「相手が自分をどう思っているのか?」
その疑問に答えを出す必要が本当にあるのでしょうか?
「でも、どうしてもその答えが知りたい」
相手が自分のことをどう思っているのか?
と、いう質問の答えを自分の価値観の中だけで見つけようとしても、答えは見つからない気がします。
相手の価値観を理解しないとその答えは見えてこない。
それ以前に、
新しく一員になろうとしているその組織のことが分からなければ、何も答えは見つからないと思うのです。
例えば、
佐江照さんは、根田見さんのプライベートのことを何も知りません。
会社の中で事務職のトップに長年君臨する彼女のことしか知りません。
もっと正確に言えば、
派遣から見た根田見さんの事しか知らないのです。
佐江照さんが社員になれば、根田見さんの態度も全く変わるかもしれない。今までの根田見さんの態度を見ていると、その可能性もあり得るのだということがわかります。
でも、佐江照さんにはそのことがまだわかりません。
当然のことですが、
一点の方向からしか見なければ、同じ景色しか見えません。
でも、
角度を変えれば、景色は変わります。
人もそれと同じです。
立場や環境が変われば、昨日と今日で、全くの別人になることもあり得るのです。
派遣と社員という立場はそれくらいの差を生むのです。
実は、佐江照さんは前の職場でも派遣から社員になりました。
派遣の時は社員との関係はとても良好で、皆から好かれ、皆から求められて社員になったのに、社員になった途端、同僚や上司との関係がうまくいかなくなり、
「パワハラを受け、精神的なダメージを受けた」
と、いう理由で彼女は退職したのです。
今回も前回のパターンと非常によく似ています。
ただ、今回は、派遣の状態で既にパワハラを受け、それでも辞めずに今回は社員になる決意をしたのです。
だから、前の経験は、もしかしたら全く役に立たないかもしれません。
礼に始まり礼に終わる
同じパワハラでも、十人十色です。
職場環境が変われば全く違うパワハラが存在するし、相手が変われば全く違うパワハラを受けます。
前の経験がパワハラを跳ね返すパワーになる人もいれば、トラウマとなって2度と会社員として働くことができなくなる人もいます。
組織として、パワハラ対策をしている企業は増えてきました。
社内に「パワハラ相談室」なるスペースを設けているところもあります。
ちなみに、佐江照さんの会社にも名前こそ違いますが、同じような機能を有する部署があり、外部からカウンセラーを呼んで、社員の相談に応えられるようにしています。
パワハラに対する懲罰も厳しくなっています。
だから、そういった会社では、表立ったパワハラ件数は年々減ってきています。
でも、果たして本当に減っているのでしょうか?
実際にパワハラが起きている現場は、
個 対 個
です。
今、そこにあるパワハラ問題は、常に新しいパワハラ問題であって、過去の事例に照らし合わせて解決できる問題など、ほとんどないのです。
わたしも何度かパワハラ相談を受け、一緒に解決の道を探る作業をしてきましたが、新しい問題を相談されるたびに、
「全く新しいパターンですね」
と、感じることばかりです。
「わたしと同じようなパターンの方はいましたか?」
そう聞かれれば、
「パワハラは似て非なるものがほとんどです。同じようなパターンの方はいましたが、前の解決法があなたに合っているとは限りません。状況が似ていても、原因は違うかもしれない。だから、一つ一つじっくり探っていきましょう」
そう言うのです。
そして、
パワハラ問題に限らず、コミュニケーションコーチングで必ずお伝えすること。
それが、
人と会って話をする時は、どんな時でも、常に、
初対面の時の緊張感を持って、
初対面の時の礼儀をわきまえて、
初対面の時のトキメキを抱いて。
家族や親友など、本当に心底、心を許し合えている相手にわざわざ初対面の時の気持ちでいる必要はありません。
でも、ビジネスの世界では、同僚だろうが、部下だろうが、長年良好関係にある取引相手であろうが、
”初対面の時のような”
この意識や気持ちがとても大切である。
わたしはそう思っていますし、ほんの少しだけでいいから、
「そのことを意識されてみてはどうでしょうか?」
と、提案をさせていただいているのです。
『礼に始まり、礼に終わる』
と、いう言葉があるように、ビジネス世界だけでなく、人間関係の基本です。
取引相手にだけ心がけていれば良いものではありません。
社内でも同じなのです。
社員は家族ではないし、親友ではありません。
しっかり礼をわきまえないと、誤解を生む場合があります。
社員は家族ではないし、親友ではないけれど、家族や親友のように礼を尽くすことを忘れてはいけません。
パワハラをしない。させない。されない。
パワハラをしない。させない。されない。ためには、
”初対面の時のような”意識を持ち、
どんな相手であれ、
「礼に始まり礼に終わる」
その意識をもつ。
それだけです。
尊敬できない相手であっても、卑劣なことをしてくる相手であっても、そんなあなたの態度は、一貫性をもち、それが毅然とした態度に現れてきます。
必ず!
つづく
