その他の小説更新しました
携帯サイト の「小説」を更新しました。
何故そちらに書いたかというと、携帯で見た方がいいくらいの長さ(短さ)だったからです。
携帯でもPCでも閲覧可能となっておりますが、もともと携帯サイト向けのページなのでPC向けは微妙?かな。それともシンプルな分読みやすいかもしれません。
ピアノマン
昨日からニュースでたくさん取り上げられている「ピアノマン」
最初にニュースを聞いたときに、ロマンティックなことでもなんでもなく「カスパーハウザー」を思い出しました。
- 著者: A・v・フォイエルバッハ, 西村 克彦
- タイトル: カスパー・ハウザー
あ、
扉の向こうで人の気配があった。
「おにいちゃん」
一、二、三……。
聞こえなかったのか人の気配は勘違いか、もう一度声をかけようかと思う程の間があってドアが開いた。チェーンがかかったまま、無言のまま。
「大丈夫?」
「……来たんだ」
かすれ声。
こちらを見ない。
唐突に咳き込み始める。私はバカみたいに見ることしかできない。間にドアが無くっても、多分。
泣きたくなるような三十秒が過ぎた後、こっちを見ないまま一旦ドアが閉まり、再びあいたときにはチェーンが外されていた。
おにいちゃんはその時なにかを受け入れたのだろうか。それとも捨てたんだろうか。
今になっては、尋ねることもできない。
セーラー服を脱いで
母からおかゆの作り方のメモをもらっておにいちゃんの家へ行った。
おばさんは、仕事に出ている。おにいちゃんの家は父親がいなくておばさんはフルタイムで働いている。必要ならば連絡することにして、風邪で大したことないという言葉を信じた。
母の言いつけ通り、セーラー服は着替えて、おかゆ分のお米を持って。急ぎ足の道行きは、隣り駅なのに買う切符を一瞬迷う。
チャイムを押した。返事が無い。もう一度。
息ができなかった。
夢
が、昼まで侵食してくる
と、
やったことないドラッグ
夜中は、突然の救急車
こない救急車を永遠の五分間
待ったことが、ある。
部屋をあったかくしてくれるなら、脱いでも、いいよ
冷たいのは嫌い。大嫌い!
生臭い息を吐く男にニヤニヤ笑いで手を握られても。
制服は脱がせなかった。
でも、言い訳で制服じゃないときに
言いなりに、なってしまった
期末テスト
生理って痛くて憂鬱だ。何よりショックだ。こんなことをこれから何十年毎月付き合っていくんだろう。せいめいのしんぴ、なんていわないで欲しい。
怖くなるから。
自分の体に何が起こっているんだろうと、その頃の私は思ったのだ。
おにいちゃんとのことで流した血は自然なことだとすぐに受け入れられたのに、何もしなくても流れる血。おなかが痛くなる。時々、熱くなる。
初めての期末テストは思った以上に点数がよくって、褒めてもらいたい気分になった。誰と言ったら、他にはいない。
どうだったのと心配顔の母に「まあまあ頑張ったんだから、あんまりうるさいこと言わないといいな」なんて思いながらテストを無造作にわたす。そのまま、居間の電話機を手に取りおにいちゃんの家にかけてみた。
コール三回目で平日だから会社に出ているであろうことを思い出す。
あ。
「もしもし……」
かすれた声に胸が痛んだ。テスト結果を褒めてもらおうとした子供の自分に泣きたくなった。
風邪による欠勤。
固まってしまった私を母がいぶかしげに見ている。
「おにいちゃん、風邪で寝てるんだって。つらそう」
半べそをかいている私の手から受話器を受け取り、大丈夫と母が言っている。庭で早咲きの朝顔がしおれている。
「お見舞いに行ってくるっ」叫んで駆け出そうとした。
「制服くらい着替えていきなさい。風邪らしいから、そんなにあわてなくても大丈夫よ」
う、ん
誕生日にネクタイを買ってみた。
三千円くらいの他愛の無い、つまんない柄のもの。
使ってもらいたかったから、キャラクターとか派手な色を避けていった。いっそハート柄とかにしたらよかった。
バカみたい!
って叫べたら、いいのに。
プレゼントの包みを開いたばかりのそれははしゃいでしまう程いとおしかった。それで手首を拘束されたら、動けない。
細い糸の端を机の脚に縛り付けているだけでも、糸を切るなと言われたら、誓いを破れば色情狂みたいな、理不尽な緊張があった。やわらかくやさしく両手はネクタイ(やっすい馬鹿みたいな柄)、左足の足首に白い細い糸。
開いてごらん
とおにいちゃんは言った。
痛い。
熱い。
おにいちゃんは見たまま、私は見られたまま。内股がしびれる。
閉じていい?
精神年齢鑑定
TBしていただいた◆Ahaha堂おばはん本舗◆ さんの記事で知った、りゅうりゅうの精神年齢鑑定 をしてみました。
鑑定結果:
あなたの精神年齢は22歳です
あなたの精神年齢は、もう少しで大人です。しかしまだまだ若者らしさがあり、青春を謳歌している年頃です。社会的には、ある程度人と接する術を知っていて、普通に暮らすことはできます。
実際の年齢との差:3歳
あなたは実際の年齢よりほんの少し大人びています。時々友達に頼られたりしませんか?まぁそうはいってもたいして同年代の人とかわりありません。ごく普通に育っているようです。
幼稚度:52%
あなたは小学校低学年並みの幼稚さを持っています。まだまだ保護者が必要です。友達とケンカしても泣かないくらいの勇気を持ちましょう。
大人度:39%
あなたからは少しだけ大人っぽさが感じられます。しかしまだまだ大人とは呼べません。
ご老人度:17%
あなたはほんのわずかですが『おじいちゃんっ気』が感じられます。注意しましょう。
あなたとお友達になれそうな人:
ドラえもん
だそうです(フフフ
確信
その日はそれで帰った。
次におにいちゃんに会ったのは、夏休み前、初めての期末テストが返されている頃だった。
あの日以降おにいちゃんに連絡をしなかった。おにいちゃんはもともとよほど用事が無ければうちに電話をかけてくる人じゃない。だから、その間どんなつもりでいるのか、私には全然わからなかった。
もっと言ってしまえば、私は自分自身がどんなつもりでいたのかだってわからなかった。混乱していたが嫌悪はしていなかった。求めていたがあせっていなかった。
おにいちゃんがはなれていくとは全然思わなかった。思い浮かばなかったのではない。離れていく可能性は思いついた。でも絶対離れないと知っていた。知っていた、としか言いようが無い、それは強い思いだった。
けれど確信と安心はつながらない。突然逢った未知に押しつぶされそうになっていたんだと思う。
おにいちゃんの部屋へ初めて訪れた日から一週間後、私は初潮を迎えた。
電車で
今日痴漢にあった。
電車に乗って学校に行く。
女性専用車両が設置された電車は、時間が制限されていて一間がある時だけその時間に乗ることになる。
制服を着ていた頃、よく乗る車両に三十くらいの人が乗っていて、その人はとても白い感じの人で細いのに妙にやわらかい手をしていた。手をしていたとわかるのは、その人は腰から上に手を上らせた後、手を握ろうとするからだった。
執拗に追ってくる柔らかで冷たくてしっとりとした手。何故手を握ろうとするのか。
満員電車でスカートがずり上がってくる恐怖とは別の恐怖だった。
制服を脱ぎ、通学電車も変わった。よく乗る電車に腰を押し付けてくる人がいる。逃れても、駅に停車するたび追って来る。