5-4-1超コンパクト守備で狙うジャイアントキリング 第17節シティvsクリスタルパレス | 相手の守備を見ればサッカーは100倍上手くなる、ジャイアントキリングの教科書  〜最新サッカー戦術考察ブログ〜

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技術があるのに上達しない?相手の守備を見れていないことが原因です。年間300試合は観るサッカー観戦大好き指導者が、M・シティの試合を中心に、各チームがどのように挑むのか、そしてどのようにプレスを剥がすのかを分析します。サッカーが上達するヒント満載です。

5-4-1ブロック ボール保持率26%でも負けない守備!
イングランドプレミアリーグ第17節




難敵クリスタルパレス、監督のロイ・ホジソンは76歳で、プレミアリーグ最年長監督なのですね。その年になっても情熱を持って仕事に取り組む姿勢には感服です、、、。今節シティとの試合もなんと2-2の引き分けに持っていきました。シティとの戦力差を考えればお見事ですし、後半半ばまで0-2で負けていましたので、まさか!の展開でした。シティにとっては手痛い引き分けになりましたね。前節ルートンタウンも同じ5-4-1システムでしたが、また一味違った戦い方を、見ていきましょう!

目次
・シティ布陣
・クリスタルパレス布陣
・クリスタルパレス守備5-4-1ブロック
・シティ得点①
・シティ得点シーン② 
・総括


・シティ布陣



シティは3-2-5というよりは攻撃時3-1-6という形がベースでした。これは相手の5バック対しての数的優位性を意識してのことです。下手なチームだったら5-4-1の、4にパスを引っ掛けてカウンター喰らって終了ですが、世界最高峰のシティですから、簡単にはボールを失いません。その技術の高さからリスクを負って時には2-1-7みたいな形になっている時もありましたが、、、その分ボールを失った時には全員がトップスピードで奪い返す、もしくは自陣に戻ります。


攻撃時3-1-6のような形をとるシティ



・クリスタルパレス布陣



クリスタルパレスは5-4-1をベースにした超コンパクトな守備からのカウンターで挑みます。ミドルサードで奪いたい所でしたがシティが中々ボールを失わないので自陣での守備を強いられることになります。


・クリスタルパレス守備5-4-1ブロック

さて、クリスタルパレスの守備ですが、シティの前線5枚に対して5バックでキッチリ5枚当ててきました。ワントップがロドリのパスコースを消しながら、攻撃方向を限定していきます。中盤は4枚ですので、4枚で中央のパスコースを遮断しながら、ボールを奪うチャンスを伺います。


5-4-1で縦にも横にもコンパクトに。



重要なのはサイドハーフの立ち位置ですが、他チームの5-4-1と比べるとやや中央寄りです。その理由はハーフスペースのパスコースを断ち、外にボールを追い出すことと


内側に絞るサイドハーフ



3-2-5の3CB両脇に対して牽制をかける役割が与えていたからです。


ドリブルで持ち運ぶCBを牽制する役割



また、5バックの利点を活かし、例えばグリーリッシュが落ちてボールを受けにいった場合には強気にCBが出ていきます。


5バックの一角が積極的に出ていく。



しかし前述したように、クリスタルパレスの守備に対し、なんとシティは数的優位を作るために前線5枚に更に1枚上乗せして、3-1-6のような立ち位置を取りながら、試合を進めます。



クリスタルパレスは6バックにすることなく5-4-1ブロックを保っていましたので、こうすると必ずマークが浮いてしまいます。


1人で2人を見なくてはならない状況が生まれる。



このような形でグリーリッシュ、フォーデン
アルバレス、リコルイスの誰かが下がって数的優位を保ちながらボールを動かしていきますので、中々ボールが奪えませんし、2枚くいついてしまったり、CBが釣り出されることでチャンスを作られてしまいます。


2枚くいつく、CBがくいつくことをシティは狙っている。



特にロドリは、自陣での後方ビルドアップに参加していたかと思えば、気がつくとバイタルエリアに侵入してきますので、相手にとっては本当に厄介な存在だと思います。自陣でも数的優位を作り、アタッキングサードでも数的優位を作ります。


自陣での数的優位確保に加わるボランチのロドリ



FWがくいつけばシンプルに叩いて




CBがボールを運べる。



叩いて自分がボールを受けて侵入もできる。



・シティ得点①

クリスタルパレスの5-4-1は非常にコンパクトでしたし、決して悪かったとは思いませんが、シティの中央での崩しがそれを上回ったと言えます。


図を見ていただければわかりますが、フォーデンにパスが渡る時点で7人、1〜1.5列目(相手ディフェンスラインと中盤の間のスペース)にいます。




フリーになったフォーデンに斜めにパスを差し込む。




すると誰かが守備に行かなくてはならないので、その背後にスペースが生まれます。



グリーリッシュがスペースに入り込み、得点。



・シティ得点シーン② 

ロドリがバイタルエリアに侵入して数的優位を作った一例です。

この時点でロドリはまだ後半でバランスを保っています。



ハーフスペースのグリーリッシュにボールが渡る。



アルバレスが背後に走り込み、スペースが空いたのでカットイン。


自分をマークしていたボランチがグリーリッシュに対応し、フリーになったので相手ペナルティエリアへランニング



ペナルティエリアで数的優位を作ったことによりフリーになったリコルイスが流し込み得点。ロドリの賢さが出たシーン。


シティの6枚に対して6バック気味にすれば良かったのかと言われれば、それはそれでマンツーマンディフェンスになるので、様々なスペースを空けてしまうことになります。5-4-1で守るとダブルボランチはマークにつききれない相手が必ず出てきますので、判断が難しかったと思います。この辺りの駆け引きが、ハイレベルで行われているのがプレミアリーグです。


・総括

引いてブロックを作って守り、カウンターで得点を狙う戦い方は相手との戦力差で劣る場合に割と多くのチームが採用する戦い方です。そして、負けている展開になる、あるいは試合が進むにつれてどこかで攻勢に出るチームが殆どですが、クリスタルパレスの場合0-1、0-2と点差をつけられても戦い方をあまり変えず、ブロックを作っていたことに少しビックリしました。つまり、やることを徹底して変えずに2-2の引き分けに持っていたわけです。そう考えると、自分たちのやるべきことを貫いて、同点に持っていったのは本当に凄いことですよね。負けていたら選手もどんどん攻めに行きたくなるものですから。スペクタクルな試合だったとは言い難い内容ではありましたが、ジャイアントキリングを考えた際に5バックでブロックを作って戦うというのは、改めて有効な手段の一つだなと感じさせてくれましたし、その守備を崩してしまうデザインされたシティの攻撃には感服でした。

今回得たジャイアントキリングのための教訓

・相手のビルドアップ能力が高くない場合は5-4-1でミスを誘いカウンターはあり。
・スペースを埋めるためのコンパクトネスは最重要。ディフェンスラインのコントロールを。
・ロングカウンターに持っていくための能力の高いFWが必要。