私は、彼に何度か会ったことがある。
暑い夏、暗い馬房で、馬房の中よりも暗い表情でぼーっと立っている姿。
悲壮感のような、ダークなオーラを撒き散らしていた。
近寄ることも、声をかけることもできなかった。
休養中の早春、ニ風谷(にぶたに)で会った時、彼はご機嫌の様子でファンサービスをしていた。
おそるおそる草を差し出すファンには、優しく草を食んでみせ、一緒に写真に納まり
横柄で乱暴に手を差し伸べるおっさんには、歯をむいて怒ってみせ
私はおちょくられて、Tシャツを噛まれて持ち上げられそうになったwww
そこに居た集団へのファンサービスがだいたい終ったかな・・・?と分かると
彼はさっと別サイドの集団の元へ赴き、またそこでファンサービスを始めた。
別サイドの集団は関係者らしく、カメラを向けられてポーズまで取っていた ( Д ) ゚ ゚
そちらでの「お仕事」が終ると、彼は誰も手の届かない放牧地の中央に行き
ゆっくりと草を食み始めた・・・。
「頭のいい馬」と、以前から知ってはいたが、彼の行動を目の当たりにすると
本当にそうなのだと、感心するしかなかった。
種牡馬として社台ファームに繋養されてから会いに行った時、
彼は、トレードマークの、顔にふぁさっとかかる長めの前髪を、道産子馬のように
パッツンされてて、非常に機嫌が悪かった。
ファンの方向は完全無視、せかせかと歩き回り、馬柵にケンカを売り
砂浴びして身体を汚れ放題にしていた。
「あれ、絶対、前髪切られたせいだよね」と、同行者と笑って話していた。
怪我から約1年ぶりの復帰戦で、「奇跡」の優勝を遂げた ’93年の有馬記念は忘れられない。
なんて馬なんだろう・・・と、思った記憶が、いまも鮮明に残っている。
(もちろん、その夜は儲けたお金で大宴会www)
私が最も愛した馬・・・
トウカイテイオーが、昨日、突然、逝ってしまった。
急性心不全だったようだ。
長く患うような病気でなくてよかった。
現役中も、ずっと怪我で苦しんできた彼だから。
突然逝ってしまうのも、彼らしいのかなと思った。
一つの時代が終った・・・そんな気がした。

