シャーマンさん、ありがとう。

ましろのこの写真が撮れたとき、愛方も、僕も、それぞれに「不思議な写真だな」と感じていたんです。

愛方は

「いくら痩せているからって、肩甲骨、こんなふうに盛り上がるもの？おかしくない？？」

と思ったそうだし、僕にはこの部分だけがポップアップしているように見えました。

でもこのときは【ましろのとき】だったので、ましろだけに集中しようと。

シャーマンさんがおっしゃるのは、アフガン・ハウンドの『ナンシー』…ではないでしょうか。

まだ被毛が伸びきる前、中途半端な長毛だった頃に、離ればなれになった犬。

僕が共に暮らしたのはジャーマン・シェパードの優月ひとりですが、犬種として長く濃い接点があったのは、実はアフガン・ハウンドです。

小学校入学前から、8年くらい住んでいた借家。

庭続きの家が大家さん宅で、大家のおじさんがアフガン・ハウンドのブリーダーでした。

と書くと何やら優雅な絵が浮かびそうだけど、実際はかなりなボロ屋の狭い庭に小屋があり、犬はそこで飼われていました。

ごはんはビタワンだった(笑)。

かろうじて持っていたナンシーの写真。

この子でしょうか？

大家さんの家には常に女の子が２頭いて、数年に一度、若いほうの子の出産がありました。

僕は毎日のように一緒に散歩に行き、出産の手伝いや子犬の世話をさせてもらうなど、ずいぶんと入り浸っていました。

女の子の1頭が亡くなると、生まれた子犬たちの中から1頭を、新しくおじさんの手元に残します。

その子犬がナンシー。

生まれたその日から、毎日のように一緒に居ました。

夜中に窓からこっそり顔を出して、小声で

「ナンシー、ナンシー」

って呼ぶと、振ったしっぽが犬小屋の壁に当たる音が聞こえてね(笑)。

だけど中学1年生のとき、僕たち一家は引っ越すことになりました。

直前に僕は自宅のすぐ近くで事件に遭い（偶然その数日後に引っ越すことになっていたのです）、その後、おそらく無意識にですが、その家付近には近づくことができなくなってしまいました。

様子を見に戻ってみられたのは、どれくらい経ってからだっただろう。20年くらい後？

そこにはもう犬たちはおらず、空っぽの犬小屋だけが残っていました。

ナンシーは僕の犬ではなく『隣の家の犬』だったし、当時の犬なりに、ではあるけれど、おじさん一家は可愛がって育てていたと思う。

だからその後をそんなに心配したりはしていなかった。

被毛も伸びて、美しいお母さんになり、ゆっくりと老いて、生涯を終えたと想像しています。

だけどましろの背中に重なる後ろ姿は、僕が覚えている中途半端なボサボサ長毛のナンシー。

一緒に泥だらけになって遊び転げていた頃のナンシー。

ナンシー、待っててくれたのかな。

心はずっとそばに居てくれたのかな。

引っ越しなんて犬には分からないもんね。

いきなりいなくなっちゃったんだもんね。

ごめんね。

優月を迎えるとき。

人生で最初で最後の『自分で犬種を選んで犬を迎える』という、そのとき。

最後まで候補に残ったのが、ジャーマン・シェパードと、アフガン・ハウンドでした。

犬の訓練士さんには

「ジャーマンとアフガン？それはまたずいぶんと対極な。

アフガン、あれは言うこと聞かないよ。犬仲間の間じゃアホガンって呼ばれてるよ」

と言われました。

…アホガン…(T▽T)

いいんです、アフガンはお仕事上、服従性より独立性を求められてきた犬ですから。

人間の都合で賢いとかアホとか犬に言わんでください。

とかなんとか内心で反論しつつ、諸々の条件から、最終的にはシェパードと暮らすことを選んだのですが…。

生きているうちに会いに行ければよかったなって思うけど、忘れたことはないよ。

『犬は友達』ということを、幼い僕に疑問なく信じさせてくれた犬たち。

僕の動物人生の入り口は、間違いなくこの子たちでした。

アフガン・ハウンドと私