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真鍋優次郎のワインレポート

趣味はワイン収集と食べ歩きの東京住まい30代コンサル男子☀️フランスワイン専門です✨

フィリポナのキュヴェ「1522」にネーミングされているとおり、フィリポナ家がシャンパーニュ地方のアイ村に定住したのは1522年である。それ以来同家はシャンパーニュを造り続け、フィリポナ社を設立したのが1687年である。フィリポナの自社畑は格付平均98%を誇る20haを所有し、自社必要量の35%を賄っている。残りの65%は、主にヴァレ・ド・ラ・マルヌの契約栽培家から葡萄を買い付けている。

 

 

 

1990年は世紀のヴィンテージとも言われ、シャンパーニュでは1990年が1番好きなヴィンテージだと答えるファンが1番多いのではないだろうか。私自身も1990年の魅力に酔いしれた幸せな経験を何度もしている。この「グラン・ブラン」はコート・ド・ブラン地区の4つのグランクリュと2つのプルミエクリュのシャルドネで造られているそうだ。

 

 

 

 

 

グラスに注いだ瞬間から洪水のように溢れだす複雑なアロマに、安易な気持ちでは飲んではいけない、なにかただのシャンパーニュではない恐ろしいほどのスケール感が伝わってくる。
熟成によるカラメルとモカ香が支配的で、蜂蜜、アーモンド、まだ若さも感じるフレッシュな柑橘系果実に、たくさんの花々のアロマ、
非の打ち所がない見事なブラン・ド・ブランである。
やはり
1990年のプレステージ級のシャンパーニュは飲む者を飲み込んでしまうような巨大なスケールを持ちあわせている。たしか「グラン・ブラン 1990」の日本国内のリリースは微少な本数しかされなかったため、もう二度と巡り合うことはないだろうが、このシャンパーニュを生涯忘れることはない。
こぼれ落ちる笑顔と感動のため息が止まらないシャンパーニュであった。
 
 

フィリポナ グラン・ブラン 1990
参考価格:26,000円
(※現在は4万円~6万円まで高騰 2022年12月追記)
個人評価:98点

 
 
5大シャトーの1つであるシャトー・ムートン・ロスチャイルドを所有するロスチャイルド家が考案したシャンパーニュが「バロン・ド・ロスチャイルド」である。

シャンパーニュ事業に参入してまだ日が浅いため、現段階のフラッグシップがこのノン・ヴィンテージの「ブラン・ド・ブラン」である。
コート・デ・ブランの4つの畑(アヴィーズ、クラマン、ル・メニル・シュール・オジェ、オジェ)の葡萄を使用している。

若々しくフレッシュで元気いっぱいな口当たりだが、ハーブや白い花々の複雑なアロマ、豊富なミネラル、突き抜ける爽快感など、さまざまな要素をエレガンスにまとめている。さすがはロスチャイルド家といったところである。まだまだ発展途上であるため、スケールはさほど大きくないが、食事を彩るポテンシャルを十分に持ち合わせており、巧妙に計算されている印象を受けた。
今後どのようにシャンパーニュ事業を拡大していくかがとても楽しみである。

バロン・ド・ロスチャイルド ブラン・ド・ブラン
参考価格:10,000円
個人評価:90点

1818年にニコラ・フランソワ・ビルカールと、その妻であるエリザベス・サルモンによって、マレイユ・スール・アイ村に設立されたビルカール・サルモン。自社畑は10haほどで、自社畑以外は主にエペルネ周辺20km圏内の、合計140ha(35Cru)の契約農家から葡萄を購入している。近年ではメゾンのロゴを、アルファベット[B]と[S]の曲線を織り込んだ形に改定し、話題となったことは記憶に新しい。

今回の「ニコラ・フランソワ」は、メゾン創始者“ニコラ・フランソワ”へのオマージュとして、1964年に誕生したキュヴェである。

 

 

 

イエローゴールドの輝きに、コート・デ・ブラン特有の繊細かつ複雑なシャルドネ香が支配的である。ピノ・ノワール特有の力強く豊かな口当たりも感じ、ストラクチャーがしっかりしている。この「ニコラ・フランソワ」は、フラッグシップ商品ではないが、スタンダードよりも遥かに良質なシャンパーニュである。
上質な葡萄そのものの清涼な息吹を感じることができた素晴らしい体験であった。
 
 

ビルカール・サルモン ニコラ・フランソワ 1998
参考価格:12,000円
(※現在は2.5万円~3万円まで高騰 2022年12月追記)
個人評価:93点

 
 
 

1959年に植樹されたアヴィズの単一畑「ラ・フォセ」のシャルドネから造られるこのキュヴェは、この畑を耕していた今は亡き白馬の名前「ヴェヌス」からネーミングされた。「ラ・フォセ」は石灰質と粘土質が混じる土壌であり、ここのシャルドネは樹齢50年を迎えている。

 

 

 

また、馬で耕作する場合と機械で耕作する場合によって味わいに差が出てくるのかという実験的な区画でもある。馬は機械に比べると軽いので土を踏み固めることはなくなる。土が固められずに柔らかいと言うことは、根が地中奥深くに伸びやすくなり、石灰質の土壌に達してミネラルを吸収し易くなると言うことだ。かの有名なDRC(ドメーヌ・ロマネ・コンティ)も馬で耕作しているのは有名な話だ。

 

 

綺麗で細やかな泡立ちに、若さを感じる淡いイエロー、青リンゴや白い花々にヘーゼルナッツなどのフレーヴァー、ノン・ドサージュながら上品でほのかな甘みに、アヴィズらしい複雑なアロマ。
特筆すべきは豊富なミネラルだ。アヴィズはミネラルが豊富なのが特徴でもあるが、この「ヴェヌス」は郡を抜いており、ジャック・セロスに迫るほどだ。
また「ヴェヌス」がノン・ドザージュである意味も飲んでみて理解できる。もしドサージュをしてしまったらこの「ヴェヌス」の果実味やミネラルを隠してしまうだろう。
時間が経過するにつれ、エレガントかつ骨太な味わいにどんどん変化していく。秘めているミネラルの層が底なしかと思えるほどだ。
前回のラヴィゾワーズと今回のヴェヌス、個人的には「ヴェヌス」が好みであったが、どちらも甲乙付け難い素晴らしいシャンパーニュであった。

 
 
 

アグラパール ヴェヌス 2005
参考価格:12,000円
(※現在は2万円~3万円まで高騰 2022年12月追記)
個人評価:93点

 
 

1984年に現当主の4代目パスカル・アグラパールの曽祖父アルチュール・アグラパールにより設立されたメゾン・アグラパール。アヴィズを拠点としており、オジェ、クラマンなどに60ほどの区画を所有している。そして近年アグラパールに対する世間の評価が大変上がっている。それは現当主のパスカルとファブリスが、耕作に馬を用いたり、古代品種の混植を試みたり、さまざまキュヴェをリリースしたりと、試行錯誤を繰り返す熱意と努力が酒質の向上に結びついているのだろう。

 

 

 

 

アグラパールには土壌のタイプをコンセプトにしたキュヴェが3種類ある。
「ミネラル」は石灰質の土壌、「ラヴィゾワーズ」は粘土質の土壌、「ヴェヌス」は石灰質+粘土質の土壌を表現したキュヴェである。コンセプトとしてはジャック・セロスやジャクソンのリュー・ディ・シリーズに少し似ている。

 

 

今回の「アヴィゾワーズ」は粘土質の多いアヴィズの2区画のシャルドネから造られている。ドライフルーツに蜂蜜やクリームブリュレの甘い香り、アヴィズらしくミネラルも豊かで、力強さと複雑さを兼ね備えた味わいだ。2002年とまだまだ若いながらも、グレート・ヴィンテージというだけのことはあり、果実の旨みが口いっぱいに広がる。
アイやアンボネイのシャンパーニュは時として季節を選ぶことがあるのだが、上質なアヴィズのシャンパーニュは季節を選ばずに安心して飲むことができる。
夏の夜でもダレることなく最後まで楽しめた優雅なシャンパーニュであった。

アグラパール ラヴィゾワーズ 2002
参考価格:11,000円
(※現在は2万円~3万円まで高騰 2022年12月追記)
個人評価:93点

 
 
 

1930年に創業したドメーヌ・エグリ・ウーリエ。1990年に4代目当主として「ピノ・ノワールの魔術師」と謳われる現在の当主フランシス・エグリ氏が就任した。フランシス・エグリ氏はすべての畑の手入れを手作業で行い、有機肥料を用い、栽培を無農薬に近い方法に転換させた。また、1996年からはドミニク・ローラン氏の代名詞となっている「マジックカスク」(魔法の樽)を使用しはじめた。「マジックカスク」とはトロンセの森の樹齢250年以上のオーク材を、通常の樽よりも厚い造りにしたドミニク・ローラン氏自作の樽である。

 

 

 

 

エグリ・ウーリエは個人的にも思い入れが強い(どっぷりハマった)ドメーヌでもある。シャンパーニュに魅了されはじめた頃に、エグリ・ウーリエのドラディションを飲み、その凝縮した果実味に衝撃を受けたのを今でも覚えている。当時トラディションは4千円台で購入でき、この価格でここまでストラクチャーがしっかりしたシャンパーニュは他になかった。それから1年間はずっとエグリ・ウーリエを飲んでいた記憶がある。今でもそうだが、トラディション、V.P、ミレジム、ロゼなど、どれをとっても納得させられるクオリティを誇っている。

今回の「レ・クレイエール」はアンボネイ最高峰とも言われる区画で、樹齢40年以上のピノ・ノワールのみを使用している。チョークを意味する「レ・クレイエール」は、その名の通りチョーク質におおわれた深い土壌である。近年鬼才とも謳われるエルヴェ・ジェスタン氏もこの区画が特異質だと感じ取ったからだろうか?最近ドメーヌ・マルゲも「レ・クレイエール」のリリースを開始した。

 

 

 

 

デゴルジュマンは今から10年前の2004年である。熟成したブラン・ド・ノワールらしい淡いオレンジ色、ハツラツとした泡。膨らみのある蜜りんごと、綺麗に散りばめられた花々と柑橘系の香り、凝縮した果実味、豊富なミネラル、大地を感じるほどの力強さがある。ここまでボディに厚みがあると余韻もかなり長く、一口飲む毎に自然と笑顔が溢れてしまう。シャンパーニュには様々なブラン・ド・ノワールがあるが、エグリ・ウーリエのブラン・ド・ノワールは一種の醍醐味である。

 
 
 
 

エグリ・ウーリエ  レ・クレイエール (デゴルジュ後10年)
参考価格:14,000円
(※現在は3.5万円~4万円まで高騰 2022年12月追記)
個人評価:93点

 
 
 

1911年、皮商として成功を収めたウジェーヌ・エメ・サロン氏が、友人をもてなすために自家消費用に作りはじめたシャンパーニュが「サロン」である。美食家としても有名であったサロン氏のこだわりは、ル・メニル村の単一年のシャルドネのみでシャンパーニュを造ることであった。複数の品種やクリュやヴィンテージを組み合わせるアサンブラージュが王道のシャンパーニュにおいて、当時としては単一クリュ・単一品種・単一年のスタイルは大変珍しかった。1921年に商品として発売されると、そのこだわりのシャンパーニュは瞬く間に世の中に認知された。

 

 


そんなブラン・ド・ブランの代名詞とも言える今回のシャンパーニュが「サロン」である。

数年前に1997年を飲んだが希薄でピュア、強気な価格設定の印象が残っている。

 

 

 

 

 

今回の1999年も液体は淡い黄色、泡は活発できめ細かい。ブリオッシュやナッツ、青りんごやライムの柑橘系のフレーバー、軽く塩気を感じるが、かなりみずみずしい。余韻は柑橘系のさわやかな風味で長めだが、豊富なミネラルや複雑なフレーバーは感じられない。1997年と同じく終始希薄でピュアなワインだ。全体として率直に美味しいと言えるが、やはり今回も価格を考えると「高飛車」「肩透かし」と言わざるを得ない。
そういえば、歴代のサロンを飲んできたあるソムリエが「昔のサロンは美味しかったな~」とつぶやいていたのを思い出した。いつかはそんな「昔のサロン」を飲んでみたい。

 
 
 

サロン 1999
参考価格:27,000円
(※現在は10万円~13万円まで高騰 2022年12月追記)
個人評価:87点

 
 

1829年にドイツ人のジャック・ボランジェ氏によって創業された家族経営の「ボランジェ」。メゾンの拠点はアイ村のため、ボランジェのセパージュはどれもピノ・ノワールが6~7割りを占め、男性的でボリュームのある味わいが特徴である。また、ボランジェを語る上で欠かせない存在が、「フランセーズ」や、今回の「R.D.」の生みの親である「マダム・ボランジェ」である。彼女は1941年から30年に亘り、メゾンの最高責任者としてボランジェの発展に大きく寄与した。

 

 

「最近デゴルジュマンされた(Recemment Degorge)」という意味の「R.D.」。中身はボランジェのフラグシップである「グラン・ダネ」と同じだが、「R.D.」のコンセプトはカーヴで長期熟成させることである。熟成期間は「グラン・ダネ」で5年以上なのに対して、「R.D.」は8年以上である。

 

 

 

デゴルジュマンは2010年7月なので、そろそろ熟れ始める時期である。軽いバターやアーモンドに、レモンピールやライム、ミネラルや乳酸も感じられ、思いのほかみずみずしくピュアである。ストラクチャーや酸のバランスは申し分ないのだが、物足りなさを覚えてしまう。97年のグラン・ダネを飲んでいなので判断できないのだが、昨年飲んだ99年のグラン・ダネよりも遥かにフレッシュでドライな印象。綺麗に熟成された証拠でもあるのだが、ドサージュの量の問題なのか、ヴィンテージの弱さからなのか、パワフルさと複雑さに欠けている。
傲慢さや荒々しさを失い、魅力に欠けたJ.ボンドのようであった。

 
 
 

ボランジェ R.D 1997
参考価格:18,000円
(※現在は4万円~6万円まで高騰 2022年12月追記)
個人評価:90点

 
 
 

メゾン設立は1808年で約200年の歴史を持つアンリオ。シャンパーニュ地方では珍しくなった家族企業を守り続け、近年ではブシャール・ペール・エ・フィス社やウィリアム・フェーブル社を傘下に収めている。そのアンリオの神髄と言えるのが、このフラッグ・シップである「アンシャンテルール」だ。「アンシャンテルール」とはシャンパーニュが発酵するのを見守る職人を意味する。

 

 

95年は展葉時に氷点下の気温に見舞われるものの、8月には夏の猛暑、9月は涼しい夜が続き、成熟が十分に行われた年となった。91~94年まで成功を収めることができなかったシャンパーニュ地方にとって、90年以来の恵まれた年となった。

 

 

 

今回はそんな1995年のアンリオ 「アンシャンテルール」である。キャラメルに近い熟成香、ヘーゼルナッツ、オレンジピール、アジアンスパイス、ハーブといった複雑なアロマがグラスいっぱいに広がる。優美で繊細な泡立ちで、口に含むとクリーミーで非常にヴォリュームがあり、長い余韻を生み出している。若さと熟成のいいとこ取りをしたいなら、まさに今がピークだろう。
若さと熟成を兼ね備えた華麗なるシャンパーニュであった。

 
 

アンリオ アンシャンテルール 1995
参考価格:14,000円
(※現在は2.5万円~4万円まで高騰 2022年12月追記)
個人評価:95点

 
 
「遅い澱抜き」と名付けられたシャンパーニュである。
類似コンセプトの商品としては「クリュッグ コレクション」「ドン・ペリニヨン エノテーク」「ボランジェ R.D」が有名だろうか。メゾンでの熟成期間が長いため熟成の速度くなるため、往年のシャンパーニュをなるべくフレッシュに飲めるのが特徴だろう。
同一のヴィンテージ・シャンパーニュで、早い段階で手元に置いて長期熟成か、こういったメゾンでの長期熟成か、どちらが好みかとたまに聞かれることがある。熟成の速度は人それぞれ好みがあるので理由は述べないが、私は前者である。

1988年は日照量が多くリンゴ酸が多く長期熟成型と言われている。安定性と堅実性を兼ね備えたヴィンテージだ。また、シャンパーニュはこの年から3年連続恵まれた年になったことから1988、1989、1990は「3部作」などと呼ばれることもある。

今回のタルディフはデゴルジュ後7年程度経過。熟成がひと目でわかる黄金色の輝き。泡はきめ細かく、ふつふつと上がる程度。カスタードや栗のニュアンスが支配的で、ジャスミンの花の香り、若干のトリュフ香も感じれ複雑でコクのある味わいだ。
香り味わいともにピークは過ぎているが、余計なものが削ぎ落とされ落ち着いた味わいだ。やはり熟成したシャンパーニュが好きだと再認識させられる。
仲間とワイワイと飲むようなシャンパーニュではなく、就寝前に一日を振り返って、ゆっくりと飲みたい癒し系のシャンパーニュであった。

ジャクソン デゴルジュマン タルディフ 1988
参考価格:25,000円
個人評価:92点