよりも先に、君の守るべきものが危機に瀕している状況を伝えてしまったから、今の今まで名乗るタイミングを逃していたよ」

 

 白髪混じりの黒い短髪をガシガシと掻きながら、申し訳なさそうな苦笑を浮かべる海良。灰色のスーツから覗いてる赤色のネクタイに……正確には、自身の胸元に手を添えるようにして、アンドリューを迎え入れた組織の名前を初めて口にした。

 

 「今日から君は「Legnaレグナ」の一員だ。それが我々の所属する組織だよ」

 「……レグナ…」

 「他に質問はあるかい? 知っておきたいことがあるなら教えてあげよう。尤も、私の知っている範囲に限られるけどね」

 「必要ねぇよ。それだけ分かりゃあ十分だ」

 

 そういうと、アンドリューは海良から視線を外す。否、海良に背中を見せる形で、この部屋を出ていく様子を見せた。

 

 「おや、もうモニターと睨めっこする時間も終わりかい?」

 「俺にとってUnlimitedは、もう縁を切った組織だ。これ以上そこで眺めてることに意味はねぇよ」

 「ふむ、それもそうか。未練を引きずられても、今度は我々が困ってしまうからね。ところで、これから何処かへお出掛けかい?」

 「お前らが用意してくれた自室に戻って寝るだけだ……、つーか…俺が何処で何しようが勝手だろ」

 「はは、それもそうだったね。これは失礼した」

 「…ふん」

 

 

 

 

 

 

 

 アンドリューが加わったLegnaという暗部組織の拠点は、何処にでもあるような平凡な施設の地下にあった。先ほどのモニター室を出て長い廊下を歩き続けているが、外の様子を確認できる窓ガラスが一枚も見受けられない。が、そもそも地下なのだから仕方がない。地上の階層で働いている者たちは、自分たちの職場の地下に闇世界の住人が息を潜めていることを知っているのだろうか。

 

 「(まぁ、俺の知ったこっちゃねぇがな)」

 

 そんなことを考えながら、アンドリューは自分に与えられた待機用の自室に到着し……たものの、そこには入らずに廊下を進み続ける。彼の目的は自室に戻って寝ることではなかった。

 

 「(えーっと……、ここか…? 拠点が広すぎるってのも問題かもなぁ。迷っちまいそうで面倒くせぇ…)」

 

 目星を付けていた部屋を見つけて入室する。その部屋には、一般家庭で使われる洗濯機の中でも大型サイズほどの精密機械が壁に沿ってズラリと並んでおり、部屋に入って真正面に位置する壁の一面は、特殊性のガラスで覆われていた。ガラスの向こうを覗いてみると、ドーム型に設計された実験場のようなものが広がっており、それを十メートルほどの高さから見下ろせるようになっている。

 

 しかしアンドリューの目的はそこに在らず。シェルターにも見えるドーム型の実験場のようなものも、大型の家庭用洗濯機モドキの精密機械も無視して、部屋の真ん中に置かれたデスクの上に散らばっている数枚の書類に視線を向けた。一枚一枚に手を伸ばし、内容を確認していく。

 

 と、ここでアンドリューの持つスマートフォンが着信を知らせる振動を起こした。目の前の書類を確認しながら、頭に被っているパーカーの中にスマートフォンを放り込む形で、アンドリューはUnlimitedのリンからの着信に応答し、会話を始める。

 

 「何の用だ」

 『良い度胸ね。こっちはあちこち一斉に襲撃されて、やっと雲隠れ出来たっていうのに……。開口一番で知らばっくれる気?』

 「襲撃されるリスクも想定してなかったってか? 俺みてぇな野郎をスパイに送り込む作戦なら、裏切られる演出も視野に入れとけってんだよ」

 『はいッ、暴露キターッ! よくもUnlimitedの拠点を流出させたわねッ、この裏切者!』

 「うるせぇなぁ…。パーカーん中で響くだろうが…」

 

 ここに至るまでの経緯を説明すると、以下の流れになる。

 

 先ほどの海良という男が、任務を終えたばかりのアンドリューと街中で出会ったことから全てが始まった。最初こそ相手にしなかったアンドリューだったが、海良が「Unlimitedに守らせている大切なものが脅かされている」という言葉には、さすがに立ち止まらずにはいられなかった。

 

 アンドリューが守りたいと思っているものの安全を約束する代わりに、Unlimitedの下で働いてもらう。それがUnlimitedとアンドリューを繋いでいる鎖の制約である。にもかかわらず、海良が言うには「Unlimitedはアンドリューとの約束を破っている」と明言したのだ。

 

 『それで、どうだったの?』

 「デタラメも甚だしいな。仲間になったフリして潜入し、ここらに残ってる書類やデータ、資料なんかを片っ端から洗っちゃいるが……。Unlimitedの裏切りを確定させる正確なモンは何一つとして出てきやしねぇ」

 『おそらくだけど、アンドリュー・レイズを仲間に引き入れるための嘘八百。もしくはUnlimitedそのものを潰すための法螺だった、という感じかしらね』

 「どっちにしろ、俺を騙したことに変わりねぇな……。まぁ、最初っから気付いてたけどよ」

 

 海良の言葉に初めは狼狽えてしまったアンドリューだったが、すぐに冷静さを取り戻している。Unlimitedが自分を裏切ることが何を意味するのか、そこに何のメリットが生まれるのか。それらを考えた結果、彼なりに「Unlimitedは裏切っていない」という結論を導き出していた。

 

 では、なぜ海良はそんな嘘を吐いたのか。その真意を探るため、第一接触があったアンドリューをそのままスパイとして利用し、敵組織の目的を暴く作戦に移行している。その過程で、アンドリューが敵組織からの信用を得るためにUnlimitedの拠点をガチで流してしまうのは、さすがのリンたちも想定外だった。

 

 「襲撃されたっつっても、どうせ死人なんざ出ちゃいねぇんだろ? Unlimitedの強さを知ってるから、あえてマジの情報を流したんだろうが。そっちを信用してるからこその裏切りだっつーの」

 『………負傷者は出たわ…』

 「あ? そりゃ無傷で済むわきゃねぇよな。つーか無傷で済んでたら、逆に怪しまれんだろ。自作自演でもいいから、何人か半殺しに」

 『あんたの相棒、病院送りよ』

 「……………………」

 

 手元の書類を漁っていたアンドリューの手が止まる。リンは今、アンドリューの裏切り作戦によって回が負傷した事実を伝えた。

 

 『彼の不注意だった。それ以外の何ものでもない』

 「…………」

 『でも、誰かさんがこんな作戦の中であんな手段を取らなければ、こんなことにはならなかったかもしれないわね』

 「……チッ…」

 『それで? あんたに伝わっていた情報が嘘だったことは確定したわけだけど。肝心な敵組織さんの目的は不明確なまま? そもそも、何て名前の組織なわけ?』

 「…Legna、だとよ」

 『レグナ…? 確か、イタリア語で「薪」と訳せる単語ね。でも、どういう意味かしら…』

 「あ」

 

 リンの言葉を遮るように、アンドリューが何かに気付いて声を上げた。何があったのかを訊ねるよりも先に、アンドリューの方から現状報告が上がる。

 

 「監視カメラとマイク見つけた。今のやり取り、ぜーんぶ筒抜けかもな」

 『はぁあああッ!!? 対処してなかったわけ!? そんなの、いの一番に警戒するところでしょうがッ!』

 「声がデケェんだよッ、馬鹿! パーカーん中で響くっつってんだろぉが!」

 『そんなところに放り込んで通話してるあんたが悪い! そんなことより、今すぐ逃げなさーい!』

まだ寝台列車とは縁のない杉山あつしです。

夜更かししちゃう自信あるけどなぁ(笑)

 

本日、ボイスドラマの収録でスタジオに行ってきました。

あまり演る機会のないキャラクターだったので、とても新鮮でした♪

 

 

前回の記事と同じく、現場の方に撮影をお願いして撮ってもらいました(笑)

その前回の撮影分も含めて、これらは年賀状候補であります!

 

ま、その件は置いておいて……。ていうか写メの目線、若干ハズレてね?

今日の収録に関して嬉しいことがありました♪

 

以下ところどころで詳細は伏せますが、今回の収録にもオーディションがあったのですが、正直に言って勝ち取れる自信のないキャラクターでした。

記事の冒頭にも記載した、演る機会のない、というのはその点が大きいですね(汗)

 

でも今回のオーディションで選ばれて、今日が収録。

どういうところが高評価だったのかなぁ、と思っていたら……意外とあっさり理由が発覚!

 

どうやら今回の収録とは別件の収録でお世話になった方が、今回の収録作品のオーディション時に僕のことを推してくれたのだとか!

まったく異なる作品だったのに、作者様同士の繋がりから配役をいただけました……。

 

これ、ものすっごく嬉しいことですッ。

今後も色んな作品のオーディションに飛び込んでいこうとする活力にもありましたねッ。

 

ここまで記事を読んでいただいて、日本語がおかしくて状況を把握できない方。それ正解。

嬉し過ぎて文字に表せられてないだけです。語彙力、皆無。

イワシと聞くと、魚の鰯より知り合いの顔が浮んでくる杉山あつしです。

周囲から呼ばれてる愛称で「いわし」って人がいるんですよぉ(笑)

 

本日とあるWebCM案件の収録のため、都心の方まで出向いてきました!

スタジオではなかったのですが、その収録風景がこちらになります♪

 

※撮影には許可をいただき、現場のスタッフさんにも手伝っていただきました。

 

会議室の一角で、毛布を使っての防音設備ッ。

この録り方、実は少しだけ馴染みがあり……こっそり「ふふ」ってしてました(笑)

 

世の中には宅録というものがあるので、こう見えても音質は問題ないものと思われます!

が、こういう日に限って外で道路工事が行われている始末! ちょっとだけ四苦八苦しましたね(笑)

 

完成品は年内に公開する予定とのことです。僕自身、今から楽しみにしていますッ!

麻婆豆腐が好きな杉山あつしです。

ご飯と一緒にグッチャグチャに混ぜて、醤油を掛けるだけでもOK!

 

先ほど放送されたテレビドラマ「キワドい2人-K2- 池袋署刑事課 神崎・黒木に出演させていただきました♪

まぁ、いつものごとく少ぉぉぉしだけなんですけどね(笑)

 

 

今回は2シーンほど関わらせていただきました。

残念ながら、その2つ共ひと目で認識できるほどのものではありませんでしたが……。

 

問題! 何処に映っていたでしょうか♪

 

ヒントは、この記事のタイトル!

あとは……今だけかもしれませんが、僕の個人サイトのTOPかなぁ。

 

ちなみに、もう1つのシーンでは刑事課の人間を演じています。

背景で何かしらの作業をしているエキストラなので、クイズにするほどのことでもないかな(汗)

 

とっても楽しい現場でしたッ。別作品でもいいから、犯人役とか演ってみたいな!

※今作はボイスドラマ「それは何たるエゴイズム」二次創作小説です。

※本家(公式)から創作の許可はいただいていますが、本家の物語とは一切の関係がありません

※あくまでも好き勝手に書いている素人の作品という点をご理解ください。

 

 

 ヘルトに分けてもらった、払拭後の血痕を視覚化させることが出来るタブレット菓子は、その効果が数時間にも及ぶという。体質によって持続時間が大きく変わるようだが、後遺症が残るような影響は一切ないらしい。しかし、別の意味での後遺症は残ってしまいそうだった。

 

 「ヘルトお姉さん…。この薬の効果、早く切れないかなぁ…」

 「まぁ、最初の内はショックよね。普段から何気なく暮らしてる日常の中に隠された、目を覆いたくなるような事件の痕跡を見せつけられると」

 

 路地裏から出てきた二人は、何も知らない一般人の行き交う町中を歩いていた。傍から見れば、ヘルトも学も周囲の人々も、何一つとして変わった様子は見られない。ただ、ヘルトと学にだけ見えている世界が異なっていた。

 

 道路に残る、何かが引きずられたような掠れ気味の血痕と固まった血溜まり。ガードレールに付着した、塗りたてのペンキのような赤い染み。お店の外壁に残された細かい傷をなぞるように、意味深に赤黒い彩りが加えられているのだ。

 

 「安心しなさい。あれらは解決済みの事件ばかりよ。道路に残ってる方は、きっと鳥や野良猫による事故のものも含まれてるんでしょうね」

 「あれが見えてるのは、今の僕たちだけ……。何も知らずに素通りしていく人たちを見てると、スプラッターな世界に迷い込んだみたいな錯覚が……」

 「効果が切れるまでの辛抱よ。ワタシはもう少し調べるつもりだから、また後で服用しなくちゃならないけど」

 「……効果の持続時間は体質によって変わるって話でしたけど…、平均的に、あとどれくらいですか…?」

 「さっき食べたばかりだから、二時間から三時間は続くんじゃないかしら?」

 「……ゥ…ヴォァ…」

 

 低い呻き声を上げてゲンナリする。かつての事件や事故の痕跡があちこちに見えている世界で、周囲の人々がそれに気付かず暮らしている光景。学は、この視界が数時間も続いてしまう現状に、好奇心でヘルトの入っていった路地裏に踏み込んでしまったことを後悔していた。

 

 「それじゃあね。皆の手を煩わせてしまうようなことになる前に、手早く調査を終わらせてくるわ」

 「はい、お疲れ様です」

 

 学としても、最初に路地裏で見せつけられた痕跡が示す事件に関わりたいとは思わない。あんなに狭い場所で複数人が殺害された事実。それも、つい最近だ。悪を許さないヘルトなら致し方ないが、生に執着している学ならば、不必要な手出しは絶対に避けたいところ。

 

 逆に言えば、絶対に面倒事が起こらないであろう案件には、自ら手を伸ばしてもいいと思っていた。

 

 「ヘルトお姉さん、もう行っちゃいましたよ。そろそろ出てきたらどうなんですか?」

 

 学の視線は、背中を向けて去っていくヘルトに向けられたまま。しかし学の声は、背後に隠れているであろう人物に向けて掛けられている。学の言葉が自分に向けられていると察したのか、ザリッ、と、明らかに動揺したような足音が聞こえてきた。

 

 「ヘルトお姉さんの入っていった路地裏に僕が踏み込んでから、ずっと追い掛けてきていましたよね? 路地裏を出た時から、ヘルトお姉さんと別れた今に至るまで、ずーっと」

 「…………」

 「生憎と、気配には敏感なんです。ヘルトお姉さんみたいに、敵意や悪意に限定して気を張っているわけではありませんので」

 

 ポケットに忍ばせていた小型の拳銃に手を添える。学の容姿から、その形状はモデルガンのようにしか見えないだろうが、正真正銘、上から支給された立派な武器である。だが引き金には指を掛けない。

 

 ヘルトは、ヘルトと学を尾行し続けていた何者かの存在に気付いていなかった。学に背後を取られた時と同様、そこに敵意がなかったからだ。そして、それは今も変わらない。ヘルトと別れて学だけになった今でも、背後の人物は敵意の類いを向けていないのだ。

 

 「(でも、何らかの目的があって尾行していた事実に変わりはない…。この拳銃は、脅す程度でいい。実際に撃つ必要はない…)」

 

 警戒しながらも冷静に、ポケットの中からモデルガン風の拳銃を取り出した学は、ゆっくりと背後を振り返る。そこには、既に隠れている必要が無くなったと判断したのか、今の今までヘルトと学を尾行していた人物が姿を現していた。

 

 水色のチェック柄が入った白いワンピースに、腰まで届く長い黒髪を伸ばした少女。頭の上から二本のアホ毛をピョンと揺らしながら、黒崎凪々が苦笑いを浮かべて頬を掻く。

 

 「あー、見つかっちゃったぁ…。へへへ」

 「……は…?」

 

 警戒しながら拳銃を構えた学の方が拍子抜けする。予想していた人物と、大きく掛け離れた存在が立っていたからだ。

 

 「(女の、子…? 敵意や悪意は感じなかったけど、てっきり屈強そうな見た目の男とか、そういったのが立ってると思ったのに…)」

 「ねぇねぇ。それ、なぁに?」

 「へ?」

 「拳銃? 何して遊んでるの?」

 「え、ぁ…あぁ…」

 

 その発言から、この子からは裏社会とは一切の関係がない雰囲気が感じられる。非常にマズい。何の関係もない一般人に、自分たちの素性を知られるようなことがあってはI.S.M全体に何らかの影響を及ぼしかねない。

 

 「えーっと……。サ…、サバゲー…的な」

 「さばげー?」

 「サバイバルゲームだよ。ほら、知らない? エアガンとかBB弾とかで銃撃し合って戦う遊びだよッ。意外と日本生まれなんだからッ、この競技!」

 

 冷や汗を浮かべながら苦しい言い訳を繰り出す学と、学の言っていることが理解できない様子だが、しっかりと聞き耳を立ててくれている凪々。はたして学は、この窮地を脱することが出来るのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 一方。表社会の光が届かない、裏社会の闇の中。

 

 こちらでは本物の銃撃戦が繰り広げられており、けたたましい発砲音が鼓膜を刺激し、あちこちに跳弾や流れ弾をバラ撒いていた。その中で、正確に標的を狙って放たれた弾丸が、ターゲットである肉谷回にくやかいの背中を撃ち抜いていく。

 

 「うぐッ、あああぁあッ!!」


 得物の肉切り包丁を取り落とし、膝から崩れて地面に倒れ込む……前に、同じUnlimitedに所属しているリンが回の体を受け止め、そのまま敵の死角となる物陰まで引きずっていった。

 「大丈夫?」
 「……急所は、外れています…。悪運に守られたみたいで…」
 「待ってて。下部の小隊に連絡して病院まで運ばせるわ。ここで戦線離脱よ」
 「申し訳ありません」

 こうして隠れている今も、物陰の外ではUnlimitedの下部に所属しているメンバーが突然の襲撃者と交戦している。別の小隊を手配して回を逃がそうと、手早くスマホを操作しているリンの傍らで、浅い呼吸を繰り返しながら回が訊ねた。

 「ここ以外の、拠点や隠れ家も……同じような襲撃に、遭っている可能性が」
 「そうみたいね。さっきから上手く連絡が取れない。ここと同じで、きっと手一杯なのかも」

 そうなってしまえば、リン自らが回を外まで運ばなくてはならない。あらかじめ外に待機させている下部組織がいるため、引き渡しさえ済んでしまえば事前に連絡が取り合えなくとも何の問題もなかった。

 「(それにしても妙ね…。各地に拠点を構えてたUnlimitedが一斉に狙われるだなんて……。もしかしてI.S.Mが……いや、それはありえない…。ヘルトなら、もっと正々堂々とぶつかってくるはず)」

 何より大前提、複数の拠点や隠れ家が一度にバレて襲撃されること自体がおかしかった。このUnlimitedの内情を詳しく知っている者が、現在の襲撃に関与している何者かに情報を流したとしか思えない。つまり、スパイや裏切り者が紛れ込んでいた可能性を考える方が正しいのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 とある暗部組織の襲撃班が、内通者からの情報を頼りにUnlimitedの拠点を次々と壊わさせることに成功している。その様子を、活動拠点である施設の地下に設けている一室にて、複数のモニター越しに確認している男がいた。灰色のスーツから覗く赤色のネクタイを整えながら、白髪混じりの黒い短髪をサッと掻き上げて、久々津海良くぐつかいらは不敵な笑みを浮かべている。

 

 「素晴らしい。こうも容易く一掃することが出来るとは…。君からの情報を信じて正解だったよ」

 

 海良は、海良の真横に立って一緒にモニターを眺めている人物に声を掛ける。その人物こそ、海良にUnlimitedの情報を流して拠点を襲撃させたスパイ……否、正式に所属していた者だったことから「裏切り者」という表現が正しいのだろう。

 

 「これで完全に縁を切ることも出来たわけだ。かつて身を置いていたUnlimitedを離れて、我々と行動を共にする覚悟が出来たと見受ける」

 

 返事はなかったが、海良の言葉を否定しているわけでもない。それを肯定の意思と捉えた海良は、モニターから目を離して隣りに立っていた人物に向き合い、握手の右手を差し出す。

 

 「歓迎するよ、アンドリューくん。これで君も、我々の仲間だ」

 

 海良の握手に、アンドリューは応じない。だが海良の姿勢を拒否する態度も示さない。先ほどまで身を置いていたUnlimitedのメンバーたちが襲撃されていく様子が映し出されたモニターを、ただ黙って眺めているだけだった。

※今作はボイスドラマ「それは何たるエゴイズム」二次創作小説です。

※本家(公式)から創作の許可はいただいていますが、本家の物語とは一切の関係がありません

※あくまでも好き勝手に書いている素人の作品という点をご理解ください。

 

 

 床も壁も天井も、全てが真っ白に塗り潰された部屋の中には、これまた質素な寝台が一つだけ。そこに横たわっていた10歳くらいの少女黒崎凪々くろさきななは目を覚まし、上体を起こす。

 

 その小さな背中を覆い隠すほど広く、そして腰元に届くまで長く伸ばした綺麗な黒髪。その頂点には、まるで昆虫の触覚のようなアホ毛がピョンと二本、重力を無視して揺れていた。

 

 眠い目を擦りつつ寝台から立ち上がった凪々は、寝台以外には何も置かれていない真っ白な部屋の扉を開けて、部屋の外へと出ていく。部屋の外に広がっていたのは、学校や病院にあるような長い廊下。その向こうから、金色に染めた短髪と顎ひげが目印の、およそ三十代くらいと思われる男性畔道阿弥あぜみちあみが歩いてくる姿が確認できた。

 

 「あ…。阿弥先生…。おはようございます」

 

 まだ眠そうな顔と声色で挨拶をする凪々。先生と呼ばれた阿弥は歩き去ろうとはせず、そんな凪々の前で立ち止まり、優しく微笑みながら挨拶を返してくれた。

 

 「おはよう、凪々。ぐっすり眠れたかな?」

 「…うーん。まだ眠っていたいです」

 「そうか。だが二度寝や寝坊はいけないよ。起きることが出来たのなら、顔を洗ってきなさい。しっかりと目が覚めるはずだ」

 

 これが凪々の何気ない毎日。何気ない日常。学校のような、病院のような。そんな施設の中で過ごし、先生と呼んでいる阿弥と共に暮らしている。しかし、この施設で暮らしているのは二人だけではなかった。凪々の他にも、同じ年頃の少年少女がたくさんいた。しかし凪々には、一つ気になっていることがある。

 

 「ねぇ、阿弥先生。昨日の夜、また誰か帰っちゃったの?」

 「あぁ、そうだね。名前までは把握できていないが、五人か六人くらいは親御さんのところに帰ったはずだよ」

 「そっか…。ちゃんとお別れしたかったなぁ…」

 「君がこの施設を出た後で、好きなだけ会いに行くと良い。二度と会えなくなったわけじゃないんだ。そんなに悲しそうな顔をする必要はない」

 「……はい。そうですね」

 「さぁ、早く顔を洗ってきなさい。このままでは美味しい朝食が、他の子供たちに食べられてしまうかもしれないよ?」

 

 この施設で暮らしているたくさんの子供たちは、夜の内に、たまに施設を離れていくことがあった。阿弥の口からは「親御さんの家に帰っていった」という説明だけがされている。子供たちが眠っている間の深夜に限って、何の前触れもなく、突然のお別れが訪れるのだ。

 

 しかし、凪々が胸の内に抱えている気になることとは、このことではない。凪々にとって、夜遅くに友達が施設を出て帰っていくことなど、何の疑いも持たない日常だったからだ。阿弥との会話の中でも述べていたように、凪々は友達とお別れの挨拶をしたことがなく、そのため一度だけ、一睡もせずに夜を過ごして、親のいる家に帰っていく友達とお別れの挨拶をしようと試みたことがあった。

 

 にも関わらず、凪々の試みは失敗した。これまでに、この施設から出ていった子供たちは数え切れないほどいるはずなのに、その友達が施設を出て行く姿を一度も見たことがない。

 

 凪々は未だに、その瞬間に立ち会ったことが一度もなかった。

 

 


 

 

 

 

 支給されたスマートフォンで通話をしている白桧学しらべまなぶは、適当な街路樹の根元にランドセルを下ろし、その背中も街路樹に預けて寄り掛かる。学の通話相手はアレクサンダー・クラークだった。

 

 『ほんっとぅにゴメンねぇ。今日の任務、合流できなくて…』

 「仕方ないですよ、そういう日もありますし。結果的に今回だって、ちゃんと達成できたわけですから」

 

 学とアレクサンダーが所属している組織「I.S.Mイズム」は宗教団体である。宗教団体といえば布教活動や勧誘などを主に活動しているものなのだが、今現在のI.S.Mはその活動を「任務」と改めている部分があった。

 

 現在、犯罪集団「Unlimitedアンリミテッド」という闇の組織と、絶賛抗争中なのである。

 

 そのためI.S.Mに身を置いている学やアレクサンダーのもとにはUnlimitedに対する任務が伝わっており、先ほどもその任務の一つを学が片付けてきたところだった。

 

 「今回も適当に逃げ回ってから死角に潜って、一方的に銃器で無双しただけで終わりましたからね」

 『あはは、相変わらずだぁ。でもこの埋め合わせは必ずするから、何かあったら連絡して? 力になるよ』

 「はい。ありがとうございます」

 

 アレクサンダーとの通話を終えた学だったが、正直に言うと、任務絡みで自分から誰かに連絡を入れるビジョンが見えていない。学は、あらゆる戦場で生き残ることを最優先に動く戦法を取るため、非常に頭の回転が早いのだ。何かあったら連絡して、と言われて了承したものの、何かがあってはならないように用意周到に立ち回るため、そもそもその機会が訪れないのである。
 

 「(うーん…、今度なにか奢ってもらおうかなぁ…。それでチャラにしてもらえたらいいけど……)」

 

 アレクサンダーの性格を考えれば、それで済むはずがない。任務以外で頼りにしなければならないこと。何があっただろうか。そんなことを考えながらランドセルを背負い直し、再び歩き始めようとした……その時。

 

 学の視界に、人目に隠れて路地裏へと姿を消していく知り合いの姿が映った。

 

 

 

 

 

 

 

 I.S.Mのボスから支給されたタブレット菓子のような物を一つ噛み砕いた後、ヘルト|ゲーベルは周囲を見渡す。目の前に広がる路地裏の光景には、特別なにか目に止まるようなものなど何もない。

 

 「………ここも酷いわね…」

 

 にも関わらず、その何もない光景に対して「酷い」と称したヘルトの姿に、学は背後から近付いて声を掛ける。

 

 「何が酷いんですか?」

 「……ッ!? あぁ、驚いた…。急に声を掛けたらビックリするでしょ?」

 「あ、すみません。任務が終わったばかりだったので、思わず足音を殺してました」

 

 同じI.S.Mに所属しているヘルトと学にとって、こういった会話も日常茶飯事だ。しかし、ヘルトも口で言うほど驚いてはいないだろう。知らず知らずに背後を取られていたとなれば、ある程度の戦闘態勢を取っていたはずなのだ。

 

 「ヘルトお姉さん。ちなみに、どうして構えなかったんですか? 僕の接近に気付いてなかったんですよね?」

 「確かに気付いてなかったけど、それは悪意や敵意がなかったから気付けなかったのよ。死角から狙われようが背後を取られようが、そこに悪意があるなら目で見て確認する必要もない。相手が行動を起こす前に、こっちが奇襲していたでしょうね」

 

 今回の場合、学がイタズラを目的としてヘルトの背後に近付いていたのなら、きっと気付かれていたのだろう。あくまでも学は、純粋な興味と好奇心でヘルトの背後に近付いていた。悪意も敵意も抱かれずに近付かれては、さすがのヘルトにも気付けない。彼女が向ける敵意は無差別ではないのだから。

 

 「それより、ここで何してるんです? 見たところ、ここには何もないように見えるんですが……」

 「……そうね。今の白桧くんには、何も見えなくて当然よ」

 「…? 今の、僕には…?」

 

 意味深なことを言うヘルトは、口で説明するよりは体感してもらった方が早いと思ったのか、先ほど噛み砕いたばかりのタブレット菓子と同じものを一つ、学にも手渡した。

 

 「目を瞑った状態で噛み砕いてみなさい。口の中で溶け切ったと思ったら、目を開けて周りを見てみるのよ」

 

 そう説明され、その通りにタブレット菓子を噛み砕いてみる。僅か数秒後、閉じていた瞼を開けてみた学の視界には、先ほどまでの路地裏とはまったく異なる世界が広がっていた。

 

 「ーーーッ。な…、何ですか……。これ…」

 「何だと思う? 多分だけど、最初に思い付いたものが正解よ」

 

 例えるならば、殺人現場。先程まで何もなかった路地裏の地面が、両サイドに建っている建物の壁が、あちこちに転がっている数々のゴミが。バケツを引っくり返した後のような大量の血液に染まっていた。

 

 「さっき食べさせたのは、ルミノール反応を視覚化できるタブレットよ。巧妙に証拠を隠滅されてたけど、ワタシたちのボスには通用しない」

 「それじゃあ……この場所で…」

 「えぇ…。つい最近、誰かが殺されてるみたいね。ルミノール反応が示した血液の量から推測して四人……いえ、五人くらいかしら」

 

 こういった現場をヘルトが追っている以上、この事件にはI.S.Mが関わっている。もしかしたら、知らない内にヤバい案件に首を突っ込んでしまったのかもしれない。そう後悔する学だったが、既に何もかもが遅かった。