期末テスト | おにいちゃんへ

期末テスト

 生理って痛くて憂鬱だ。何よりショックだ。こんなことをこれから何十年毎月付き合っていくんだろう。せいめいのしんぴ、なんていわないで欲しい。
 怖くなるから。
 自分の体に何が起こっているんだろうと、その頃の私は思ったのだ。
 おにいちゃんとのことで流した血は自然なことだとすぐに受け入れられたのに、何もしなくても流れる血。おなかが痛くなる。時々、熱くなる。


 初めての期末テストは思った以上に点数がよくって、褒めてもらいたい気分になった。誰と言ったら、他にはいない。
 どうだったのと心配顔の母に「まあまあ頑張ったんだから、あんまりうるさいこと言わないといいな」なんて思いながらテストを無造作にわたす。そのまま、居間の電話機を手に取りおにいちゃんの家にかけてみた。
 コール三回目で平日だから会社に出ているであろうことを思い出す。
 あ。
「もしもし……」
 かすれた声に胸が痛んだ。テスト結果を褒めてもらおうとした子供の自分に泣きたくなった。
 風邪による欠勤。
 固まってしまった私を母がいぶかしげに見ている。
「おにいちゃん、風邪で寝てるんだって。つらそう」
 半べそをかいている私の手から受話器を受け取り、大丈夫と母が言っている。庭で早咲きの朝顔がしおれている。


「お見舞いに行ってくるっ」叫んで駆け出そうとした。
「制服くらい着替えていきなさい。風邪らしいから、そんなにあわてなくても大丈夫よ」