30日早朝の乃木坂の冠番組、『乃木坂工事中』は、卒業する生駒里奈最後のスタジオ出演ということで、特別企画が放送された。

 後半、バナナマンの二人と生駒の三人でのトークがあったのだが、衝撃的だったのは卒業を決めた理由を聞かれた流れで出てきた

 

「発展途上の成長過程を見せるのもアイドルのコンテンツだけど、私は本物になりたいという興味が湧いてきてしまった」

 

 という言葉だった。

 

 これまで、多くのアイドルが卒業し、その中には、女優として、あるいはタレントとして様々な活動をしている者も多い。

 しかし、卒業にあたって、ここまではっきりと「本物になりたい」と言い切った人は、少なくとも俺は知らない。

 心の中ではそう思っていても、グループに残るメンバーのことや、アイドルに憧れる子供のことを考えると、そして揚げ足取りをして炎上させようとするアンチの存在を考えると、なかなか口に出すのはハードルが高い言葉でもあったからだろう。

 

 以前、乃木坂では白石麻衣が「アーティストになりたい」という発言をしたときに、ネットでは「アイドルなんだから……」「そういうのは求めていない」「本物の歌手に失礼だ」とバッシングが起こったことがあった。

 また、増田有華(元AKB)や川村真洋(元乃木坂)の歌が上手いとカラオケ番組で話題になったときも「所詮アイドルとしてはという話」「綾香やドリカムとは比べ物にならない」といった声が、ファンのほうから聞こえてきた。

 

 アイドルファンの多くは、成長を見守るという名目のもと、どうしても、自分が相手より上の存在であることに執着する。

 言い換えれば「本物」になられては困るのだ。

 しかし、志あるアイドルにしてみれば、グループでの経験を活かして本物になりたいと思うものもいれば、本物になるためにアイドルを経験しようと考える子もいる。

「アイドル」という概念にずれがあるのだ。

 だから、アイドルとして成功するものは、卒業後苦戦を免れず、アイドルとしては人気がいまひとつだったものが、卒業後そのスキルを武器に活躍するパターンが続いていた。

 例えば、AKBでいうなら、前者は前田敦子だし、大島優子だろう。

 そして後者は、秋元才加や増田有華ということになる。

 バランスがよかったのは、松井玲奈や川栄李奈となるのだろうが、彼女たちは比較的時間をかけて、在籍中に外仕事をしていることが多かった。

 

 生駒にとって幸運だったのは、在籍していたのが乃木坂だったことだ。

 乃木坂は、積極的に外仕事のオファーを内部の仕事に優先させる方針を取っている。

 握手会を欠席させても、舞台を優先するようにしている。

 生田絵梨花のように、グループに在籍しながら「本物」になろうと努力することができ、またファンもそれを応援する人が多い。

 

 だが、皮肉なことに、このコンセプトは、AKBがまだアイドルではなく、AKBプロジェクトだったときのコンセプトそのものなのだ。

 本来AKBは秋葉原の劇場で、様々なプロデューサーやプロダクション関係者に女の子を見てもらい、女の子たちの夢をかなえる架け橋になるというものだった。

 

 さて、ここでもう一度考えよう。

「アイドルってなんだろう?」