「これ私の課題なんだよね」とか「〜を目指すことにしたんだ」といった問題、課題、目標系の言葉は意外と日英の意味領域のギャップがあって詰まることが多いと思うので、今日はその辺をカバーしてみたいと思います。

 

まずちょっとおさらいですが、日本語でも「これがやりたいことだ」という柔らかい表現から「これが課題だ」という固い(正確な名詞を使う)表現があるように、英語でも"this is what I want to achieve"もあれば"this is my goal"もあリます。

 

前にも取り上げましたが、我々は英語になるとどうも前者、つまり"what"を使った柔らかい言い回しが出てこない傾向があるようです。"What"を使わないと、exactの名詞(上の場合は「課題」の訳語)を探す必要が出てきて、それで詰まる。例えば、「正にこれに興味があるんだよ」は"This is exactly what I'm interested in"で良いわけですが、これを"This is my..."で言い始めてしまうと、「えーっと『興味を持たせるもの』ってなんだっけ?」と詰まる。なので、"what"に慣れていきましょう。

 

ここまではイントロです。以下、さはさりながらexactの名詞が必要なこともあるので、ツールボックに追加しておきたい表現について書きます。

 

今回追加して頂きたい#1は"agenda"です。おなじみの「議題」ですが、これを一般的な文脈で使うと、「実現したいこと」「意図」みたいな意味になります。ちょっと前になりますが、アメリカの連邦予算問題(government shutdown)の時に、ニュース解説で"DACA is Nancy Pelosi's agenda"というフレーズがありました。これは、下院議長のペローシ(民主)にとってはDACA(移民関連のある措置)が最終的に実現したいことなので、トランプの「壁」建設予算をbargaining chipに使おうとしている、というコンテクストでした。

 

さらに"hidden"をつけて、"hidden agenda"にすると、日本語でもよく出てくる「裏に意図がある」を表現できます。例えば"The new personnel evaluation system looks nice but Management has a hidden agenda of reducing overall personnel expense."(

今度の人事制度は見た目いい感じだが、経営の隠れた意図は人件費削減だ。)など。"Hidden"をつけるにしろ付けないにしろ、ニュアンスとしては「ちょっと奥まっていて戦略的にじわじわ実現していく感じ」を意識すると良いと思います。なので「これが私の実現したいことです!」を爽やかに"This is my agenda!"なんて言うとちょっと違和感ありだと思います。

 

次に「課題」系の言葉ですが、"issue"をもっと使っても良い気がします。"Problem"は「解決すべき問題」という、やや強くて狭いイメージですが、"Issue"は「議論すべきこと」という幅広いイメージで、訳語的には「話題」から「課題」そして「問題」にまで跨がる感じがします。Writefullで両者の頻度を調べてみたところ、Global Warmingでは"problem"と"issue"がほぼ拮抗。Gun Violenceになると"problem"が優位、Immigrationは"issue"が優位でした。「解決すべき問題」として強く認識されているか、あるいは「(まだ解決策は見えないが)話し合うべき問題」と認識されているかの違いなのでしょう。因みに、Genderについては、Gender Equalityだと"Issue”が優位で、Gender Inequalityだと拮抗していました。これも同じ理由でしょう(書いた人のアングルや、書かれた文脈による)。

 

念の為ですが、「これが今季の課題です」の場合は「目標」的な意味を帯びてくるので"issue"だとマズイと思います。「目標」と言えるほどカッチリしてるなら、"goal"とか"objective"にするべきでしょう。

 

最後に動詞"pursue"(追い求める)も意外に使い勝手が良いので是非ツールボックスに入れることをお勧めします。日本語だと「進める」とか「それで行く」あたりになるのでしょうか。先の"agenda"とか"goal"とも相性の良い言葉です(pursue an agenda / pursue a goal)。文献からいくつか例文を拾ってみました(一部短縮しています)。

  • Nearly 200 governments agreed to pursue efforts to limit the temperature increase to 1.5°C above pre-industrial levels. ・・・工業化以前比、1.5度の気温上昇に抑える努力を進めていくことに合意した。
  • Faced with collapsing print revenue, publishers had little choice but to pursue online revenue, whether in the form of digital advertising revenue or with paywalls and subscriptions.・・・購読料の崩壊で苦しむ出版社は、デジタル広告にせよペイウォールや購読料にせよ、とにかくオンライン収入を追求するしかなかった。
  • All these publishers pursued scale in an effort to compensate for the low yields of digital advertising.・・・これらの出版社は、儲からないデジタル広告の埋め合わせをするべく規模を追った
  • strategy pursued by news publishers is to try to sell their advertising space at a premium, based on the quality of their content.・・・出版社が取った戦略(のひとつ)は、質の高い記事にはプレミアムの広告料を取ることだった。
名詞は"pursuit"で、なかなか表現できない「趣味」「好きなこと」「よくやること」あたりをうまく包含します。例えば私は、自分の英語学習を「趣味」とは言いたくないし、ましてや"hobby"は絶対避けたいわけですが、その点"pursuit"は非常によくフィットします。"English is one of my major pursuits"です。それだと大げさで「〜にハマってます」くらいの場合は、"I'm into xxx"が自然かと思います。「よく〜するんです」はそのまま"I often do xxx"とか"I typically spend my weekends xxxing (on xxx)"など、いろいろあるので臨機応変に。 
 
因みに動詞"pursue"は"career(仕事)"とも非常に相性が良いです(キャリアを追求していく)。例えば、"I continue to pursue a career that involves significant challenges in international communication."など。(ところで"challenging"って訳せないですね。あと、こういう"involve"も勝負英語です。)

 

長くなりましたので今回はここで。

ちなみに、イントロで述べた"Whatの使い方"については以前書いた記事があるので、宜しければご参照ください。https://ameblo.jp/winning-english/entry-12416825860.html