集中治療室を見に行くと、本当に眠ったままの小夜子がいた。
傷はふさがっていて、命に別条はないそうだ。あとは、彼女の頑張り次第。
そんな愕然とした祐介に声をかける加奈。
「あの子、祐介君のあの小説を読んで、本当に泣いていたよ。ごめんね・・・・・・ごめんねって泣きながら。気持ちを無碍にされたとかそう思っていたでしょうけど、本当はあなたの気持ち、想い全てあの子に伝わっていたのよ。」
「そうやったんか。」
「それから、あの子。友達にはなってないけどフェードノートのあなたの近況、全部読んでたよ。」
「え・・・・・・??」
「あの子、こっそり読んでたのよ。しかも時には笑いながら読んでいたみたい。」
衝撃の事実を知った祐介。
フェードノートを開くと、来てはいなかったけど、宏や祐太も心配のコメントをくれていた。幸助やあかねも。その他、祐介と付き合っているものも含め、総勢60人弱の人間が。
小夜子のページを見るともっとすごかった。彼女は、友達が150人以上いたため十人十色のコメントが来ていた。
読んでいて小夜子の優しい人間性が伝わってきた。
祐介はあんな事件があってから、仕事は本当に年末忙しくなる前日くらいまで休みにしてもらっていた。そう、メンタルケアのために。
そのためもあり、退院した祐介は翌日も病院に来て、小夜子の様子を見に来ていた。
その翌日には、集中治療室から普通の病室に戻された小夜子は意識が戻らないけど、適切な処置が医師から施されていた。
小夜子の家族とも意気投合していた祐介はたまに両親と砕けた話や小夜子の昔話に付き合うこともあった。
そしてそれから数日。毎日祈るように小夜子の手を握りながら、意識回復を祈っていた祐介。
小夜子と再会した時にしたやりとり、行動を思い出した。
「わたし・・・・・・あんなこと書いてないよ!!わたし・・・・・・なりすましのこと、祐介君が犯人だなんて思ってないよ!!疑ってないよ!!」
「分かった・・・・・・!!分かったから・・・・・・そんな顔しないでくれ。泣かなくても、君がそんな子じゃないというのはあの時から知っていたから!!」
泣きながら訴える小夜子をまるで猫をなでるように、優しくそっと小夜子の頭をなでながら落ち着かせていた祐介。
そんな祐介は小夜子に触れた感覚、その感覚を忘れていなかった。
祐介は頭の暗闇の世界で自問自答しようとしていた。
「なぁ、奇跡って、起こるものなのかい??奇跡って信じるかい??なぁ、答えてくれよ!!なぁ、答えてくれよ!!」
「それは、あなたが判断することじゃないんですか??」
そんな祐介に、神様の・・・・・・見えない神様の声が響いた。
「奇跡は・・・・・・その答えは・・・・・・あなたの中にありますよ。答えは・・・・・・あなた自身で探しなさい。きっと難しくないはずだから・・・・・・!!」
神様が照らした光をつかむように、現実に戻った祐介。
その瞬間だった。
「う・・・・・うぅ・・・・・・暖かい・・・・・・手が暖かい。」
彼女が祐介のほうを見る。
「小夜子・・・・・・!!」
「祐介君・・・・・・!!ずっと・・・・・・わたしの手を握ってくれていたのですか??」
小夜子が意識を取り戻したのだった。
そして、この物語は、最終章を迎えようとしていたのだった。
(35)に続く。
