がまん。それが無理なら逃げてもいい。がんばる必要はない。
4月になり、新年度が始まりました。
同級生のお母さんの一人が、緑子さんにこんなことを言ってきました。
「黒実さん、仕事でもいろいろあったみたいだし、お仕事も辞めたんじゃないかな。だから、幼稚園に転園したんだと思う。緑子さんが黒実さんを攻めるようなことを言ったのも影響したんじゃない?」
どうやら、被害者である緑子さんが完全に加害者扱いにされていたのです。
噂は、噂を呼びます。緑子さんがパンジー会の役員会議に初めて出た時には、
「緑子さんが黒実さんを辞めさせたんでしょう?どうやって辞めさせたの?だって、あの人、ちょっと変だったもんね」
「なんで、わたしが辞めさせたみたいな話になってるんですか?」
「だって、いろんな人が言ってたよ。あたしも聞いたし。あれ?誰が言ってたんだっけ?」
要するに、ママ友にとって、
”真実なんてどうでもいい”
と、いうことなのです。
噂話が一通り一巡して、もっともおもしろい話が、”ママ友の話”として、残る。
それだけのことなのです。
『人の噂も七十五日』と、言いますが、ママ友の噂話は持って一ヶ月でしょう。
「緑子さんって怖いね~」
「あの人には近づかないほうがいいよね~」
態度が露骨なママ友は、そういう態度をあえて見せるようなことを平気でやってきますが、自分に直接、被害が及ばなければ、大抵のことは忘れてしまいます。女子中、高生のいじめと同じ。
一ヶ月もすると、
「緑子さん、あのときは大変だったね~。実は、あたし、黒実さんに言ったんだよ。もう一度、役員を決めなおしたほうがいいって。でも、緑子さんが引き受けたって聞いたから。なんでも手伝うから言ってね」
あのとき、緑子さんを一番攻めていたママ友に限って、こういうことを言ってきます。
だから、
嵐が過ぎ去るまで、じっとがまん
悲しいことですが、他に方法はないのかもしれません。黒実さんは、その”がまん”に耐えられなくなったのかもしれませんね。
子供より、まず、自分。自分が壊れる前に逃げる。
そういうことだったのかもしれません。
でも、それも、とても大切なことだと思います。学校でいじめにあうと、
「逃げることも大切」
と、いう言葉をよく聞きます。
「がんばらないで」
と、いう言葉も。
がんばりようのないことは、がんばる必要はありません。逃げてもいいんです。
そう思います。
だからといって、現実問題として、逃げることができない。
だから、難しいんですよね。
もしかしたら、黒実さんは、
ご主人の協力があったからこそ、逃げることができたのかもしれませんね。
そういう意味では、
いまや、夫の協力は、必要不可欠です。がまんするにしても、逃げるにしても。
とはいえ、
公立の保育園から公立の保育園は転園したくても、ほぼ不可能です。認可保育園だと月謝が全然違います。仕事をしていれば幼稚園は無理です。
と、なると、逃げるは現実的には無理。
やっぱり、
がまんするか…、
とことん、闘うか…。
さて、とことん、闘うことを選んだ緑子さんの苦悩…。
当然ですが、卒園まではまだ1年もあります。
まだまだ、続くのです。
つづく
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