マザーハウスに来る経緯は1997年....

私はネガティヴと不運の只中に居た時....

もうマザーが体力の限界を感じ総長職を辞めたのをTVで見て気になりだし

それから色々とマザーの事を調べだし

いつかはマザーハウスに行けたらいいなぁと

今の自分の底辺を抱えながらも

それは生きていれば叶う事だと淡い想いを寄せていた


1997年9月5日

マザーは世界中が見守る中でマザーハウスにて生涯を終えた

9月13日の国葬はTV放送されて

マハトマ・ガンディー  初代ネール首相についで3人目の事だった


その荘厳な国葬に何故か行きたい....マザーハウスに...マザーハウスに行かなくてはと云う衝動が止まらなかった

「愛」の反対は「無関心」

私にもまだ愛の衝動があるのかと

その時は藁をもすがっていた....



巡り巡って遂にその日が来た

私は朝7時の手続きに間に合わせマザーハウスに行った

ミサと歌を歌い  チャイとクッキーをいただく

木曜は休みなど色々なルールを講習して各所を見学して廻った

ボランティアは午前と午後に分かれて足りない人数の方へとあてがわれる

午前はハンディを持った子供達の家で洗濯とお話を

午後は死を待つ人の家でベッド作りと配給の手伝いを....


多分何もしなくても誰も何をしろとも言わないし

やれる事は本人にやらせなければならないし

ボランティアの意とはなんでもやれば良い訳でも無く出来る事をする

「私たちはこの世で大きなことはできません。大きな愛で小さなことをするだけです。」

午後の休暇でチャイとクッキーを食べながら

そんなマザーの言葉を思い出していた

朝のミサと修道歌を歌った部屋で

マザーの御遺棺に一礼して初日は終わった


そんなこんなの修行に近い10日ほど過ぎた頃...


やはり男達は死を待つ人の家に行く事がメインになり

いつしか私は死を待つ人の家に朝から向かう様になった

マザーハウスのシスター達は本当に質素な生活をしている

朝のチャイとビスケットかクッキーから昼過ぎの同じメニューまで水以外は食事をしない

テキパキと仕事をこなしては笑顔を見せる姿はボランティアでは中々ならない

光り方が全く違う.....根本が違うんだろうなって感じる.....そんなシスター達を見上げているばかり

支給か喜捨の食糧をメインに生活して

多ければ分け与えてしまう.....

UKから来ているもう10年近くここでボランティアをしている仲間も

ここの生活は贅沢していると自分がやられちゃうよ....湧いてくる慈悲を感じる事を忘れないで

ってニュアンスで食事の観念を話してくれた


毎日毎日入れ替わりにボランティアに参加する短期間の人々は私の初日の様に

ベッド作りや配置変えなどをして何かできた喜びにいとまがない

長期の慣れてきた者は死を待つ方々の移動や手助けなど直接なボランティアをする

医療行為は出来ないので日常のフォローである

炭疽病で身体中シコリだらけの人

動けずに街のネズミや動物に酷く怪我を負った人

感染しないアメーバ赤痢や疾患の人々

鬱血から酷く爛れて虫の湧く人.....

宗教的に病院に行くのを拒むか

費用的に行けないか

もう手遅れか.....

いづれにしても治療を出来ない私達が

せめて死を迎える時までの最後を

人間らしく幸せに生きるのがここである

まだまだ歩けて話を出来る方から

身動きもままならない方まで.....


午後になると病院などから薬や処方箋が来る

それぞれに違う物が入ったそれを貰うのも

彼等の楽しみの一つだ

休憩時間が過ぎても来ないと列んだりウロウロしたりもする

普通にそれらが行き渡ると私達もそれぞれが動く

自分で出来る者は自分で...

やれない部分の張り替えなどは手伝って...

背中が化膿して爛れた皮を取り

ウミと虫を捕って軟膏や包帯をしたり.....

描くにはキツいコトもあるが殆どは

この時間が至福?になる時間でもある

私達に出来る処置が済むと

ありがとう...良かったですねの疎通で溢れる

この前のアレはシミたとか

長過ぎて切ったらコッチが短くて困ったとか...

世間話から笑みまで.....

午後の休憩時間になると報告も兼ねて先々の打ち合わせとか案を出したり

二、三日考えたものを持ち合わせてまとめたりしてそれを短期間ボランティアでやったり.....

そんな毎日が過ぎた.....


ボランティアにもう8年近く居るベテランさんから呼ばれて手伝ってくれないかと云う

行くとシスターも何人か居て囲う中に一人の方が手を握りあって横たわって居る

私もたまに行ってボランティアする彼は孤児で

若い頃は働いていたが

読み書き計算がならないと路上のバクシーシ(物乞いや喜捨のみで暮らす)生活の中事故に遭い....

色々感染云々で動けなくなりここに来たと聞いていた

彼は涙ながら小さな声で

こんなにたくさんの方々が良くしてくれて幸せです

ありがとう  ありがとうございます  ありがとうと何度もいいながら

見えないであろう目を配って囲むみんなを見ながら.....


マザーが生きておられてもしたであろう

みんなが祈る祈りのと愛の励ましの中.....

本当に強い意志を持って生まれ生きて

高みを目指しここから今旅経ったんだなって

瞬間の吐息がみえた

悲しい涙か解放された魂の美しさか...感動にも似て絶望感でない.....そこには時間はなかった

入口に今日の死者数などの看板があるが

ゼロ以外の数字が入ることとは...と色々考えた

思い出すと涙と震えが止まらない数日が過ぎた.....

彼はカルゥの東のカナル河で荼毘にふされて旅だった.....死とはなんたるか.....なにでは無い...満ちるに似て空でも無い...前途ある卒業.....通過点...愛による解放...私の言霊に限界を感じる

悲しみのときに悲しみを重ねて同調しては悲しみを増すばかりである

悲しみには喜びを...喜びには感謝を.....

痛みには愛を...愛には感謝を...

すると光が見えてくる

私達の根本は愛と感謝によって生かされている

上手く描けないのがモドカシイがネガティブを重ねてはならない.....ネガティブは分裂するものなので分裂が消滅するものを重ねるというか...愛と光...車輪の様に切りなくグルグル......


いつしか私も毎日が

果物かパンという粗食になり

思うと既に2カ月が過ぎていた

始めの頃はあちこちで身体中が痛かったが

いつの間にか安定した体重になって健康?になり

不思議と精神も穏やかになった.....


そしていつしか毎日を大切に喜び感謝して

過ぎ行く人や風景にすら共時の流れを感じ

その行先にさまざまな魂の往き交いや光の波紋をみていた

カルゥは喧騒と混沌の街だと云うが違う!

ここはまさしく愛と光の調和の森だ!

森と草原と大木と虫と動物と...

太陽と宇宙と時間と盛衰と.....

その調和のとれた螺旋の悠久の時間と

何ら変わらない!

草に留まる虫の上には光の上には宇宙の奥には.....

根本には枯草の下には土の下には水の下には....

そのホコリひとつにも意味がある

人々の蠕きは虫たちの日常と

その街々の広がりは細菌の繁殖と

細菌の細胞の成立ちは宇宙の構造と広がりと

みんな同じく全ては全くフラクタル!

そう見えてくると人々が優しく私を迎えてくれる


タクシーは吹っ掛けた値段を言わない

衣服は本当に合うものを勧めてくれる

食物も悪食にあたらなくなって

人々が優しいし気に嫌いが無い

仏頂面の奥に輝く笑みが浮かんで見え

タバコを貰って会話したり最新映画の女優は綺麗だとか

話にもポジティブが目立って楽しい


カルゥは.....インドは.....世界は.....全ては実はひとつ.....私はつまりあなたなのだ...

世界は素晴らしいと云う事がみえてくる

シスター達は...マザーは...

これを知って毎日を生きているんだろうなと感じた


私はカトリックでも何でも無い無宗教だが

このバランスと感覚は本当にどこまでも理解して納得出来る.....終わりが無い

そう見えると死を待つ人の家の意味すら変わってくる

マザーの偉業に偉大さ......見え方が少しわかった頃

もう年末も近くに私はマザーハウスを去る時期が来た

去る数日前にシスター達は私と数人を夕食に招待してくれた

シスター達は自分の質素で少ない夕食を分け集めて

私達の食事を用意してくれた....

食物の栄養は大切なのは欠かせないのだが

愛と光、その調和の生むエネルギーが何よりも生きる栄養だと云う事はシスター達は言わずもがな

それは素晴らしい夕食に招待されて光栄で涙が出て止まらなかった

シスター達も喜んで夕食を済ませみんなで語り合い

一緒にマザーに祈りを捧げてくれた


この時間は生涯忘れることはないだろう.....

涙と別れと死と喧騒とネガティヴと.....それらは全てポジティブにも言い換えられ......それを想える心の居場所とは......ニュートラル...言葉にするには余りにも足りない

書ける言霊が私にない沢山のマザーハウスのボランティアの出来事で

マザーハウスのマ位を知り

ボランティアのボ位は経験したと思う.....

最終日に貰ったバナナとビスケット.....

帰り道の物乞いさん達に分けながら

私のボランティアは終わった。



2000年のカウントダウンは聖地ヴァラナシで

日本の友人と待ち合わせて会う事になっている

素晴らしい日々をありがとうカルゥ....

そして全てに感謝!

また違う世界へ向かおう.........

1999/12/22   宿 paragon  にて