マーケットで 後ろ髪をひかれながらも

部屋に戻ってから空港に向かう車のなかで

その日の彼の様子が頭から離れず

いろいろ 思い返していた


マジカルワードを一生懸命伝えてくれた


《こういう意味なんだよ》って

教えてくれたのに

うろ覚えだった

 

《あの言葉もう一度教えて!》

彼にメッセージを送った



すると

それまでにないほどたくさんの言葉で

メッセージがかえってきた

 

書ききれなかったようで

ボイスメッセージでも いくつかはいっていた

伝えたいことがあふれている


彼は仕事以外のプライベートのことでも

はっきりと言葉にするが

とても明確なので 

言葉数はそんなに多くない

 

こんなに流暢で

たくさん語る彼ははじめてだった



彼が語っているのは

神さまについてだった


てっきり 

彼が信仰する神さまについて

だと思っていたら


宇宙の創造神のことと

ほぼ同じことだった


それはわたしの持つ世界感と

とてもよく似ていて

 
メールだったというのに

あまりの熱量にクラクラした



神を渇望し

ただ神に帰依することを望んで

足もとにひれふすばかりの美しい魂に

魅入られてしまった瞬間だった

 

 

もう決定的だった

1度目のキューピッドの矢は

わたしのハートにささったが

 

2度目の矢は

ハートを完全に打ち抜いた

 

もう彼を否定することができない

完全降伏の瞬間だった



この期間は

日本でやることがいくつもあったので

ふだんの倍くらい

タイを離れることになっていた

 


もう 寝ても覚めても

彼のことが浮かぶようになって

軽く気が狂いそうだった


やることがたくさんあったことが

救いだったけれど

それでもふとした瞬間には 

ぼーっとしてしまう


日本とタイで離れている期間が

永遠に思えた

 


その間 

わたしと彼は

ただただ

《会いたい会いたい!さみしい》

伝え続けた

わたしたちは もう完全に恋人同士だった



来る日も来る日も待ち焦がれて

会いたい気持ちがふくらんでいった


こんな気持ちになる日がまたくるだなんて!
奇跡のようだとうれしかった

 


うれしい気持ちも

果てしなく大きかったけれど

会いたくて会いたくて たまらなかった

 

一緒にいないことが

こんなにさみしくて苦しくて
愛しくてたまらない




ようやく会える!
待ちに待った彼のいる土地に向かっているときから
心に羽根が生えているようだった


《バンコクについたよ!》

メッセージをおくると

 

《写真をおくって!》という

 

《わたし写真すきじゃないの

会いにきてくれないの?》

メッセージすると 写真が送られてきた


ベッドの上に 

象の足のように腫れた足が

写っていた


何のことだかわからなかった

 


バイクでアクシデントがあって

仕事も休んでいるという


とっさに
《何かできることはある?》

とメッセージしたら
《だいじょうぶ

兄弟がいろいろしてくれてるから》

という

メッセージのやりとりをしていたのに

なんで言ってくれないの?

なんかさみしい

 

 

実際の距離と

エネルギー的な世界とは

とても違っていてあぜんとする


そして このあと
このわたしの現実とのギャップへの

戸惑いと不満が

やらかしてしまうことになる