少し前のことですが、8月20日に、DWE関連の、バイリンガル育児フォーラムに参加してきました。
「発達脳科学と第二言語習得学からみたキッズ未来フォーラム」 ~バイリンガルのすすめ~
主催: ワールド・ファミリー バイリンガル サイエンス研究所
(World Family Institue of Bilingual Science)
興味深いことがたくさんあって、全部をまとめるのは大変なので、個人的に特に印象深かったことを列挙します。重要な部分だけを抜粋しているので、前後のつながりがなく、話の流れが見えづらかったらごめんなさい。
第1部:
基調講演「早期英語教育は日本語の発達を妨げるのか?」
大井静雄
・ 英語スピーカーの1/4しかネイティブではない。
→つまり、将来英語を使う相手がネイティブではない可能性はとても高いのだから、完璧な「ペラペラ」英語なんて必要ない。日本人は、完璧なアメリカ英語&イギリス英語に毒されすぎ。重要なのは、コミュニケーションがとれるということ。
・ 「自分が社会の一部である」と認識する幼児期には、言語学習を始めておいた方が良い。
→言語は社会で生きていくためのツールなので、「社会」という概念が出来上がる頃までに、平行して「言語」も始めておくと、拒否反応(アレルギー反応や「英語嫌い」)を最小限にできるし、「英語は社会で必要なものだ」という認識に自然につながるので、モチベーションも維持しやすい。
・ 胎児は24週くらいからママの声が聞こえているので、お腹の中にいる時から英語学習は始まっている。
→英語の歌や、できれば話し声が聞こえていると良い。ママ自身で英語を聞かせるのが難しければ、CDなどでも良い。だからDWEなどはパーフェクト!
・ 幼いときに日本語と英語の両方を取得させようとすると、頭が混乱してどっちもどっちになってしまう、なんていうのは完全なデマ!
→ 日本語と英語の学習に使われる脳回路は異なるため、ごっちゃになることはありえない。むしろ、開通する脳回路が増えるので、言語IQは、バイリンガルの方がモノリンガルよりも高いことが証明されている。世界人口の3/4はバイリンガル環境で育っていて、その人達が混乱してるなんて話、全く聞かないのも大きな証拠。
~私の感想~
1つめの、英語がペラペラである必要は全くない、という点は、私も強く共感します。私は外資系企業に10年以上勤めていますが、社長や役員になる日本人は、英語が「ペラペラ」な人は数えるほどしかいません。ただし、英語で「コミュニケーションをとれる」という点では皆共通しています。ペラペラではないのにコミュニケーションがとれる、というと不思議かもしれませんが、具体的に言うと、
・ 発音は日本語英語で、お世辞でも上手とは言えない
・ 単語も、専門用語以外は簡単な言葉ばかり
・ 話すスピードも遅いので、話す量も決して多くない
・ でも、聞いていて面白い、引き込まれる、内容も深い、濃い
・ 押さえるところは押さえている(言いたいことは伝えられている)
・ Sense of humor (笑いのツボ)が外国人と共有できている
逆に帰国子女で英語ペラペラでも、「この人の話、聞きたいな」と思わせない人はたくさんいます。(自分もそうならないように気をつけないと!)
同時に、外資系に勤めていると、米系企業でも、今ではインドやアジア圏の同僚がたくさんいます。IT部門はインド人やフランス人が多かったりで、正直何を言ってるのか分からないのにすごく活躍している、なんて人も多いです。
ある時、アメリカ人の上司と一緒に、フランス人の社内顧客を相手にvideo conference (テレコン)を行ったときがありました。電話で何回か話したことがある人なので、訛りがすごくあることは知っていましたが、テレコンは電話よりも聞き取りにくいことが多く(たぶん、受話器から遠い、とか、話の流れが自分の予想外の方向に行きやすい、とか、理由は様々だと思いますが)、始める前から、いや~な予測はしてました。で、予想的中。始まったみると、50%聞き取れるかどうか。何を言ってるのかさっぱり分かりません。一対一なら、分かるように聞き返すとかできますが、今回は気の知れたネイティブの上司が一緒なので、そこは私は一歩引いて、上司に任すことに。上司は、気の利いた返答をポンポンしていきます。「あー、やっぱり英語ネイティブだと、すごい訛りでも聞き取れるんだな~」なんて思って安心して聞いてました。で、コンファレンスが終わった後。話の内容は把握しておきたいと思って、上司に別途電話し、「で、結局彼は何を言っていたの?」と聞くと、「私にも分からない!! (I have no idea!!) 笑」と言われました。
厳密に言うと「さっぱり分からない」というのはちょっと言い過ぎで、上司も私もかろうじで分かった一部分のみに限って言えば、その内容はとても共感・尊敬できました(テレコンは、彼のチーム・部下に関する相談でした)。彼が話した内容のほんの数割しか、上司も私も理解できていなかったし、細かいニュアンスは見逃してしまっていただろうけれど、でも真剣に話を聞きたいと思ったし、こちらから歩み寄りたいと思えました。
そんな彼はある一つの大きなチームを率いているトップで、昇進を重ねています。実は彼の上部宛てのメールを何度も読んだことがあるのですが、文法などは変な部分はあるものの、中身はとても深く考え練られていて、「なるほど」と思わせることが多いです。
結局、グローバル社会や外資系企業で活躍するには、結果を出すことは当然として、他に必要なのは、最低限の英語と、コミュニケーション能力=「伝える力・聞いてもらえる力」だと思います。このコミュニケーション能力は、言語に無関係のスキルだと思うので、日本語でも十分鍛えられます。逆に言えば、英語の能力がどんなに高くなっても、コミュニケーション能力は低いまま、ということは容易に起こりえると思います。
だから、親としては、子供に完璧な英語を!と思う気持ちも分かるし、私もどうせ早くから英語に触れるなら、完璧になるに越したことはないけれど、そこだけに引っ張られても、結局将来意味なかった、となってしまえば本末転倒。だから、教授が仰ったことは、改めて肝に銘じて、英語を完璧にすることが目標にならないよう、親として意識し続けなくてはと思いました。
3つめの、24週以降の胎児に、英語をたくさん聞かせると良い、という点に関しても、個人的に興味があります。というのも、今3歳の長女がお腹にいた時期は、たまたま職場で英語より日本語を使っている割合がはるかに高く、また自宅では英語をあまり使っていなかったので、娘はお腹の中で殆ど英語を聞いていないことになります。
一方で、今0歳の長男がお腹にいた時期は、職場で英語が9割以上で、かつプライベートでは娘用のDWEが流れていることがよくあったので、かなりの時間を英語環境で過ごしたことになります。もちろん、生まれてからも、長女が新生児だった頃よりはるかに英語に触れています。
様々な環境的要因や個人的要因もあるため、長女と長男の英語力を一概に比べることはできませんが、この先、二人の英語力の伸び方や興味など、どんな風に違ってくるのか、似ているのか、とても興味深いです。
また最後の、日本語と英語の両方を幼いときに学ぼうとすると混乱するのはデマ!というのも、興味深いです。これは混乱する、混乱しない、どちらの主張も何度も聞いたことがあるので、正直、今回のフォーラムで、「混乱しない」と言われても、そのままそれを100%信じるのはできないのですが、少なくとも、最近は「混乱しない」という研究結果の方をより多く見かける気がするので、自分としても、そっちの考え方に傾きかけてます。
もし本当に混乱しないのであれば、一部の帰国子女が日本語でも英語でも苦戦していた(そしてその後大きくなってきても苦戦する)のは、なぜなのだろう?と改めて疑問に思います。おそらく言語の問題だけではなく、文化的なこと、精神的なこと、色々な環境要因があるので、もしかしたらそれら全てを総合してトラウマ体験のようになってしまっているのかもしれないですが、真相は不明です。バイリンガル育児の研究者達の話を聞いても、帰国子女の苦悩に関して聞くことはほぼありません。誰か、ここらへんを究明してくれる日がくるとスッキリするのですが。
第2部:
基調講演「グローバル化が進む日本の高等教育の現場から」
原田哲男
・ これから日本でもIB(バカロレア教育)が広がっていくだろう。IBが目指す、The IB Learner Profile というのがあり、これらはグローバル社会で必要とされる要素が詰まっている。
→ The IB Learner Profileというのは、
Inquirers / Knowledgable / Thinkers / Communicators / Principled / Open-Minded / Caring / Risk-takers / Balanced / Reflective
(探求する人 / 知識のある人 / 考える人 / コミュニケーションができる人 / 信念をもつ人 / 心を開く人 / 思いやりのある人 / 挑戦する人 / バランスのとれた人 / 振り返ることができる人)
http://www.ibo.org/contentassets/fd82f70643ef4086b7d3f292cc214962/learner-profile-en.pdf
http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/giji/__icsFiles/afieldfile/2015/09/04/1360715_2_2.pdf
・ IBが増える中で、特に注視したいのは英語イマージョン教育(Immersion English Program)。「英語を学ぶ」のではなく「英語で学ぶ」を趣旨とする。
→ 日本にあるIB学校の中には、全てを英語で教えるInternational Schoolもあれば、英語と日本語で一般教科(数学、理科、など)を教える学校もある。例えば、東京学芸大附属高校は、一部を英語、一部を日本語で教えている。詳しくは、文部科学省の国際バカロレア認定校リストを参照。
・ 2020年以降、日本の大学入試の英語が大きく変わる。
→ 読む、話す、聞く、書く、の「4技能」を、民間試験を活用して評価する。評価基準は、ヨーロッパ共通参照枠(The Common European Framework of Reference for Languages = CEFR) を採用し、世界共通の審査水準に基づいて行われる。
~私の感想~
英語イマージョン教育は、私も注目しているテーマなので、紹介されて嬉しかったです。「英語を学ぶ」のではなく「英語で学ぶ」は、我が家の英語教育の軸になる部分なので、この先生の考えに大いに共感できたし、最新の考え方と自分の考え方の乖離が小さいことにホッとしました。
IB教育もとても興味があり、個人的には(子供達が自ら望むのであれば)、日本の義務教育にこだわる必要はないかなと思っています。わかりやすく言えば、我が家の子育ては東大に入れることが目標ではないし、もっと広い視野で見れば、大学合格も、目標の一つであるような、ないような、曖昧な感じです。要は、社会人として独立したときに自ら稼いだり、幸せになる道筋を見つけられる大人になって欲しいので、大学進学を含めて、それが必要なことであればやればいいし、必要でなければやらなくでもいいかな、と。ハーバードに入学したけど、起業したいから退学しました、みたいなのも、個人的には大いにウェルカム。だからこそ、学校に行くことが目的になるような教育に流されないように、親として心を強く持っていたいと思います。
・・・とかっこいいこと、今はいくらでも言えますが、いざ子供が大学進学のタイミングになって「大学行かない」とか言われたら・・・発狂してしまったりして。今は想像することしかできません![]()
第3部:
パネルディスカッション「バイリンガルとは何か?グローバル人材とは何か?」
大井静雄、原田哲男、松原浩一
・ そもそもバイリンガルとは何か。複数の言語を用いてある目的を達成できるのであれば、バイ(マルチ)リンガルと呼べるのではないか。完璧である必要は全くない。
・ 完璧なバイリンガルはほぼ皆無だと思われる。どんなバイリンガルも、ある状況では○○(例えば英語)が得意、ある状況では××(例えば日本語)が得意、など、状況や環境によって前に来る言語が変わる。絵で例えると、
こういう
英語も日本語も同じ大きさの○。
でも実際は、
ある環境ではこう
で、
他の環境ではこう![]()
というような人が殆どであり、どんな状況でも、日本語も英語もパーフェクトです、という人はほぼいない。
・ 幼児期学習は、言語を習得する上で有利であることは明確である(Baker, 2011)。しかし早期学習は外国語習得の十分条件ではない(Murphy 2014)。要は、量と質の両方が大事。言語を習得するには、少なくとも2,500時間触れる必要がある(Hadley, 1993)。中でも言語で人と交流することは大きな近道である(Long, 1996)。そして、内容のある課題をこなすことが重要である(Snow & Brinton, 2017)。
~私の感想~
多くのバイリンガルは、状況によって得意な言語が異なる、ということには大いに共感しました。自分自身がそうだからです。例えば私の場合、渡米したのは中2なので、幼児期の英語に触れた経験がほとんどありません。一方で、中高大では論文や読書などの課題で相当鍛えられたので、一時期は日本語より英語の方が得意?なんて時もありました。
だから、アメリカの新聞や文献(特に自分が専攻した経済や哲学)は、辞書なしで勿論全く問題なく読めるし書ける。日本語より、よっぽどわかりやすい。にも関わらず、今子育てをする中で、英語で子供に話しかけろと言われると、かなり苦戦します。例えば、「ハイハイ」ってなんて言うの? 離乳食ってなんて言うの? 「かさぶた」ってなんて言うの? 辞書で調べないと分からなかった単語が満載です。会社で "How are your children?" とか聞かれると、「あれっ?!『きょうだい仲が良くて助かってます~』って言いたいのに、気の利いた言い方って、なんだっけ?!」とオドオドしてしまいます。単なる単語力だけではなく、「そういう場面での会話の経験値があるかないか」が左右してると思います。
とはいえ、実は私の周りには、日本語も英語も完全に母国語レベルでパーフェクトな人がたくさんいます。でも共通しているのは、幼少期(小学校低学年以前)に海外に住んでいた経験があること。本人(そして親御さん)は、両方の言語を維持・伸ばすために、相当な努力をしたのかもしれません。でも少なくとも、そのくらい小さい時にバイリンガルな環境で育てば(日本語・英語に限らず、他の組み合わせも)、完璧なバイリンガルに限りなく近づくと思うので、その点は先生の考え方と、私の経験値は、若干異なる気がしました。
~ ~ ~ ~
フォーラムの内容はこんな感じでした。
全体を通して、DWEを実践している者としては、安心かつ自信を与えてくれる内容でした。ただ留意しなくてはいけないのは、このフォーラムは、DWEの主体であるワールド・ファミリーが主催であるということ。DWEの考え方と同様の趣旨が紹介されるのは容易に想像できるので、ここで聞いた内容を無条件で信じて安心するのは、やや楽観的な気もしますので、あくまで「参考程度に」心の支えにさせてもらおうと思います。
とはいえ、科学的根拠に基づいた研究結果を中心であったことは確かです。今後、今回のようなフォーラムを定期的に開催していくそうなので、今後にも期待したいと思います。なおIBSのサイトには、今後バイリンガル教育に関連する文献を随時アップしていくそうなので、そちらも注視していきたいです。

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