十月の半ば過ぎ。ネットでの明人への中傷は日に日に悪化していたが、明人はもうそれに慣れてきて、だんだん気にしなくなっていた。

ネット依存も強迫性障害によって、そうなったものもあったので、それを気にしなくなってきているとこまでいったのも、治療がうまく進んでいる証拠だ。

独り言も、完全にではないけど、大分改善されてきて、英次や初音も驚いていた。

「あっきーって、一人でたまに何かつぶやいていたのにそれあまりしなくなったよね」

「私も思った。いったい何があったの?」

「あれ、精神疾患が原因やったって。俺も何でやろうとは思っていたけど、止まらなくて独り言を言わないと気が済まないとことかあって、でもちゃんとした治療を受け始めて、その結果改善されてきたんだと思う。あれがそういう病気だったなんて俺も最近まで知らなかったけどね」

「あれ、癖でやってたんじゃなかったんだ」

「私も癖でやってるって思ってた」

「確かにそんな人もいるかもしれないけどね」

そこへ真太がやってきた。

「あっきーのあの独り言って、病気が原因だったんや」

「病気と言っちゃっていいのかなぁ、でも精神学的にいえばれっきとした病気ですよ」

「でも薬をちゃんと飲んで治してるんやろ?それってあっきーが頑張ってる証拠やと思う。それにしてもネットの奴らはそんなあっきーの頑張りを知らないで今でも書きたい放題やってるな。それは頭来るわ」

「そして、あっきーの抱えてる物も世間では理解されないものなんやろ?それと向き合ってるあっきーが一番俺は強いと思う」

「私も英次君と同じ意見。あっきーは強い!」

ここで真太が明人に聞いた。

「ところであっきー、あれからラジオ聴いてる?」

「はい!聴いています!」

「あれから俺、毎週毎回ラジオのコーナー宛でファックスに物申したいことを書いて送ってるんや。当選したらいいんだけどなー」

「ピックアップされたら番組から電話が入ってきて、生放送に出られて、五分くらい自分の言いたいことを思いっきり言えるっていうコーナーでしたよね」

「そうそう。初音ちゃんも知ってたんやね」

「私も、ファックスしようかなー」

「その気持ちだけあれば十分だよ。ありがとう」

こんなやり取りから、およそ十日後だった。

毎日のように真太からラジオをチェックするように言われていた明人は毎週恒例のあのコーナーをチェックしていたのだった。そして、突然のことだった。

「ラジオネーム、真太さんのファックスです。この方は、ここ最近毎回毎回このコーナーにファックスをくれていた方ですね。ずっと熱いファックスをくれていたので紹介させていただきます。いつもファックスをどうもありがとうございます!」

その日のファックスのテーマは、たまたま「世間に一言」といった内容だった。というのも、夏の終わりにこんなニュースがあった。

関西で中学生がいじめを苦にして自殺したというもので、学校側が警察の調査に対して真実を話さず言い訳ばかりを繰り返して、教育委員会や加害者たちも「被害者が悪い」という類のニュアンスで言い逃れを繰り返していたことが問題で、これは多くの著名人がブログやテレビ番組で怒りをあらわにするほどだった。

司会者が、思いっきり真太の記事を読み上げると、こう答えた。

「真太さんの、できる職場の仲間を助けたいという気持ちがすごく伝わってきます。熱いですね。こういうの。職場の仲間が、ネット上で不当な評価を受けて今も苦しんでいるそうだけど、ホントそういうの許されないことですよね。何の目的でそういうあることないことを平気でつぶやいたり書き込んだりできるのか。私も理解に苦しみます。というわけで、今日電話出演してもらうのはこの真太さんに決まりです!」

何と即決で真太がラジオで電話出演することが決まったのだ。

数分後、本当に真太が電話で出演し、別の場所で同じラジオ番組を聴いていた英次や初音も驚いていた。真太は職場でも宣伝をするほど、このラジオ番組が好きだったのだ。

そして、真太が電話に出た。真太は待ってましたと言わんばかりに気合が入っていた。


(26)に続く。