4-5-1外切りでハメるという戦い方
シティは早くもストーンズ、デ・ブライネの負傷により選手層に危険信号が灯ってきました。対するニューカッスルは昨シーズン4位の成績を残しCL出場権獲得、第1節はアストン・ビラを5-1で敗るスタートダッシュを切りました。ニューカッスルは、何よりボールを奪ってからが速いし強い。ですので、正直シティを倒したとしてもジャイアントキリングとは言えませんが、持ち前のボール奪取から縦に早いサッカーを発揮できるか注目でした。結論から言うと、シティが上手すぎました。
目次
・シティ布陣
・ニューカッスル布陣 奪い方
・シティの対応
・まとめ
・シティ布陣
シティは4-2-3-1です。
毎回のことですが、シティのスタートのフォーメーションはあまり意味をなさないですね。前節は攻撃時には左SBのルイスが中盤の位置まで上がってきましたが、今節はCBのアカンジが中盤の位置まで上がります。その代わりに左SBの新加入グバルディオルが中央寄りに絞るというローテーションを組んでいます。
マークのズレが生じるローテーション
・ニューカッスル布陣 奪い方
対するニューカッスルは4-3-3です。守備時にはFWイサクを前線に残し、4-5-1の形をとります。中盤を5枚と厚くし、横幅のスペースを縮小することによって、高い位置で網を張って、相手の縦、斜めに差し込んできたパスを奪って一気にショートカウンターに移行したいという意図が汲み取れます。
特徴は両SHが高い位置を取り、シティCBに対し、ここぞというタイミングで外側のパスコースを切りながらプレスをかけていく点です。GKにボールを下げたらそのまま二度追いしてプレスをかけていく場合もあります。
積極的にCBにプレスをかける
一般的に守備は、ゴールへの最短距離の中央内側に出させないよう、外へ追い込むことがセオリーですが、あえて外のパスコースを塞ぐ事によって厚くした内側にボールを誘い込めれば、奪えた際はよりゴールに近い位置でショートカウンターが可能となります。
奪えればショートカウンターのチャンス
・シティの対応
シティは攻撃時には2-3-5のような形をとります。基本的に、左サイドはWGのグリーリッシュが、右サイドはSBのウォーカーが幅と深さを確保します。そしてハーランドを中心に、アルバレス、フォーデンが中央気味に立ち位置を取り、5枚を形成します。
時に前線6枚、後方4枚 またはその逆で前線4枚、後方6枚になったりもしますが、基本的には前線5枚で数的優位、あるいは同数を作り出し、後方5枚でボール保持かつ相手を引き出すという仕組みです。
シティの前線5枚に数で対抗するには、5バック、あるいは6バックにするしかありません。しかしそうすると中盤の数が減り、相手に容易にボールを保持することを可能にさせてしまうというジレンマに、悩まされます。
5枚にするとマンツーマン気味になり、マークはハッキリするが、中盤のスペースが空く。
6枚にして数的優位を確保しようとすると、前線で数が足りなくなり、容易に侵入される。
ニューカッスルはリスクを冒して中盤を下げずにディフェンスライン4枚で対応しましたので、中盤で奪えれば大きなメリットがあるものの、剥がされれば大ピンチというハイリスクハイリターンの守備です。その分守備のタスクが多くなります。
例えば、ニューカッスルSBはWGのマーク、中央に絞ってきた1.5列目の選手への対応、FWへのカバーリングという3つのタスクがあります。
また中盤3枚はDMFのロドリ、コバチッチ、アカンジのマークをしながら後方のFW3枚のパスコースを切らなくてはいけません。早く食いつきすぎれば、縦パスを入れられますし、プレッシャーにいかなければ中盤をフリーにさせてしまいます。
このように、ディフェンスに複数のタスクを負わせる立ち位置を取る事によりシティは試合を優位に進めていきます。特にニューカッスルの外切りの守備に対しては、自陣深くに立ち位置を取ることによって、SBが出てこれない状況を作り出します。
右SBウォーカーが低い位置を取るため、ニューカッスルのディフェンスラインが出て行けない
外のパスコースを塞げばボランチを経由して剥がされる
SBが前から奪いにいけばそのスペースを簡単にロングボールで使ってきます。
WGグリーリッシュが落ちた際にフリーにさせたくないのでついていく
空けたスペースにロングボールで起点を作る
また、ロドリ、コバチッチを中心にパスを回しながら1.5列目のフォーデンに縦パスを差し込むシーンが何度もあり、ニューカッスルを困らせていました。CB2枚でFWハーランドをマークしてましたので、どうしても1.5列目のマークが曖昧になってしまいます。
フォーデンが中央で受けてチャンスを創出
この仕組みを選手がハイレベルな技術、判断で行うのでもはや太刀打ちする術はあるのか、と思わせるほど巧みな試合展開でした。もちろん、ニューカッスルも何度かゴール前に迫る場面もありましたが、アタッキングサードでの崩しが、まだ噛み合っていない印象でした。(それだけシティのディフェンス陣が能力が高いということかもしれませんが。)
まとめ
ニューカッスルのゴール前での守備やハーランドへの対応はやはり昨シーズン4位というだけあり、強固でした。それがシティ相手に1失点しかしなかった要因と言えるのかと思います。しかし、(シティの上手さは抜きとして)試合を通して中盤でボールを奪えた回数を考えると、後半にロドリのボールをカットして決定的な場面を作り出したことはありましたが、簡単に剥がされたり、コースを切りきれていなかったりするシーンが多かったので、前線での追い方や連動性ではまだまだ改善の余地があるのではないかと思います。おそらく、その守備のタスクを実行できるチームこそが今後シティを倒す可能性が出てくるのでしょう。
ジャイアントキリングのための教訓
・前線の守備の追い方、連動性をどれだけ高められるか
・相手陣内深くに立ち位置を取ったSBへの対応
今後の各チームの戦い方に注目です。