それが原因で昔から、明人は高熱や腹痛、頭痛などの体調不良を訴え、学校を休んだこともあるが、本当はそういう事実であることを知らなかったが故に、ただの風邪や体調不良だと勝手な判断をされた。現に、明人は十一歳の冬、「急性肺炎」を起こしておよそ十日の入院生活を余儀なくされたが、それは今まで明人が周囲のそういった理不尽に何も言わず今まで我慢してきた結果だった。これは、アスペルガー症候群の特性の一つで、人にとらわれず我流で日々を過ごそうとした結果でもある。「型」にはめて、型どおり真似てやることに抵抗を持っていたことと、「型」どおりやることを嫌うからであった。

大学に入っても、コミュニケーションの苦手さや関心のないことに手をつけられず苦労し、アスペルガー症候群の特性や癖が無意識に出ることもあり、周囲から「変な人」「近寄りがたい人」だと勝手なレッテルを貼られることもあり、苦労していた。また、退屈感からのあくびの多さも異常なほどだ。

また大学に入り、友達の影響で音楽にのめりこむことも多くなった。そのため、新しく趣味として音楽ゲーム、いわゆる音ゲーを時間があるときゲームセンターでやることが増えたのだが、そのやり方、スタイルを2ちゃんねるなどのネット掲示板で酷く書き込まれ、それでも同じ趣味で集まって仲間ができたことがあるが、ネットでの第三者の暴走行為や、ネットユーザーの勝手な妄想での書き込み、嘘の書き込み、そして殺人予告などを書き込まれることもあって、そういったことが主な原因で、それぞれの頭の中がおかしくなり、たびたびぶつかり合いも起きて、解散してしまった苦くつらい過去もあった。

また、これまでのいじめや衝突、家族のしつけなどから、人とのコミュニケーションをとることが苦手なのと、人と接することに抵抗感を感じていた明人は、そういったものまで面倒くさくなったが故に、アルバイトやサークル活動をするといったことはなくて、大学に入ってからコミュニケーションもどんどん苦手に感じるようになっただけでなく、一人のときは独特の行動も増えていった。幼少時からやっている独り言を言う癖や空気にそぐわない感情を取るとこなんかはもっと激しくなった。

そのため、周囲からは「とっつきにくい人」「変わった人」「気持ち悪い」「空気が読めない」などという印象を持たれ、そういう癖に関していちいち意見する連中まで出てきた。そういった連中と毎回の如く衝突し、トラブルになったことも少なくなかった。

また、他人と自分を比べることも頻繁で、人がたくさん友達もでき、恋人もできる、女友達もできるのに、自分にはできないことにコンプレックスやストレスを抱くようになった。

当然のことだ。アスペルガー症候群の人間はそういう癖をやるにも独特なものも含め理由があってのことであり、脳の機能の偏りが激しいものだから、好き嫌いもそうだけど、持つこだわりもすごく強い。それが故に、急な予定変更を基本嫌った。ただ、うれしい誤算、台風などの自然災害が原因で自分の頭で決め込んだ予定が狂うことは例外だったけど。

明人が嫌っていたのは「人が人の出す見えない権力(職権とか、人が決めた法律以外の規則)」や「脅し」などで予定を突然変えられることだった。