Malchut(王国)

Malchut(王国)

耳を傾けてくれる人がいてもいなくても。

 

 

道端のあちらこちらで見掛けるこのかわいらしい花。
「ナガミヒナゲシ(長実雛芥子)」と言う名前だと知ったのは、つい最近のことだ。

 

 

ケシ科の一年草または越年生植物で、アルカロイド性の有害物質が含まれており、
害虫や動物から身を守るための植物毒のため、素手で茎を触ったり折ったりすると、
手がかぶれるおそれがあるのだとか。

たまたまインターネットで何かを検索していた時にニュースになっているのを見たのだが、
子どもの頃から見知っていたこの花に毒性があるとは思っていなかった。


小学生低学年くらいの頃、近所にあった企業の独身寮の敷地に、フェンスの隙間から

入り込んでは、シロツメクサを摘んだり、四葉のクローバーを探したりして遊んだ。
平日の昼間なんてほとんど誰もいないようで、しょっちゅう不法侵入していたものの、

見つかって𠮟られたりした記憶はない。

大らかな時代だったので、知っていても見逃されていただけかも知れないが。
ある時、フェンスが修理されて、潜入できなくなってしまったのは大いに残念だった。


私の実家の庭はさほど広くはないものの、特に祖父が植木が好きだったこともあり、
様々な植物が植えられていた。
木製の門扉を開けると階段を10段程度下りるのだが、左手に椿の生垣、

右手に松とその根元には笹。


椿の先には小さな堀があって、その周囲には山椒やミョウガ、ユスラウメ、
はたまた登山が好きだった祖父や父が採ってきたヒマラヤユキノシタなどの

野草が植わっていた。

・・・ただ、おかげで虫が多かったので、私や兄にはいい迷惑だったワケだ。


一方で花は好きだったので、ヒラドツツジやサルビアを見つけては蜜を吸ったり、

オシロイバナの種を集めては、アスファルトでこすって中の白い粉を取り出して、
手の甲に塗って遊んだりしていた。
カタバミやホウセンカは種が弾けるのが面白かったし、ハコベは小さな白い花はかわいいし、

飼っていたセキセイインコが喜んで食べるのでたくさん摘んで帰った。

 

そして私は、花咲か子どもだった。(笑)

あらゆる植物の種を採取してはティッシュにくるんでポケットに突っ込んで帰り、
庭で雑にばら撒いた。

いくつかは発芽して花を咲かせたりしたと思う。

ただ、しょっちゅうそんなことばかりしていたので、いちいちどんな種を持って来たかなんて

覚えているはずもない。

ただ、その内の一つが冒頭のナガミヒナゲシだったのは確かだ。


入学式やお誕生会などで良く飾ってあったお花を作る薄い紙(”お花紙”と言うらしい)の
ような花弁が落ちた後、全体が枯れて茎の先に残った果実の部分は振ると

シャカシャカと音がする。
蓋のようになっている部分を取り除くと、中からサラサラとたくさんの種が出て来る。
検索したところによると、1つの果実には約1600粒の種子が内包されているのだとか。


 

これを景気良く庭にばら撒いたので、翌年からは実家の庭でもこの花を見掛けるようになる。
ただ、繁殖力の強い花らしいが、土が合わなかったのか、ナガミヒナゲシの
花畑になることはなかった。
当時は毒性には全く気付いていなかったので仕方がないが、今同じことをしていたら
随分と迷惑な子どもだったかも知れない。