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上野「十三や」の本つげ櫛


贈り物にタブーとされる品が
あると聞いたことがある。

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女性が髪を梳く「櫛」は
「苦」と「死」に
つながるものなので
贈り物にはしないほうが良いと
昔の人は考えたらしい。
語呂あわせから来た
タブーのひとつだろうし
黒髪は女性の命とも言われるから
その命をくしけずる物は
適さないと
されたのかもしれない。
櫛の歯が欠けるのは
なにか縁起の良くない
ことが起きた
虫の知らせという
俗信もある。


髪を伸ばし始めて2年あまり。
背中の中ほどに届いた。
今年の自分への
クリスマスプレゼントは
昔ながらの「本つげの櫛」にしようと
上野お堀端の
『十三や』さんに出かけた。
ビルに挟まれるように古い作りの
間口2間ほどの入口。
お店のご主人は、作っていらした手を
わざわざ止めて、いろいろな形の
見本の櫛を出して
見せてくださった。


今、国産の本柘植(つげ)は入手難で
すべて予約制とのこと。
私の髪はゆるいくせ毛で、細く
いわゆる「猫っ毛」。
お店をたずねた当日は
雨が降っていて
くせが強めに出ていた。
ご主人は「おやまぁ」とひとこと
私の髪の様子をみて
にっこりと発した。
おもむろに「荒歯がいいでしょう」
と、見立ててくださった。


見本を使ってもよいですか?
とたずねると
「どうぞ、どうぞ」
見本の一本を手にして
ゆっくりと髪に当て、
そっと梳いてみた。
手にしっくりとおさまり
パチパチと静電気も起きず
数回といてみると、髪はとても
なめらかになるように感じた。
なんとも心地よい。


「気持ちのよいものですね」。
「そりゃあ本物のつげはね」と
ご主人はくしゃくしゃっと
ちょっと得意そうな笑顔になった。
私の手のサイズは
ちょっと大きめなので
3寸8分(約11.5cm)の櫛を選び
お願いした。


すぐ後に男性がひとり、遠慮がちに
お店の引き戸から「こんにちは」と
身を滑り込ませてきて
クリスマスプレゼントにしたいと
ご主人に相談されていた。
「残念なことに最近彼女は
髪を短くしてしまったのですよ。
でも、以前に本物のつげ櫛がほしいと
話していたので・・・」


素敵なことだと
傍らにいながら思った。
恋人か奥様かはわからないけれど
手にして喜んでもらえるよう
心をこめて選ぶ一本は
苦しみやわざわいを遠ざけ
梳き放つ良い縁起物に
きっとなることだろう。


櫛を毎日手にして
大切に使いながら
この一枚(櫛はこのように本来は
数えるものらしい)が
飴色に変わり、さらにしっくりと
手になじむ日がくるのを待つのが
ささやかにうれしかったりする。




良い聖夜を♪





今日の一曲

♪Chestnuts Roasting On An Open Fire♪