ワインコマンダリー博多誕生から遡ること半年前から有志でワインの勉強会をしておりました。
ソムリエ藤田忠邦さんの講義内容を記します。5000文字制約の為、第9回目の後半です。
 
第4章 世界のワイン(ヨーロッパその3)
ハンガリー
ハンガリーは世界屈指のワイン名門国でありワインづくりの歴史も古い。
近年は東西両陣営にはさまれてぶどう園も一時荒廃したが1956年ワイン法(原産地規制法)が施行され近代的ワイン国として面目を一新しつつある。19万ha 約50万kℓ
緯度的にはかなり北に位置しているが気候的には温暖であり、土壌も火山岩石灰岩のところが多くぶどう栽培適地となっている。ワイン法により全国を14の生産地区に分けているがその中でもトカイが有名でトカイワインはch.ディケム、トロッケンンベーレンアウスレーゼとともに世界3大貴腐ワインとしてその名は響いている。
(トカイワイン)
原料ぶどうは主としてフルミント種(Furmint)が使われる。
タイプ別に大きく7種類に分けられるがその中でも
トカイ・アスー・エッセンシア(Tokaji Aszu Esszencia)
トカイ・アスー
の2つが有名。(アスーとは 糖蜜のような の意)
トカイ・アスー・エッセンシアは貴腐ぶどうのみを集めてプトニョス(Putlonyos)と呼ぶ30ℓ入りの小さな樽に入れフリーランの果実を集めでゲンチ(Gonci)と呼ぶ130ℓ入りの樽に詰め替え発酵熟成する。
トカイ・アスーは貴腐ぶどうを潰してペースト状にしたものを通常のマスト(いわゆるぶどうジュース)に入れて発酵させたものでペーストの分量により6段階に分けられる。 (1put~6putまでのエチケット表示)
 
ブルガリア
ブルガリアは黒海に面し気候風土にも恵まれて、古くからワイン生産が行なわれていたが宗教問題さらには戦乱の影響もあって一時下火となったが、1947年国営企業VINPROMが設立され一大ワイン生産国として復興しつつある。 面積20万ha 生産量35万~50万kℓ
生誕地は主に20ヶ所あるが大きく分けるとバルカン山地の北側と南側では赤ワインが主体、黒海沿岸地方が白ワインが主体となっている。
特徴としては白は若飲みタイプ、赤にはコクのあるものが多い。
 
ユーゴスラビア
中央高原地帯を除く全土でワインが作られ世界10位のワイン生産国 面積28万ha 生産量約60万kℓ
白が多く赤との比は6:4 産地は大きく6つに分けられるがそのうち特にスロヴェニア地方、クロアティア地方が良質のワイン産地として有名。
ユーゴスラヴ・リースリングなど特有の品種と西ヨーロッパ系のぶどうが共存し独特のワインを生み出している。
他の東欧諸国と違って一部民間企業の経営形態が残されている。
 
ルーマニア
ルーマニアも非常に古いワイン生産国で紀元前よりのワインづくりの記録も残されており、現在でも東欧圏最大のワイン生産国の地位を占めている。 面積33万ha 生産量約800万kℓ
1971年にワイン法が制定され フランスに近い種別がなされているがドイツ圏のぶどう園についてはシュペートレーゼ、アウスレーゼ、トロッケンベーレンアウスレーゼといった核付表示が認められている。
ぶどう品種はテーブルワイン用が土着品種、高級ワインは西ヨーロッパ系。 
 
ギリシャ
ヨーロッパで最も古い歴史を持つが、現在では 熱い地中海性気候のため、高級ワインはほとんど生産されず、一方乾ぶどうの生産も盛ん。 面積19万ha 生産量約50万kℓ
サヴァティアーノ種の果実が発酵する前に松脂を加え香りづけを行なったレッツィナワイン(Retina)はギリシャ独特のものでギリシャ全生産量の約半分を占めている。
 
ソビエト連邦
1950年に政府がワイン増産方針を決めてから飛躍的に発展し世界でも指折りのワイン大国となっている。
面積130万ha 生産量300万kℓ
輸入も多く、現在フランスに次いで世界第2位の輸入国。
主な産地は 自然環境に恵まれたグルジア共和国をはじめクリミア半島を含むウクライナとモルダビア、黒海沿岸のロシア連邦共和国、アルメニア共和国など。
多くの原産ぶどう品種をもっているが質的には評価されておらず近年は西欧品種のセミヨン、リースリング、アリゴテ、ピノノワール、カベルネなどを移植し育成している。
現在、この育成園が1/3を占めるとも言われており、今後大幅に生産が増えるものと面われる。

(藤田忠邦氏 1987年12月13日(日)講義資料1-21,1-22,1-23,1-24,1-25,1-26より)