こんにちは。風宏です。
いつもブログを読んでくださってありがとうございます。
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では、社員を追い込む〜の続きです。
信頼関係がなくなるとき
「何事もなかった」と、思い込むこと全てが間違いというわけではありません。
そのときは、被害にあっても、事を大事(おおごと)にしないということが、良い結果を招くこともあります。
前回の号で、同僚記者から、
「正しいことが全てとは限らない」
と、指摘されたわたしですが、やはり、黙っていることはできない。
それは、
まだ、立ち直る余地のある人に、
「それは悪いことだよ」
と、言ってあげないことのほうが、よほど冷たい人間だと思うからです。
若いころ、
「昨日、ガキから1000円カツアゲしたよ」
そう自慢する友人がいたとします。
同じ不良仲間たちは、
「ウケる〜」
などと言って、それを咎(とが)めたりしません。
果たして、それが、優しさでしょうか?
わたしはとても、冷たい態度だと思います。
だから、わたしはついつい言ってしまう。
悪事を指摘すること、それが、わたしの「情け」です。
この性格ばかりはどうにも治らないようです。
その事実を知っても、わたしも貝のように黙っていればよかったのでしょうか?
その犯罪を黙って見過ごすべきだったのでしょうか?
いやいや、無理無理。
やっぱり、本人に言ってしまう。
その結果、わたしは、とんでもない事件に巻き込まれることになるのです。
冒頭の話に戻ります。
詐欺太郎は、わたしから指摘された事案がなかったかのように、わたしにすり寄ってきていました。
この当時、わたしは、岡太郎(仮名)という編集者と3年くらいコンビを組んで仕事をしていました。
編集者としての能力でいうと、ズバ抜けたセンスの持ち主で、次々とスクープや話題の記事を世に送り出していました。
彼と仕事をするのは楽しくとても刺激的でした。
わたしが評価されたのも、彼と仕事ができたおかげといっても過言ではありません。
ただ、彼は口が悪い。
口の悪さもズバ抜けていて、彼の能力を理解できない人からみれば、ただの口の悪い喧嘩っ早い問題児にしか見えなかったかもしれません。
彼の下で働く編集や記者で、立ち直れなくなるくらい罵倒(ばとう)された人間はたくさんいます。
そんな彼が、なぜ、わたしと気が合ったかというと、わたしは、彼より年下ですが、彼がどんなに威圧的な態度に出ても、真違っていると思うときは、同じテンションで言い返していました。
となると、どうなるか?
本気の喧嘩になります。
わたしと岡太郎さんは、ことあるごとにぶつかり、編集部で大声で怒鳴りあうような喧嘩をしていました。
でも、それは、お互いが本気で良い記事を作る上で妥協を一切しなかったからであり、本気で言いたいことを言い合える関係だったからです。
だから、わたしの頭の病気(脳腫瘍)のことを最初に伝えたのも彼でした。
術後、最初に見舞いに来てくれたのも彼でした。
金銭的な面で、入院中の家族のことを支えてくれたのも彼でした。
しかし、わたしが病気から復帰したとき(2001年)には、彼はすっかり仕事に対する意欲を失っていました。
編集部にいる時間が少なくなり、ネタを探してくることもなく、さっさと退社してしまう。
ことあるごとに、「ああ、もうこの仕事飽きたな〜。異動したいな〜」と、言うようになっていました。
だからといって、一つ一つの案件をしっかりコントロールしてくれれば文句はないのですが、それも適当。
わたしは何度も爆発しました。
「もっと真剣にとりくんでください」
「いいんじゃない、適当で」
「だったら担当するなよ!」
「俺だってやりたくないんだよ」
「こっちまで巻き込むなよ!」
そんな言い合いを幾度やったことでしょう。
「ああ、また、始まった」
と、周りが呆れるほどの険悪な雰囲気が、わたしたち二人を覆っていました。
悪魔のささやき
そんなとき、編集部ナンバーツーの上司がわたしを呼びました。
「実は、岡太郎のことで聞きたいことがあるんだけど」
「はい」
「実は、岡太郎のことで、まことしやかに変な噂が出ている。彼のことに詳しいきみにいろいろ聞きたいと思うんだが、いま、時間ある?」
「はい。大丈夫です」
「じゃあ、ここで話すのもなんだから、外に行こう」
そう言って、連れてこられたのが、会社の近くの喫茶店でした。
わたしとその上司が席に着くなり、
「遅れました。もう、話始まってます?」
そう、言いながら次に現れたのが、詐欺太郎でした。
わたしには、事情がさっぱり飲み込めません。
岡太郎にとって、よくない話であることは、わたしもわかりました。
上司「実は、岡太郎が会社のお金をごまかしているって話があってね…」
わたし「えっ!?」
上司「そうなんだよな〜?」
詐欺太郎「はい。どうやらそのようですね〜」
詐欺太郎が物知り顔でうなずきます。
わたし「はっ!?」
わたしは、詐欺太郎の顔をマジマジと見ました。
詐欺太郎の表情はまったく変わりません。
その詐欺太郎が口を開きます。
詐欺太郎「これはあくまで噂なんだけどね。あの人(ちなみに詐欺太郎は岡太郎の後輩です)、最近、編集部にあまりいないよね。どうやら、会社を抜け出して近くに住んでいる愛人のところに行っているらしいんだよ。そういうこともあって、全然仕事そっちのけでしょう。風くんもそうとう迷惑を被っているよね」
上司「そうなの?(わたしに向かって)」
わたし「愛人のことは知りませんが、仕事に関しては確かに困ることが多いです」
上司「具体的にはどういうことがあった?詳しく聞かせて欲しいんだけど。こういう記事をやったときはどうだったとか。経費のこととかも調べたいから、思い出せるだけ全部、話してほしいんだよ」
わたし「岡太郎さんが会社のお金をごまかしているって、本当ですか?根拠あるんですか?」
上司「あるんだろ?(詐欺太郎に向かって)」
詐欺太郎「ええ、まあ、いまいろいろ調べてるんで。まだ、はっきりとはしてませんけど、いろいろ言っている人もいるんで。だから、一番彼のことに詳しい風くんに聞きたくってさ」
わたし「じゃあ、証拠があるわけじゃないんですよね」
詐欺太郎「いまはね。でも、確実にやってると思うよ。毎晩、六本木で飲み歩いてるしね。普通、愛人囲えないでしょ。限りなく黒に近いと思うな」
わたし「・・・・・」(それはおまえだろ!)
思いましたが、口にはしません。上司が詐欺太郎の悪事のことを知らない可能性があります。
それ以前に、こうやってわたしの眼の前で抜けしゃあしゃあと言い放つ詐欺太郎の心理がまったく理解できません。
わたしと目を合わせてもまったく動揺が見られないのです。
普通では考えらません。
そう、”普通”では…。でも、彼は、普通じゃない。
わたしは、岡太郎に関して、思いつくことは、正直に話しました。
ある格闘家が恋人に暴力を振るい、裁判所に訴えられるという出来事がありました。
その格闘家に取材を申し込むのですが、彼は、めっぽう手が早く、過去に何度も問題を起こしている。危険なので、5、6人で乗り込んで取材しようということになりました。
しかし、彼の周りには常に7、8名のボディーガードのような屈強な弟子たちがくっついています。
かなり、危険です。
担当は、岡太郎。
もちろん、岡太郎も現場に一緒に行きます。
かつての彼だったら、周りの制止も聞かず、自分で勝手に乗り込むような男でしたが、いまの彼は違いました。
敵前逃亡したのです。
わたしたちが現場でもみ合っている間に、岡太郎はどこかに消えてしまいました。
「あの現場で彼への信頼は完全に失われました」
基本、そんな話です。
わたしには、愛人のことや、お金のことに関してはわかりませんでした。
岡太郎は、少なくとも、詐欺太郎が記者カメのギャラをピンハネしたような、そういうセコさはまったくありませんでしたから。
わたしの口から出る岡太郎への不満は、すべて、記者と編集者としての関係から生まれる軋轢(あつれき)や、仕切りの悪さから生まれる現場のトラブルなどについてでした。
「なるほど、わかった。ありがとう。こんなもんでいい?」
その上司は、そう言って、詐欺太郎に聞きます。
詐欺太郎「はい。十分参考になる話を聞くことができました。風くんありがとう。ところで、岡太郎さんは、もう異動ですよね。こんなことじゃ、このまま編集部には入られませんよね」
上司「そうだな。そんなやつじゃないと思ってたんだが、残念だな」
詐欺太郎「風くん。いっそのこと、おれと一緒にやらない。岡太郎さんとやるよりは、おれとやったほうが絶対にいいよ」
わたし「僕はただ、岡太郎さんに仕事をきちんと真面目にやってほしいんですよ。あのままだったら、僕ももう無理ですよね」
詐欺太郎「そうだよね。風くん、考えといて。ほんとうに今日はありがとう」
それから、一週間後、月曜の朝、一人の若い編集者がわざわざわたしに電話してきて、こんなことを言いました。
「風さん、朝、会社に来て、パソコンを開いてみたら、全社員に変なメールが届いているんです。言いにくいんですが・・・・・、風さんが、岡太郎さんを告発する内容です。これ、ほんとうに風さんが書いたんですか?」
わたしは、全身の血が一瞬のうちに、すべて下に落ちていくのを感じました。
「ハメられた……」
つづく


